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激情に湧く竜帝と囚われの花姫

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うしろ手に、己れのいとしいつがいを抱き締める竜帝りゅうていジークバルト。

今のみじめな姿すがたを思い、いたたまれない花姫アリーシアは、ただただ……ひたすらに美しい涙を流し、立ち尽くす。

花姫アリーシアからは、竜帝をこばむようなせつないつぶやきがれるも、その声音こわねひど弱々よわよわしい。

見事みごと体躯たいくほこる竜帝が、少しでも力強く花姫アリーシアを抱き締めようものなら、如何いかにも折れてしまいそうな程に、ひどせた身体からだをしている花姫アリーシア。

うなる竜帝は、花姫アリーシアの耳元みみもとへと顔を寄せ、そっとささやくように言葉を掛ける。

「……おまえは元々もともと華奢きゃしゃであったがー……だが、これ程ではなかったはずだ。われらが離れていた間に、おまえの身には、いったい何があった? いとしいつがいー」

う竜帝。

そのいに呼応こおうするかのように、花姫アリーシアの身体からだが小さく震える。

「……いいえ、いいえ、何も……何も、ございません……」

今にも消え入りそうなかぼそい声で、言葉をつむぐ花姫アリーシア。本当に、消えて居なくなりそうな程に弱々よわよわしい。

そのはかなげなさまが、ひどかんさわる竜帝。

(逃がしはしないー!)

「おまえは、またの前から消え去るつもりかー……ゆるさぬ!」

「あっ……!」

小さく悲鳴ひめいを上げる花姫アリーシア。

その刹那せつなー。

竜帝はうしろ手に抱き締める花姫アリーシアをそのまま強引ごういんに抱き上げ、己れの胸の中へと閉じ込める。

花姫アリーシアのその華奢きゃしゃ身体からだは、ものの見事みごとに竜帝の胸の中へとおさまり、逃げ出すことさえままならない。

「……やっ!」

たいした力など無いにも関わらず、抵抗ていこうしてみせる花姫アリーシア。

「……お願いです……どうか、私を離してー……」

「ー離さぬ!」

突如とつじょ、竜帝は花姫アリーシアのくちびる荒々あらあらしく奪う。

「……ふっ、あっ」

更には、生気せいきの無い花姫アリーシアに、己れの魔力でって生気せいきをも分け与える竜帝には、引く気は毛頭もうとうない。絶対にあり得ない。

竜帝からそそがれる激しい程の熱い烈情れつじょうと魔力に、かよわ存在そんざいである花姫アリーシアがかなうはずもない。

それでもわずかに身体からだを動かし、小さな抵抗ていこうをしてみせる花姫アリーシア。

不意ふいに、かさね合わせたくちびるを離す竜帝は、その美しい金眼きんめするどひからせ、冷たく言い放つ。

ー、そう言ったはずだ。おまえは。逃がしはしないー」

いとしいつがいに、息をする間も与えない程の激しい接吻せっぷんを繰り返す竜帝は、今すぐにでも己れのつがいおかしかねない。

ようやくえたいとしいつがいとする激情げきじょうが、竜帝を支配しはいする。

竜帝には、もう二度と己れのいとしいつがいのがすつもりはない。その羽根はなをもいででも、一生側いっしょうそばく。

皇城こうじょうには、いとしいつがいである花姫アリーシアを閉じ込める為の堅牢けんろう鳥籠とりかごさえ用意してある。

竜帝にとらわれた花姫アリーシアが、一生をそこで暮らす為の美しい鳥籠とりかご

おりしもー、竜帝の豪華ごうかな寝所には、いとしいつがいを閉じ込める為だけに、あらたに造設ぞうせつされた瀟洒しょうしゃ鳥籠とりかご健在けんざいする。

美しいはなには、美しい鳥籠とりかご似合にあう。

(おまえの為の美しい鳥籠とりかごで、幾度いくど欲情よくじょうつらぬかれ、尽きる事のない情愛じょうあいおぼれるが良い……その美しい声音こわねって、に甘くくのが、つがいたるおまえの運命さだめ。決してのがれる事は出来ないー)

竜帝の金眼きんめが、ひときわあやしく光る。

終わらない接吻せっぷん

花姫アリーシアの抵抗虚ていこうむなしく、もはやあらがう事さえ出来ない程に、竜帝からの接吻せっぷんは激しさを増す。

そこから存分ぞんぶんそそがれる強過ぎる魔力に、次第ぢだいに花姫アリーシアの意識は奪われて行く。

(……ああっ、もうー……)

ついには、いだかれる竜帝へと力なく身体からだあずける花姫アリーシア。それを見遣みやる竜帝は、満足気まんぞくげ微笑ほほえむ。

花姫アリーシアを強く抱きかかえたまま、まるでまれなる宝石のように、その身を大切に大切に己れの外衣がいいおおう竜帝。

もはや帰還きかんとき

「ー良いか、二度はない。一生、外へは出さぬ。おまえはの為に存在する美しいはな

以前いぜんー、竜帝の手のうちから、いとも容易たやすく逃げ去った花姫アリーシア。

どのような事情じじょうはたらき、花姫アリーシアが竜帝の元から逃げ去ったのかはさだかではないが、最早もはや竜帝には、そのような事は過ぎ去った過去。瑣末さまつな事。

「ようやくつがいが手に……!」

竜帝の歓喜かんき咆哮ほうこうとどろく。
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