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第一章 紡がれる日常

第71話

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 あれから数日、鍋ダンジョンの周囲を取り巻く設備や環境が整ったそうです。

「仕事早いねアー君」
「うん、セット作って正解だった。次の課題は人材育成かな」

 学校作るのが手っ取り早いかなとか言っている。
 人材も派遣するばかりでなく現地調達が望ましいけれど、立ちはだかるのが識字率と知識の落差。
 
 幸いにも教師派遣はレモン国も協力する姿勢を見せているらしいけれど……あちらもあちらで、国民が国を離れたがらないのが現状。
 血液がレモンで出来ていると謎の迷言を声高に叫ぶ国民性、レモンが日常にない人生なんて考えられないのかもしれない。

『パパ抱っこ』
「シャムスはオムレツに何をかけるのかなぁ?」
「きのこぉ」
「これか、よしよし」

 本日は刀雲がお休みのため、朝食は刀雲の手作りオムレツです。
 騎士様も頑張った、調理に手を出すと焦げ付くため、ソースを混ぜる手伝いをしたらしい、手伝う発想が出ただけ進歩ですよ!

「樹、春日から大量の鍋受け取ったんだけど、これどうするの?」
「見本だよパパ、鉄鉱石が大量に採れるからな、それを加工して鍋を作るのを産業の一つに取り込んでもらおうと思ってるんだ。我が家はもちろんドリちゃんの手作り鍋があるからいらないけどな!」
「そういう訳です」

 アー君、後半は調理場にいるドリちゃんに向けて言ったね。
 誤解されて夕食に嫌いなもの詰め合わせ鍋作られたら大変だもんねー。

「ダンジョンの探索は進んだの?」
「おう、十層までしかない比較的浅いダンジョンだからな、あっさり風味にしておいたし攻略は簡単」

 あっさりは鍋の味の話だろうか。

「ただなぁ、秋のダンジョンの攻略も完全じゃないから冒険者から苦情が」
「出るんだ」
「うん、特に今回も食べ物関連だったからブーイングがすごい、焼肉と鍋どちらも捨てがたくて、転移陣配置してくれっていう陳情書が毎日山のように……」
「皆さん太るんじゃない?」
「幸いにも秋のダンジョンは難易度高いから、太るほどたらふく食べられないみたいだ」

 そうなると鍋ダンジョンはちょっと危険ですね、領地への救済処置を兼ねた所があるので難易度がそこまで高くなく、ランクの高さを求めないなら浅い層でも十分美味しいものが食べられる。
 まぁ太ったら太ったで雷ちゃんがいる孤島で強制キャンプか、涼玉ブートキャンプで燃焼してもらう方向で。

「あ、麺もいいなぁ、ラーメンとうどんどっちがいいかなぁ、白飯も捨てがたいんだけど、意外と普及してないんだよ、ママなんでだと思う?」
「異世界テンプレに沿うと、ライスと名前が違うとか、家畜の餌という認識があるとかかなぁ?」
「なるほど、そっちの線もあるのか。土地によってバラツキがありそうだな、職員に現地アンケート頼んどこ」

 メモをするのはもちろんアー君親衛隊のお仕事です、あの黒子達がいる日常風景にも慣れました。

「――っ大変だ、ママ」
「どうしたの?」

 デザートの豆大福を持ったアー君がふるふると震えている。
 ああ粉が落ちてる、スラちゃん回収お願いしまーす。

「ネギ配置するの忘れた! まだまだ調整必要だな」

 他にも豆腐とか白滝とかどうかな。
 きりたんぽも美味しいよね。
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