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第一章 紡がれる日常

第72話

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 通称『鍋ダンジョン』が神々の都合で調整された。

「まず第一層に魔物が小屋を建てて住み着いた上、洞窟内で稲を育て始めました。太陽もないのに不思議ですね。他にも畑を広げてネギなどを作っているそうですよ、なぜでしょうね神子様」

 皇帝の執務室再び。
 ただしソファーの対面に座っているのは宰相さん。真顔で圧をかけてくるのが怖い。

「この稲の成長がこれまた早く、魔物が朝から晩まで働いているそうです。しかも米を加工して白い棒を作ってギルドに卸したり、現地販売し始めたそうですよ。これが現物になります」

 あ、きりたんぽ。
 アー君は本当に仕事早いなぁ。

 机の上に置かれた布の包み、その中に入っていた白い棒、我が家の子供達も大好ききりたんぽでした。

「これは何に使うか、ご説明いただいてもよろしいでしょうか」
「うーん、僕よりお兄さんに聞いた方が早い気がします」
「何も知らないのが面白くて、嘘八百を吹き込むのを繰り返したらスルーされるようになってしまいました」

 お兄さんなにやってるの!?

「そのせいで純粋な少年がこのように擦れた大人になってしまって、夜の手管は少年のままなんですよ。まぁそこがいいんですけどね」
「もう黙ろうか」

 痴話げんかが始まったので皇帝を見たら、肩を震わせて笑っていた。
 声に出して笑ったら宰相さん拗ねちゃうんだろうなぁ。

 じゃぁまぁ今のうちに。

 まず土鍋を出します。
 そこにえっちゃんがアイテムボックスから冷凍された鍋セットを取り出し、きりたんぽと一緒に鍋に投入、魔法で温めてくれます。

 こちらのセット、お鍋の宣伝をするためにアー君がドリちゃんにお願いして作ってもらってもの、この宣伝のためにえっちゃんがドリちゃんに利用手順を習っていました。
 幾つか種類があるけれど、今日はシンプルに昆布だしの鶏団子鍋。

 出来上がった所で隣に皇帝が座ったので小皿に盛り、はいどーぞ。

「ひゅー、うまそぉ! イツキー、俺にも一杯」
「はいはい」

 イグちゃんが突然にょんと闇から現れても驚きませんよ。嘘です、一瞬心臓が止まりかけました。

「はーー、これ食うと冬って感じだよな! 冬ねぇけど!」

 ちなみにイグちゃん達邪神一家は毒が効かないのをいいことに闇鍋を開催したことがある、開催場所は確か魔王領にある滅びた国の跡地だったかな?
 さらにお酒が入ってはしゃいだ邪神一家により、瘴気がまき散らされて死霊系が出るダンジョンになったんだよね。

 騎士様にバレるより先にアー君に相談し、期間限定のダンジョンとしてツアーも組まれたんだっけ。
 利用後は黄金シリーズのコース料理を食べたイネスを解き放ち、土地を浄化して土に返したとか。

「闇鍋やりてぇ」

 切なそうに呟くあたり、全然懲りてないのは明白ですね。
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