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第二章 聖杯にまつわるお話

第456話

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 ドラゴンの群れは悠々と空を飛んでこちらに真っ直ぐ向かって来ているかと思いきや、実況するネヴォラ曰く、怯えてパニックに陥った人間が群れを攻撃、乱戦に突入したらしい。
 阿鼻叫喚の地獄ですって。

「マイペースな一部がそれを無視してこっち来てんの、喧嘩好きは仕返ししてからこっち来るみたい」
「あっ、何か点が見えてきた」
「移住希望ですかな」
「もっと広く場所を取った方がいいかもしれない、母上、トレントに頼んでくれ」
「僕!?」

 涼玉起こしてダンス踊ってもらえば楽勝じゃないかなぁ!?
 口に出したくても霧ちゃんの霧がぐいぐい背中を押すので、強制的に移動する羽目になりました。

 自分はシャムスの傍から離れたくないのね、そう……。

「えっと、ドラゴンの群れがこっちに向かって来てるみたいでね、彼らが降りるための空間を開けて欲しいなぁ」

 トレントからの返事はない、ただの木に擬態している。
 なんて思っていたら、体を左右に動かして何やらアピールしてくる。
 ごめん、分からない。

「がぅぅ、トレントとして未熟だから踊りないと移動できないって言ってる」
『お昼寝終了よ』
「と、言う訳で! 寝起きの第一体操はっじめるぞーー!!」
「うおお! 涼玉様ぁぁ!!」

 お昼寝から起きた涼玉とシャムスがこちらにやってきた。
 背後では霧ちゃんがお昼寝道具を片付け、マールスが三体に別れて涼玉を応援している。声がでかい。

「いっちにぃっさんしぃー!」
『わんっつーわんつぅー』

 可愛い。
 小さなドラゴンとケモ耳っ子がラジオ体操している。
 心臓発作が起こるぐらい可愛い。
 尻尾とか耳がぴょこぴょこしてるのが尊い。
 国宝級を通り越してまさに世界の宝とはこのこと。

 体操をしながら適度な間を開ける森の木々、そうか、涼玉が躍ることでただの木も一時的に移動可能になるのか……それは僕には無理ですね。

 ドラゴンが着地する場所は確かに開けたけども、そもそも彼らは図体がでかい。
 こんな崖の上に集合されたら地盤とか大丈夫なのだろうか、だってここ、えっちゃんが土魔法で作った谷の一部だよね?

「さてと、じいちゃぁぁあぁぁんおーたーすーけぇぇぇぇ!!」

 ある程度の空間が出来た所で涼玉が大地に向かって叫んだ。
 すると何ということでしょう、反対側にあった山が動いたのです!

「あれ古代竜のじいじ、グラとうちゃより数百年ぐらい若いけど」

 それでも御年数百年だそうです。
 周囲が数百、数千年の人ばかりだから長いのだか短いのだかちょっと判断付きにくい。

 その後、古代竜のおじいちゃんの仲介により、ドラゴンの群れは平和的に移住が完了、ドラゴンの群れを追ってきた人間は山のごとく巨大な古代竜を前に尻尾を巻いて撤退しました。
 そう、なんとあの群れ、移住希望者だったのです。

 喧嘩っ早いのがトラブルのもとになりそうで心配だったけど、人間が攻めてくるのは大歓迎だと主張する邪神兄弟の主張により、受け入れが決定。
 ドラゴンが生餌扱いになる世界……釣りから戻った騎士様も口元が引きつっていました。
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