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第二章 聖杯にまつわるお話

第469話

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 勇者と呼ばれる青年が聖女と呼ばれる少女と真実の愛にどうたらこうたら。
 これは良くある話、テンプレの一種だと思う。

 最近は勇者に婚約者がいて、聖女が王女、魔王討伐の報酬として王女と噂が出て昼ドラ展開も増えた。
 中には王女に見向きもせずに婚約者に一途な骨のある男もいる。そう女神様が鼻息荒く語っていた。

 でも勇者が他国の知らない人で、聖女がうちのパンドラちゃん、そして魔王がよりによって僕な場合はどうしたらいいのだろう。

 最近は召喚もなく、ホッとしてた矢先に召喚されて、しかも魔王覚悟とか言われた。
 しかも剣を向けている王子っぽい人の隣には、肉を山盛りにしたお皿を片手に無心で食べてるパンドラ。

 どういう状況だろう?

「かあちゃん魔王だったの?」
「初めて言われた」

 でもあえて言うならば魔王様は親戚ですが、僕は魔王様よりたちが悪い存在らしいです。
 失礼しちゃうよね。

「貴様っ! 聖女を名乗りながら魔王の手先だったのか!!」
「名乗るっつーか教会から貰った称号だけどな、あとこれ私のかあちゃん」
「きゃぁ怖い、勇者さまぁ」

 よく見たら王子の隣に二人女の子がいて、一人はきゃぁきゃぁ言いながら王子の腕に抱きついている。
 頭の中がお花畑だと確認しなくても分かる。あと髪の色がピンク。

「パンドラちゃん、僕ああいうタイプ嫌い」
「ちょう分かる。でもかあちゃん、ここで出る肉は美味いんだぜ」

 肉ならいつも家で食べてるよね!?
 昨日なんて涼玉の分まで食べて泣かせかけたよね??

 もう一人はギャル、ちょっと焼けたお肌と金髪だけど、職人顔でネイルの確認中。
 待って、ギャルさんも話に興味を持ってないんだけど!

 魔王を討伐しようとして呼び出した割には、戦う気のある聖女が一人もいない!!
 そもそも、僕を魔王認定して討伐しようとしている現状がまず過ぎる。大人はどこ、国の代表者は今すぐ目の前の王子を止めなさい!

「話長そうだし、肉おかわりしてきていいかな?」
「それ以前に帰りたい」
「帰るならギャル誘っていい? 米食わせる約束してるんだ」
「いいよ」

 パンドラが気に入ったなら、きっとあのギャルはおばあちゃんに親切なタイプのギャルなんだろう。
 と思ったら大間違いだった。

「おにぎり食べてみたいです」

 声が低い。
 そう、男の娘だったのです。
 そう言えばお胸ぺったん。

 王子とお花畑を無視してお話を聞いたら、異世界召喚された人の子孫でした。
 おばあちゃんは本当にギャルだったようで、女の子が生まれたらギャル文化を仕込みたいと嘆いていたのを見て育ったこの少年、男の娘になっておばあちゃんの野望を叶えたらしい。いい子。いい子??
 特技はネイルケアとネイルアート、魔王様の奥さんに紹介したら喜ばれるかもしれない。

「母様、帰りますよ」
「あれカイちゃん」

 呼ばれて顔を上げたらにっこり笑顔のカイちゃんがいた。
 そして背景が全部モザイク。

 ネイルに対する情熱トークを聞いていたら全部終わっていました。
 パンドラちゃん気付いてた?
 むしろ僕が気付いてなかった事に驚いた?
 そっかー。
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