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カルビンとの対話④

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結局、どういう意味なのか、教えてもらえず、わたしは諦めた。

「カルビン様は、今後どうされるのですか?」

代わりに、カルビン様ご自身のことを伺った。
曖昧な質問だったけど、何を言いたいのかは分かって下さったようだ。

「元々婚約する予定だった女性と、今度こそ婚約できそうです」

照れた様に笑うカルビン様の言葉に、わたしは目を見張った。

「おめでとうございます」
「ありがとうございます」

お互いに好き合った結果の婚約だった、と聞いた事がある。
それを、横からわたしが掻っ攫ってしまったのだ。
本当に良かった、と思った。


「リィカは、今後も学園に通うんですか?」

話はもう終わりかと思ったけれど、カルビン様は用意してもらった椅子に座って、本格的に雑談の姿勢だ。

わたしも否やはない。
柵を挟んだ対面に座ったけれど、カルビン様の質問には首を傾げるだけだ。

「何とも……。処罰の内容次第かと思いますが……」
「そうですね、すいません。変な事を聞きました」

通うも通わないも、今の時点でわたしの意思で決められることじゃない。
カルビン様は、すぐ気付いたように頭を下げる。

「ただ、リィカは勉強でも実技でも、もう少し頑張った方が良いですよ、と思っただけです」

続けられたカルビン様の言葉に、ムッときた。


国立アルカライズ学園のテストは、筆記試験の他に、剣と魔法の実技試験もある。
それらの成績から総合的に判断されて、上位から順にA・B・Cクラスの順に分けられている。

カルビン様は、実技はそれほどでもないけれど、筆記試験は常に上位に食い込んでいて、Aクラスだった。
二年生でも、多分Aクラス入りすると思う。

ちなみに、アレクシス殿下は、剣の実技で常に一位で、Aクラスだ。

わたしは、残念ながら筆記も実技も底辺を彷徨っていて、ほぼ学年最下位を独占だ。
なので、わたしはCクラスに在籍している。

カルビン様の言うことも、分からないではないけれど、余計なお世話だ。

「カルビン様だって、あまり偉そうなことは言えませんよね。上位に食い込むだけで、トップ争いには程遠いじゃないですか。たまには王太子殿下と競ってみてはいかがですか?」

ツンッと不機嫌そうに言い返す。
えぇ? とカルビン様の困惑声があがった。

「無茶言うなぁ。どうやって王太子殿下と競えと。あの方と競えるのは、殿下の婚約者殿だけですよ」

その言葉に、思わず笑った。


アレクシス殿下の兄殿下、実は誕生日が一週間しか離れていない、王太子のアークバルト殿下は、筆記試験でいつも一位だ。

そして、王太子殿下の婚約者であるレーナニア様は、同じく筆記試験でいつも二位。

筆記試験の一位と二位は、このお二方が独占している。
将来の国王夫妻は、優秀過ぎると思う。

ただ、実はお二方とも、実技に関しては底辺を彷徨っていて、先生に叱られている、というのは公然の秘密だ。

「叱られた後のお二方は、本当、落ち込んでてさぁ。その時の顔と言ったら……」

王太子殿下に聞かれたら不敬罪になりかねない話題を、カルビン様は王宮で堂々と口にする。

でも、楽しい。穏やかな時間だった。
カルビン様と、こんな時間を共有できる日が来るなんて、思ってなかった。

二人で笑いながら、たくさん話をした。


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次回から二話続けて、アレクシスの視点になります。

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