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六歳になったよ
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注意:一人称と口調が変わりました。(淑女教育の賜物だと思ってください)
メイベリアン→一人称:妾。口調:~じゃ。~だな。などの男っぽい口調。
クロエール→一人称:わたくし。口調:~ですわ。
マルガリーチェ→一人称:私。口調:~です。
◇ ◇ ◇
六歳の誕生日を迎え、王立学院が冬の長期休暇に入り、兄達が一時帰省して、わずかの間家族水入らずの団欒を過ごしたけれど、グレイ様に言われているという事もあるし、四月になればわたくしも王立学院に通うようになるという事で、二月になってすぐに王都に出立した。
二ヶ月おきには王都に来ていたので、大分馴染んだ王都の屋敷だけれども、いよいよ本格的にここで暮らしていくのね。
ふふふ、この屋敷のコックも大分懐柔出来たし、わたくしの提案した事業のおかげで王都の食糧事情も改善されているわ。
とはいえ、調理法が一般的には変わらないので、前世で食べた料理を食べるためには、この屋敷で作るしかないのだけどね。
王都でも清潔で安全な卵などが手に入るようになっているので、今日の女子会の為の焼き菓子を作っている。
オーブンには近づけてもらえないけど、混ぜたり、型に流し込む作業はさせてもらえるんだよ、やったね!
六歳児にはそれでも一苦労な作業だから、オーブンに入れてもらうときは汗だく状態なので、焼いている間に汗を流すためにお風呂に入れられる。
その間に、焼き終わったものは、粗熱を取られて、女子会に持って行っても問題がないよう、綺麗にバスケットの中にコックが詰めてくれる。
本日は午後から女子会なのだ。
久しぶりなので気合も入るってもんだよ、ひゃっほい。
王宮に到着すると、名乗りを上げてリアンの住む離宮に向かう。
バスケットはついて来ているメイドが持ってきているので、わたくしは手ぶらだ。
辺境侯爵令嬢がバスケットを持って歩くものではないと言われたためだ。
途中ですれ違う方々は、もうわたくしを見慣れたのか、通り過ぎると軽く頭を下げてくれる。
王宮では、グレイ様がわたくしを寵愛しているって有名だからね。
グレイ様にその事を伝えたら、「ツェツィは可愛いしな」、と言いながらも、深々とため息を吐き出していた。
まあ、第一王女と第二王女に会ったことはないけど、リアンは可愛い系というよりはキツメの綺麗系だもんね。
でも、まだ幼女だからやっぱり可愛いよ。
ちなみにクロエが凛とした綺麗系。リーチェはほんわか美人系。
三人から言うと、わたくしは天使可愛い系らしい。
領地の屋敷の使用人達も、王都の屋敷の使用人達も、なんだったらお父様や兄達もそう言うけど、自分ではよくわからん。
「ツェツィ、こっちじゃ」
「リアン、クロエ、リーチェ。久しぶり」
数カ月ぶりの再会に、抱き着きたかったけど、一応六歳になったので控える。
いやぁ、去年は色々したわ。
淑女たるものとかいうのをぶっちぎって、三人を連れ出して庭を走り回ったり、蝶を見つけてその綺麗さにキャッキャしたり、木登りは流石に止められたけど、芝生に生えている花を手折って王冠作って遊んだり。
花壇の花の蜜を吸ったりして、新鮮な甘さに感動したあまり、花をつみまくって庭師に悪いことしたって四人で反省したり。
芝生の上で四人で頭をくっつけて寝転がって、そのまま寝入って、呆れたグレイ様の指示でブランケットをかけてもらったりと、とにかくまあ……色々やった。
そのおかげで親友になったんだけどね。
「兄上から、ツェツィがたまに王都に来ていることは聞いていたが、用事があると言われたので、会えなかったのじゃ」
「そうね。でも、この数ヶ月で大分食料品事情は改善されたわ」
「確かに、食事に並ぶ食材の種類は増えましたわね。けれども、調理法は相変わらずですわ」
「でも、私の家もツェツィの家のように、お菓子を作る際はこっそり私の分だけお砂糖を控えめにしてもらっています。パイモンドもそちらの方が好きみたいですね」
あ、パイモンドっていうのは、リーチェの幼馴染の侯爵家の子息で、リーチェが好きな人。
爵位も釣り合っているし、幼馴染だし、家ぐるみの付き合いがあるから、婚約者を変えて欲しいって事あるごとに両親に言っているそうなんだけど、幼い初恋など叶わないとか、もう仮婚約をしているからとか、政略結婚を何だと思っていると逆に怒られたりするらしい。
「それにしても、第一王女と第二王女が他国に留学することになるとは思わなかったわ」
「急な事でしたわよね。けれども、それぞれの国の王族との婚約も見据えての留学でしたわよね?」
「そう聞いておる。兄上からは、妾が王立学院で最も身分が高い女生徒になるのだから、友人をよく守るようにと言われておる」
「陛下がおっしゃったのであれば、特定の人を守りたいのでしょうね」
「そうじゃな。まあ、兄上の思惑はともかく、妾も親友を容易く傷つけさせるつもりはないの」
そう言うリアン、カッコイイ。
「そういえば、お菓子を焼いて来たわ」
「おぉ、ツェツィの持ってくるお菓子は絶品じゃ。早う、用意を」
そう言ってパンパンとリアンが手を鳴らすと、ささっとメイドがわたくし付きのメイドからバスケットを受け取り、テーブルの中心に置くと、わたくし達のお皿に盛りつけていく。
「ツェツィ、これはなんですの?」
「マドレーヌ」
「初めて聞くお菓子ですね。またツェツィの家のオリジナルですか?」
「まあ、そうね。普通のお菓子はひたすら甘いだけだものね。これは、バターや卵、牛乳とか小麦粉なんかを使った焼き菓子」
和三盆とかは美味しいのに、なんでこの世界の今の普通のお菓子ってあんなゲロ甘なだけのものなんだろう。
本当に、この世界の設定を考えた神様(運営)を怨むわ。
乙女ゲームのイベントにちょっとでも料理が、食事に関するイベントがあれば、もっとましだったはずなのに!
手作りのお弁当を上げるとか、学園物のお約束でしょう!
貴族だからないかもしれないけどね! コンチクショウ!
「そういえば、ツェツィが言っていたハーブティというものを、色々試してみたのじゃ」
「どうだった?」
「メイド達に必死に止められたの。そこら辺に生えている草花をお茶にするなど、やめろと言われたのじゃ」
「あぁ、そうなっちゃったか」
「わたくしは、ツェツィが送ってくれた種を屋敷の庭に植えて、魔法士に育成させておりますが、あのカカオという物は何に使いますの?」
「チョコレートの材料に使うんだよ。それにしても、流石はクロエ。仕事が早い! いくつか実験して成功したら、ハウフーン公爵家の領地で栽培したら儲けが出るかもしれないよ」
「チョコレート。それもお菓子でして?」
「そうそう。カカオ豆には色々使い道があるよ。ココアにしたり」
「ココア?」
「飲み物の一つだね」
「そのような貴重な植物を、わたくしの家が専売してもよろしいのかしら?」
「専売にはなりにくいんじゃないかな。ただ、さきがけっていう意味ではブランドになるかも」
「なるほど、そういうことですのね」
「私は養蜂という物をして欲しいと言われ、指示通りに領地でさせていますけど、ハチミツが取れるぐらいですよね?」
「何言ってるの。ローヤルゼリー、プロポリス、みつろう等々、色々取れるんだから」
「そんなに重要なんですか?」
「化粧品には欠かせないわ」
「化粧品? デュランバル辺境領で色々な事をしているのは聞きましたけど、それは陛下のご意向ですよね。陛下は化粧品にも手を伸ばそうとしているのですか?」
「へ!? あー、いや、どうかなぁ?」
そういえばこの三人は、建前の話を信じているんだった。
「いずれ妾達も化粧をするようになるし、化粧品が増えることは良い事じゃ」
「だ、だめよ!」
「なんじゃ? 化粧は女の嗜みであろう?」
「あんな白粉べったり、アイラインがっつり、アイシャドウどきつい上に口紅真っ赤なんて、皆の素材を殺すわ」
「じゃが、化粧とはそういう物じゃ」
「わたくしがその認識を変えて見せるわ! 頑張って化粧品を作るわね」
乙女ゲームに出て来たようなあんな厚化粧、肌がボロボロになっちゃう。
悪役令嬢は厚化粧なのに、ヒロインは庶子だからって薄化粧とか、今考えるとずっこいよね。
「……ねえ、ツェツィ」
「なぁに、リーチェ」
「デュランバル辺境領でしている色々な事は、陛下のご意向なのですよね?」
「……そうね」
「そうだとすると、ツェツィは随分陛下に信頼されているのですね」
「へ?」
「だって、『国の特産品になるもの』を、ツェツィの意思で私達に渡しているんですから」
おぅふ。鋭いな、リーチェ。
リーチェの言葉に、リアンとクロエも確かに、と頷いている。
どうやって誤魔化そうかなぁ。
乙女ゲームの事をゲロって、三人は悪役令嬢になって破滅するの、なんて言えないし。
「……ふむ。そういう事なのじゃな。兄上は、ツェツィには既にふさわしい教育をする者を手配していると言っていた。この数ヶ月で行われているという事業に関わらせると言うのは、将来を見据えての事なのじゃな」
「え?」
「ああ、そういうことですのね。なるほど、陛下もお人が悪いですわ」
「えっと?」
「ふふ、信頼されているのですね。そういう関係は素晴らしいと思います」
「ちがっ、……わない」
ここで否定して、わたくしの事が色々知られるのはまずいわよね。
しかし、わたくしのこの返事が、三人を盛り上げる。
「キャー」と黄色い悲鳴が上がったと思ったら、チラチラといつも通りに離れた位置に座っているグレイ様とわたくしを交互に見る。
ははは、秘密を守るために、大事なものを失った気分だ。
「はあ、皆が思っているようなものじゃないわ。色々深い事情があるのよ」
「皆まで言うな。妾達は応援するぞ」
「そうですわよ」
「ええ、もちろんです」
「ハハ」
遠い目で空を見上げてしまう。あ、鳶が飛んでる。
聖王にお願いすれば空を飛べるかな?
『飛ぶだけなのであれば、風魔法で可能のはずだ』
考えていると、オーラの中にいるヴェルが教えてくれたので、そうなのかとちょっとだけテンションが上がった。
メイベリアン→一人称:妾。口調:~じゃ。~だな。などの男っぽい口調。
クロエール→一人称:わたくし。口調:~ですわ。
マルガリーチェ→一人称:私。口調:~です。
◇ ◇ ◇
六歳の誕生日を迎え、王立学院が冬の長期休暇に入り、兄達が一時帰省して、わずかの間家族水入らずの団欒を過ごしたけれど、グレイ様に言われているという事もあるし、四月になればわたくしも王立学院に通うようになるという事で、二月になってすぐに王都に出立した。
二ヶ月おきには王都に来ていたので、大分馴染んだ王都の屋敷だけれども、いよいよ本格的にここで暮らしていくのね。
ふふふ、この屋敷のコックも大分懐柔出来たし、わたくしの提案した事業のおかげで王都の食糧事情も改善されているわ。
とはいえ、調理法が一般的には変わらないので、前世で食べた料理を食べるためには、この屋敷で作るしかないのだけどね。
王都でも清潔で安全な卵などが手に入るようになっているので、今日の女子会の為の焼き菓子を作っている。
オーブンには近づけてもらえないけど、混ぜたり、型に流し込む作業はさせてもらえるんだよ、やったね!
六歳児にはそれでも一苦労な作業だから、オーブンに入れてもらうときは汗だく状態なので、焼いている間に汗を流すためにお風呂に入れられる。
その間に、焼き終わったものは、粗熱を取られて、女子会に持って行っても問題がないよう、綺麗にバスケットの中にコックが詰めてくれる。
本日は午後から女子会なのだ。
久しぶりなので気合も入るってもんだよ、ひゃっほい。
王宮に到着すると、名乗りを上げてリアンの住む離宮に向かう。
バスケットはついて来ているメイドが持ってきているので、わたくしは手ぶらだ。
辺境侯爵令嬢がバスケットを持って歩くものではないと言われたためだ。
途中ですれ違う方々は、もうわたくしを見慣れたのか、通り過ぎると軽く頭を下げてくれる。
王宮では、グレイ様がわたくしを寵愛しているって有名だからね。
グレイ様にその事を伝えたら、「ツェツィは可愛いしな」、と言いながらも、深々とため息を吐き出していた。
まあ、第一王女と第二王女に会ったことはないけど、リアンは可愛い系というよりはキツメの綺麗系だもんね。
でも、まだ幼女だからやっぱり可愛いよ。
ちなみにクロエが凛とした綺麗系。リーチェはほんわか美人系。
三人から言うと、わたくしは天使可愛い系らしい。
領地の屋敷の使用人達も、王都の屋敷の使用人達も、なんだったらお父様や兄達もそう言うけど、自分ではよくわからん。
「ツェツィ、こっちじゃ」
「リアン、クロエ、リーチェ。久しぶり」
数カ月ぶりの再会に、抱き着きたかったけど、一応六歳になったので控える。
いやぁ、去年は色々したわ。
淑女たるものとかいうのをぶっちぎって、三人を連れ出して庭を走り回ったり、蝶を見つけてその綺麗さにキャッキャしたり、木登りは流石に止められたけど、芝生に生えている花を手折って王冠作って遊んだり。
花壇の花の蜜を吸ったりして、新鮮な甘さに感動したあまり、花をつみまくって庭師に悪いことしたって四人で反省したり。
芝生の上で四人で頭をくっつけて寝転がって、そのまま寝入って、呆れたグレイ様の指示でブランケットをかけてもらったりと、とにかくまあ……色々やった。
そのおかげで親友になったんだけどね。
「兄上から、ツェツィがたまに王都に来ていることは聞いていたが、用事があると言われたので、会えなかったのじゃ」
「そうね。でも、この数ヶ月で大分食料品事情は改善されたわ」
「確かに、食事に並ぶ食材の種類は増えましたわね。けれども、調理法は相変わらずですわ」
「でも、私の家もツェツィの家のように、お菓子を作る際はこっそり私の分だけお砂糖を控えめにしてもらっています。パイモンドもそちらの方が好きみたいですね」
あ、パイモンドっていうのは、リーチェの幼馴染の侯爵家の子息で、リーチェが好きな人。
爵位も釣り合っているし、幼馴染だし、家ぐるみの付き合いがあるから、婚約者を変えて欲しいって事あるごとに両親に言っているそうなんだけど、幼い初恋など叶わないとか、もう仮婚約をしているからとか、政略結婚を何だと思っていると逆に怒られたりするらしい。
「それにしても、第一王女と第二王女が他国に留学することになるとは思わなかったわ」
「急な事でしたわよね。けれども、それぞれの国の王族との婚約も見据えての留学でしたわよね?」
「そう聞いておる。兄上からは、妾が王立学院で最も身分が高い女生徒になるのだから、友人をよく守るようにと言われておる」
「陛下がおっしゃったのであれば、特定の人を守りたいのでしょうね」
「そうじゃな。まあ、兄上の思惑はともかく、妾も親友を容易く傷つけさせるつもりはないの」
そう言うリアン、カッコイイ。
「そういえば、お菓子を焼いて来たわ」
「おぉ、ツェツィの持ってくるお菓子は絶品じゃ。早う、用意を」
そう言ってパンパンとリアンが手を鳴らすと、ささっとメイドがわたくし付きのメイドからバスケットを受け取り、テーブルの中心に置くと、わたくし達のお皿に盛りつけていく。
「ツェツィ、これはなんですの?」
「マドレーヌ」
「初めて聞くお菓子ですね。またツェツィの家のオリジナルですか?」
「まあ、そうね。普通のお菓子はひたすら甘いだけだものね。これは、バターや卵、牛乳とか小麦粉なんかを使った焼き菓子」
和三盆とかは美味しいのに、なんでこの世界の今の普通のお菓子ってあんなゲロ甘なだけのものなんだろう。
本当に、この世界の設定を考えた神様(運営)を怨むわ。
乙女ゲームのイベントにちょっとでも料理が、食事に関するイベントがあれば、もっとましだったはずなのに!
手作りのお弁当を上げるとか、学園物のお約束でしょう!
貴族だからないかもしれないけどね! コンチクショウ!
「そういえば、ツェツィが言っていたハーブティというものを、色々試してみたのじゃ」
「どうだった?」
「メイド達に必死に止められたの。そこら辺に生えている草花をお茶にするなど、やめろと言われたのじゃ」
「あぁ、そうなっちゃったか」
「わたくしは、ツェツィが送ってくれた種を屋敷の庭に植えて、魔法士に育成させておりますが、あのカカオという物は何に使いますの?」
「チョコレートの材料に使うんだよ。それにしても、流石はクロエ。仕事が早い! いくつか実験して成功したら、ハウフーン公爵家の領地で栽培したら儲けが出るかもしれないよ」
「チョコレート。それもお菓子でして?」
「そうそう。カカオ豆には色々使い道があるよ。ココアにしたり」
「ココア?」
「飲み物の一つだね」
「そのような貴重な植物を、わたくしの家が専売してもよろしいのかしら?」
「専売にはなりにくいんじゃないかな。ただ、さきがけっていう意味ではブランドになるかも」
「なるほど、そういうことですのね」
「私は養蜂という物をして欲しいと言われ、指示通りに領地でさせていますけど、ハチミツが取れるぐらいですよね?」
「何言ってるの。ローヤルゼリー、プロポリス、みつろう等々、色々取れるんだから」
「そんなに重要なんですか?」
「化粧品には欠かせないわ」
「化粧品? デュランバル辺境領で色々な事をしているのは聞きましたけど、それは陛下のご意向ですよね。陛下は化粧品にも手を伸ばそうとしているのですか?」
「へ!? あー、いや、どうかなぁ?」
そういえばこの三人は、建前の話を信じているんだった。
「いずれ妾達も化粧をするようになるし、化粧品が増えることは良い事じゃ」
「だ、だめよ!」
「なんじゃ? 化粧は女の嗜みであろう?」
「あんな白粉べったり、アイラインがっつり、アイシャドウどきつい上に口紅真っ赤なんて、皆の素材を殺すわ」
「じゃが、化粧とはそういう物じゃ」
「わたくしがその認識を変えて見せるわ! 頑張って化粧品を作るわね」
乙女ゲームに出て来たようなあんな厚化粧、肌がボロボロになっちゃう。
悪役令嬢は厚化粧なのに、ヒロインは庶子だからって薄化粧とか、今考えるとずっこいよね。
「……ねえ、ツェツィ」
「なぁに、リーチェ」
「デュランバル辺境領でしている色々な事は、陛下のご意向なのですよね?」
「……そうね」
「そうだとすると、ツェツィは随分陛下に信頼されているのですね」
「へ?」
「だって、『国の特産品になるもの』を、ツェツィの意思で私達に渡しているんですから」
おぅふ。鋭いな、リーチェ。
リーチェの言葉に、リアンとクロエも確かに、と頷いている。
どうやって誤魔化そうかなぁ。
乙女ゲームの事をゲロって、三人は悪役令嬢になって破滅するの、なんて言えないし。
「……ふむ。そういう事なのじゃな。兄上は、ツェツィには既にふさわしい教育をする者を手配していると言っていた。この数ヶ月で行われているという事業に関わらせると言うのは、将来を見据えての事なのじゃな」
「え?」
「ああ、そういうことですのね。なるほど、陛下もお人が悪いですわ」
「えっと?」
「ふふ、信頼されているのですね。そういう関係は素晴らしいと思います」
「ちがっ、……わない」
ここで否定して、わたくしの事が色々知られるのはまずいわよね。
しかし、わたくしのこの返事が、三人を盛り上げる。
「キャー」と黄色い悲鳴が上がったと思ったら、チラチラといつも通りに離れた位置に座っているグレイ様とわたくしを交互に見る。
ははは、秘密を守るために、大事なものを失った気分だ。
「はあ、皆が思っているようなものじゃないわ。色々深い事情があるのよ」
「皆まで言うな。妾達は応援するぞ」
「そうですわよ」
「ええ、もちろんです」
「ハハ」
遠い目で空を見上げてしまう。あ、鳶が飛んでる。
聖王にお願いすれば空を飛べるかな?
『飛ぶだけなのであれば、風魔法で可能のはずだ』
考えていると、オーラの中にいるヴェルが教えてくれたので、そうなのかとちょっとだけテンションが上がった。
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