冬薔薇姫

 冬薔薇姫、または茨姫と呼ばれる姫君がいる。
 彼女の本当の名前はパウラ=ノルドヴィヒ、現国王の王弟の一人娘、父は大公として国の北側の未開発の地を開発する任を担っている。
 その為、父親は王都に不在であることがほとんどであり、母親は社交に忙しく娘に目をかけることもほとんどない。
 それを哀れに思った国王が王宮にある大公用の離宮から、本宮へと住まいを移させたほどである。
 だがしかし、国王が本宮にパウラを移した時には既に遅かった。
 そもそも、彼女は病弱であり、離宮に使用人こそいれども、実質親の居ない状態で育ってしまったパウラは、人形のように笑いも泣きもしない、無表情で、ほとんどの事に興味のない令嬢へとなってしまっていたのである。
 そして、彼女が唯一興味を向けるのは本。
 それが、パウラ=ノルドヴィヒに関する世に知れ渡っている噂である。
 だが、国王や彼女に近くある者たちは知っている、パウラは重度のビブリオフィリアであるという事を。
 そして、パウラは産まれた時から知っていた。この世界が前世で最期に読んだ小説の中の世界だという事を。
 そして、役に立たないヒロイン(聖女)と本来なら婚約者(勇者)の代わりに、邪悪なるモノを倒すために、愛する本を読む時間を確保するために、パウラは旅立つのであった。

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