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現在⑴

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 バイトが終わった。疲れたから早く帰りたい。
 自転車の軋む音を聞きながらの帰り道、自転車をこいで進む。春先とはいえ、日が暮れて肌寒くなり、さらに早く帰りたくなる。

 自転車を漕ぎ出さして、10分弱。ちょうど帰り道の中間にあたる公園の近くに着いた。あと10分かからずに帰りつくけど、何とはなしに公園で咲いている桜を見た。

 仕事帰りの夜。時間もう夜9時近く。
 道路と公園を隔てている、歩道側の膝丈ぐらいしかない小さな柵。その柵のすぐの場所にある桜の木。
 そんなに大きくなく、せいぜい自分が両腕を回せば届くぐらい。
 桜は少しずつ咲き始め、街頭に照らされて、白っぽく光って見えた。
 月も桜にかかって見えたけど、やっぱり白く見えて、それ以上ではなかった。

 周りに誰もいないなか、街頭に照らされている桜と、その桜にかかる月はどう見ても白くしか見えなくて、何か足りないと不思議に思った。


 それでも、その白い色は綺麗だった。



 帰り着いて、郵便受けを見てため息がでた。いくつかの封筒が手の中にある。それを持って部屋に入る。
 一人花見をしていたせいで、帰りに寒くなったから、急いでシャワーを浴び、やっと暖まって一息ついた。

 そして、ローテーブルの上に置いたため息の元凶を確認した。さっきの封筒のうちのひとつ。
 自分で頼んで送ってもらったのだから、本当はため息をつくのは間違っているけど。



 自分の叶えたい夢があった。頑張ればなんとかなる。そう思っていた。誰にも助けてもらえなくても、大丈夫なんて思っていた。
 親との縁も薄かったから、一人できるからと……。

 そうして、勉強してバイトしてゆけば、絶対大丈夫と、根拠のない自信をもっていた。勉強、バイト、を繰り返し何かが少しずつ、削られていった。

 生活しなければならないし、授業料だって必要だ。自分で出来る事はしたと思うけど、だんだんと両立ができなくなっていった。
 自分が思ったより不器用だったみたいで、勉強を頑張れば生活が、バイトを頑張れば勉強がと、両方を均等にできなかった。

 ……そして、諦めた。

 今見ていたのは、その返済だ。
 ちゃんとした書類として確認したかったから、郵送してもらった。
 まだいくらか残っているが、働く事だけに気を向けたから、なんとか返済出来るようになった。

 後の残金も、目を背けたくなるほどではなくなった。たぶん、後少しで終わるだろう。でもまだ時間はかかる。それでも、前のように必死で働く必要はなくなった。

 でもまだあるし、ほんの少し楽になっただけ。多少息がつけるようになった。

 必死で働いていた時に体を壊した。壊す前まで、寝る時間もないくらい働いた。その分、返済することはできたけど、体を壊した時に、誰にも助けてもらえなかったから、自分で気をつけるようにした。

 返済を思えばため息は出るが、それでも目処がついたのは嬉しい。自分が思っていたより少ないし。

 書類を大事に閉まって、適当に晩御飯を食べてもう寝よう。時間も遅くなったし、明日もバイトはある。



 今日はもう夢を見ずに、ぐっすり寝てしまいたい……。

 そう夢を見ても、所詮夢なのだから、どうすることもないから。


























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