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2話 王太子 その1
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「……えっ?」
私は気づいたら、近くのテーブルの椅子に座り込んでしまっていた。シグマから言われた言葉があまりにも衝撃的だったから……。
でも、そこに聞こえてきたのは救いの手……じゃなくて、救いの声だった。確か、私の名前をやさしく呼んでくれて……泣かせるとはいい度胸だみたいなことを言ってくれた気がする。
どこかで聞き覚えがあったかもしれないけれど、いきなりのことで判別は不可能だった。でも、一体だれがそんな救いの声をあげてくれたのかを確認したくなって、私は急いで顔を上げた。
「な、ななな……!?」
「シエル、急に座り込んでしまったようだが、怪我はしていないか?」
私は目の前に居た殿方の姿を見て、声が上ずってしまった。ありえない……美しい黒髪を耳が覆いかぶさる程度の長さにしている清潔感溢れるお方……王太子殿下、ハルト・ランパード様がそこには居たのだから……。
「お、王太子殿下……! どうしてこのような場所に……!?」
テーブルの椅子に座り込んでいる私より驚いているのは、先ほど私に婚約破棄を言い渡したシグマ本人だ。隣に立っているアンナもとても狼狽えていたけれど。
「私がここに居ることは問題はあるまい? 貴族のパーティに参加することは普通のことだ。それよりも……」
王太子ハルト様は一呼吸おくと、とても厳しい瞳をシグマに見せつけた。その鋭い眼光はシグマ本人だけでなく、周りにいる貴族も震え上がるほどだ。さすがに次期国王筆頭と言われているだけのお方ね。
「シエルへの婚約破棄はどういうつもりだ?」
「そ、それは……」
「しかもこのような場所で、浮気を公言するかのような振る舞い……」
ハルト様は明らかに怒っていらっしゃるわ……周囲の貴族には他言無用ということを暗黙に語っているのか、時折、きょろきょろと辺りを見渡している。こんな光栄なことってあるのかしら? 夢じゃないわよね?
「シエル、立てるか?」
「は、はい」
王太子殿下の手が私の目の前に差し伸べられた。もうそれだけで、私は緊張しっぱなしだった。先ほどまでのシグマへの怒りも忘れるほどに……。
「シエル、このような場所での婚約破棄は辛いと思うが、案ずることはない。この私が付いているのだからな」
「ハルト王太子……」
顔が近い……確かに王太子とは知らない間柄ではないけれど。身分の差が大きくあるってわかってからは、あんまりはなせなかったから。なんだか、昔の彼の顔を見た気がするわ。
目には目を歯には歯を……王太子の考えが読めた気がしていた。
私は気づいたら、近くのテーブルの椅子に座り込んでしまっていた。シグマから言われた言葉があまりにも衝撃的だったから……。
でも、そこに聞こえてきたのは救いの手……じゃなくて、救いの声だった。確か、私の名前をやさしく呼んでくれて……泣かせるとはいい度胸だみたいなことを言ってくれた気がする。
どこかで聞き覚えがあったかもしれないけれど、いきなりのことで判別は不可能だった。でも、一体だれがそんな救いの声をあげてくれたのかを確認したくなって、私は急いで顔を上げた。
「な、ななな……!?」
「シエル、急に座り込んでしまったようだが、怪我はしていないか?」
私は目の前に居た殿方の姿を見て、声が上ずってしまった。ありえない……美しい黒髪を耳が覆いかぶさる程度の長さにしている清潔感溢れるお方……王太子殿下、ハルト・ランパード様がそこには居たのだから……。
「お、王太子殿下……! どうしてこのような場所に……!?」
テーブルの椅子に座り込んでいる私より驚いているのは、先ほど私に婚約破棄を言い渡したシグマ本人だ。隣に立っているアンナもとても狼狽えていたけれど。
「私がここに居ることは問題はあるまい? 貴族のパーティに参加することは普通のことだ。それよりも……」
王太子ハルト様は一呼吸おくと、とても厳しい瞳をシグマに見せつけた。その鋭い眼光はシグマ本人だけでなく、周りにいる貴族も震え上がるほどだ。さすがに次期国王筆頭と言われているだけのお方ね。
「シエルへの婚約破棄はどういうつもりだ?」
「そ、それは……」
「しかもこのような場所で、浮気を公言するかのような振る舞い……」
ハルト様は明らかに怒っていらっしゃるわ……周囲の貴族には他言無用ということを暗黙に語っているのか、時折、きょろきょろと辺りを見渡している。こんな光栄なことってあるのかしら? 夢じゃないわよね?
「シエル、立てるか?」
「は、はい」
王太子殿下の手が私の目の前に差し伸べられた。もうそれだけで、私は緊張しっぱなしだった。先ほどまでのシグマへの怒りも忘れるほどに……。
「シエル、このような場所での婚約破棄は辛いと思うが、案ずることはない。この私が付いているのだからな」
「ハルト王太子……」
顔が近い……確かに王太子とは知らない間柄ではないけれど。身分の差が大きくあるってわかってからは、あんまりはなせなかったから。なんだか、昔の彼の顔を見た気がするわ。
目には目を歯には歯を……王太子の考えが読めた気がしていた。
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