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3話 王太子 その2
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「シグマ侯爵令息とアンナ侯爵令嬢……」
「は、はい」
「……はい……」
ハルト王太子の力強い言葉に、シグマとアンナの二人は小刻みに震えながら背筋を伸ばしていた。周囲の貴族たちも、まるで芝居を見ているような感覚に囚われているようね。確かに起きている出来事が非現実的すぎるから……。
「この度のシエルへの無礼……どのように償うつもりか?」
「……うう……」
シグマは本当に言葉が出てこないみたい。確かにそうよね……はっきりと「アンナの方が好きだから、お前との婚約は破棄する」って言ったんだもの。それは周りの貴族が証人だし、私ももちろん証人。なによりも王太子殿下本人が聞いているんだから。
ハルト王太子は昔から曲がったことが嫌いな誠実なお方。それは王子としての仕事が忙しくなってからも変わっていないはず。いきなりハルト王太子の助けが入った時は驚いたけれど、普通に考えればわかることだったわね。
「あ、あの……ハルト王太子……」
「なんだ? シエル」
「助けていただいたことは、とても感謝しております。ですが、この場所で彼らに対しての詰問は……」
「……なるほど、確かにな」
ハルト王太子殿下は私の言いたいことを理解してくれた。こちらが正しいことをしているとはいえ、このままハルト王太子にシグマ達を責めてもらうのは気が引ける。さっき私がされていたことと、真逆のことをしているように映ってしまうかもしれないから。
特に状況が分かっていない人からすれば、どっちが悪かなんてわからないのだし。
「仕方がない。お前たち、シエルの心遣いに感謝するがいいぞ。罰については追って伝えるものとする。行け」
「……くっ」
シグマ侯爵令息とアンナ侯爵令嬢は悔しそうな顔を潜ませながらも、王太子に一礼して去って行った。さすがに立場が違う存在と思っているようね。
「さて、シエル。私たちも一旦、この場を離れるとしようか。君が晒し者になるのはいい気分はしないからな」
「か、畏まりました王太子殿下……。そ、それからありがとうございました! 本当に感謝いたします……!」
思わず勢いで涙が噴出してしまったけれど、この際気にしている余裕なんてない。それくらい、ハルト王太子殿下に救ってもらったのが嬉しかったから……! 王太子殿下も私の気持ちを汲んでくれたのか、周囲に涙が見えないように自らの身体で私を覆ってくれた。
「私は王太子として、当然のことをしたまでだ。それに……シエルが悲しんでいるのなら、例え他国であろうとも乗り出していたさ」
まさにクリティカルヒットと言えばいいのかしら……私の涙はさらに加速することになってしまった。
「は、はい」
「……はい……」
ハルト王太子の力強い言葉に、シグマとアンナの二人は小刻みに震えながら背筋を伸ばしていた。周囲の貴族たちも、まるで芝居を見ているような感覚に囚われているようね。確かに起きている出来事が非現実的すぎるから……。
「この度のシエルへの無礼……どのように償うつもりか?」
「……うう……」
シグマは本当に言葉が出てこないみたい。確かにそうよね……はっきりと「アンナの方が好きだから、お前との婚約は破棄する」って言ったんだもの。それは周りの貴族が証人だし、私ももちろん証人。なによりも王太子殿下本人が聞いているんだから。
ハルト王太子は昔から曲がったことが嫌いな誠実なお方。それは王子としての仕事が忙しくなってからも変わっていないはず。いきなりハルト王太子の助けが入った時は驚いたけれど、普通に考えればわかることだったわね。
「あ、あの……ハルト王太子……」
「なんだ? シエル」
「助けていただいたことは、とても感謝しております。ですが、この場所で彼らに対しての詰問は……」
「……なるほど、確かにな」
ハルト王太子殿下は私の言いたいことを理解してくれた。こちらが正しいことをしているとはいえ、このままハルト王太子にシグマ達を責めてもらうのは気が引ける。さっき私がされていたことと、真逆のことをしているように映ってしまうかもしれないから。
特に状況が分かっていない人からすれば、どっちが悪かなんてわからないのだし。
「仕方がない。お前たち、シエルの心遣いに感謝するがいいぞ。罰については追って伝えるものとする。行け」
「……くっ」
シグマ侯爵令息とアンナ侯爵令嬢は悔しそうな顔を潜ませながらも、王太子に一礼して去って行った。さすがに立場が違う存在と思っているようね。
「さて、シエル。私たちも一旦、この場を離れるとしようか。君が晒し者になるのはいい気分はしないからな」
「か、畏まりました王太子殿下……。そ、それからありがとうございました! 本当に感謝いたします……!」
思わず勢いで涙が噴出してしまったけれど、この際気にしている余裕なんてない。それくらい、ハルト王太子殿下に救ってもらったのが嬉しかったから……! 王太子殿下も私の気持ちを汲んでくれたのか、周囲に涙が見えないように自らの身体で私を覆ってくれた。
「私は王太子として、当然のことをしたまでだ。それに……シエルが悲しんでいるのなら、例え他国であろうとも乗り出していたさ」
まさにクリティカルヒットと言えばいいのかしら……私の涙はさらに加速することになってしまった。
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