12 / 46
12話 各地の反応 その1
しおりを挟む
貴族街でのハルト王太子殿下による、まさかの婚約宣言。その事実は、とてつもない大事件として、一夜の内に王国中に知れ渡ったらしい。実際には、情報が錯綜しており、相手は誰なのかとか色々と混乱も多かったみたいだけど。
ハルト様からの告白と言う、夢のような時間が過ぎてから1週間が経過した。私はアクアマイト家が収める領地、サクサール地方の本邸に帰還している。本邸へ帰還するときもハルト様は一緒に付いて来てくださった。それから、父さんと母さんに同時に挨拶まで済ませるという芸当を行ったの。
……なんというか、とても手際が良かったのだけは覚えているわ。
「シエル! シグマ様からの婚約破棄はとても残念だけれど、あのハルト王太子殿下からの婚約なんですよ? もっと喜びなさい!」
「お母様……喜んでいるから……」
「いやはや、我が娘ながら、まさかこのようなことになろうとは」
私よりも両親の二人の方が信じられないという態度を見せていたわね。まあ、アクアマイト家は古くからある名家の一つではあるけれど、いくらなんでも次期国王の方と付き合うなんてできるわけないし。そういうこともあってか、父さんも母さんも非常に取り乱していたのは覚えている。
「はあ~~~、なんか信じられないけど、私、ハルト様と婚約締結するのよね」
「左様でございますね。とても喜ばしいことですわ」
私はロビーのソファで考え事をしていたけれど、いつの間にか隣にはメルレーンの姿があった。
「メルレーンさんは冷静よね。この屋敷のほとんどの人が取り乱している中でも」
ハルト様を私と一つ屋根の下に配置したのも彼女だし、メルレーンは色々と謎な人物ね。一介のメイドって感じがしないわ。私とハルト様の婚約を心から喜んでいるのは分かるけど、あんまり焦っている様子はないし。
「冷静だなんて、そんなことはありませんよ。私も喜びで、今にも涙が出て来そうになります」
「それは本当なんだろうけど、どこか余裕があるのよね。まあいいわ、それよりも……」
メルレーンのことは気になるけれど、考えることは他にもあったりする。それは周囲の反応だ。両親やメルレーンを含めて、アクアマイト家の者は喜んでくれているみたいだけれど、その他の反応は見るのが怖かったりする。なんせ、何年も婚約を断ってきた王太子を私が奪った形になっているんだし……。
「ねえ、メルレーンさん。私と王太子殿下の婚約が決まったわけだけど……他の人たちの反応って聞いている?」
「はい、聞いております。お知りになりたいですか?」
メルレーンは一瞬、躊躇うような素振りを見せていた。あんまりよくない情報もありそうね。でも、それは王太子の婚約者として聞いておかなくちゃ。
「聞かせて。それが私の使命だと思うし」
「畏まりました」
メルレーンは静かに頷くと、ゆっくりとした動作で口を開き始めた。
ハルト様からの告白と言う、夢のような時間が過ぎてから1週間が経過した。私はアクアマイト家が収める領地、サクサール地方の本邸に帰還している。本邸へ帰還するときもハルト様は一緒に付いて来てくださった。それから、父さんと母さんに同時に挨拶まで済ませるという芸当を行ったの。
……なんというか、とても手際が良かったのだけは覚えているわ。
「シエル! シグマ様からの婚約破棄はとても残念だけれど、あのハルト王太子殿下からの婚約なんですよ? もっと喜びなさい!」
「お母様……喜んでいるから……」
「いやはや、我が娘ながら、まさかこのようなことになろうとは」
私よりも両親の二人の方が信じられないという態度を見せていたわね。まあ、アクアマイト家は古くからある名家の一つではあるけれど、いくらなんでも次期国王の方と付き合うなんてできるわけないし。そういうこともあってか、父さんも母さんも非常に取り乱していたのは覚えている。
「はあ~~~、なんか信じられないけど、私、ハルト様と婚約締結するのよね」
「左様でございますね。とても喜ばしいことですわ」
私はロビーのソファで考え事をしていたけれど、いつの間にか隣にはメルレーンの姿があった。
「メルレーンさんは冷静よね。この屋敷のほとんどの人が取り乱している中でも」
ハルト様を私と一つ屋根の下に配置したのも彼女だし、メルレーンは色々と謎な人物ね。一介のメイドって感じがしないわ。私とハルト様の婚約を心から喜んでいるのは分かるけど、あんまり焦っている様子はないし。
「冷静だなんて、そんなことはありませんよ。私も喜びで、今にも涙が出て来そうになります」
「それは本当なんだろうけど、どこか余裕があるのよね。まあいいわ、それよりも……」
メルレーンのことは気になるけれど、考えることは他にもあったりする。それは周囲の反応だ。両親やメルレーンを含めて、アクアマイト家の者は喜んでくれているみたいだけれど、その他の反応は見るのが怖かったりする。なんせ、何年も婚約を断ってきた王太子を私が奪った形になっているんだし……。
「ねえ、メルレーンさん。私と王太子殿下の婚約が決まったわけだけど……他の人たちの反応って聞いている?」
「はい、聞いております。お知りになりたいですか?」
メルレーンは一瞬、躊躇うような素振りを見せていた。あんまりよくない情報もありそうね。でも、それは王太子の婚約者として聞いておかなくちゃ。
「聞かせて。それが私の使命だと思うし」
「畏まりました」
メルレーンは静かに頷くと、ゆっくりとした動作で口を開き始めた。
0
あなたにおすすめの小説
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがて王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、そして政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に行動する勇者パーティは、四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そして試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして、世界を救う少女の選択と成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー編 32話
第二章:討伐軍編 32話
第三章:魔王決戦編 36話
※「カクヨム」、「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました
夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。
全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。
持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……?
これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。
偽りの断罪で追放された悪役令嬢ですが、実は「豊穣の聖女」でした。辺境を開拓していたら、氷の辺境伯様からの溺愛が止まりません!
黒崎隼人
ファンタジー
「お前のような女が聖女であるはずがない!」
婚約者の王子に、身に覚えのない罪で断罪され、婚約破棄を言い渡された公爵令嬢セレスティナ。
罰として与えられたのは、冷酷非情と噂される「氷の辺境伯」への降嫁だった。
それは事実上の追放。実家にも見放され、全てを失った――はずだった。
しかし、窮屈な王宮から解放された彼女は、前世で培った知識を武器に、雪と氷に閉ざされた大地で新たな一歩を踏み出す。
「どんな場所でも、私は生きていける」
打ち捨てられた温室で土に触れた時、彼女の中に眠る「豊穣の聖女」の力が目覚め始める。
これは、不遇の令嬢が自らの力で運命を切り開き、不器用な辺境伯の凍てついた心を溶かし、やがて世界一の愛を手に入れるまでの、奇跡と感動の逆転ラブストーリー。
国を捨てた王子と偽りの聖女への、最高のざまぁをあなたに。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる