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リックVSエグゼルド(6)
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「くうっ!」
少女は風の衝撃波を全て剣で斬ることができなかったのかダメージを受け苦悶の声を上げる。
「立ちなさいリック! こんな所で倒れることは私が許さないから!」
なんとエグゼルドの攻撃から俺を守ってくれたのは観客席にいたエミリアだった。
「エ、エミリア⋯⋯」
「無駄口を叩く暇があったらさっさと回復魔法を使いなさい!」
エミリアにお礼の言葉を伝えようとしたが、確かに今はいつエグゼルドの攻撃がくるかわからない。
俺は左手に魔力を込め、風の衝撃波を食らったエミリアから回復魔法をかける。
「クラス5完全回復創聖魔法」
するとエミリアは魔法の光に包まれ、エグゼルドに受けた傷が消えていく。
「バ、バカね。まずは自分の傷から治しなさいよ⋯⋯でもありがと」
人には無駄口を叩くなと言っていたが、自分はしっかりと言いたいことを口にするのか。さすがエミリアだな。
そして俺も自分にクラス5完全回復創聖魔法をかけて傷を治療し、落としてしまったカゼナギの剣を拾う。
エミリアに回復魔法をかけている時からエグゼルドを注視していたが、大剣を地面に突き刺していることからどうやらこちらをすぐに攻撃する意思はないように見えた。
「エミリア⋯⋯どういうことだ?」
エグゼルドの重厚で低音な声が闘技場に響き渡る。
「見ての通りよ。リックの手助けをしただけですけど」
エミリアは突然加勢したことに対して悪びれもなく、何が問題なのかわからないと言った表情でエグゼルドの問いに答える。
おいおい。皇帝陛下にそんな態度を取ってもいいのか? 見ているこっちとしては不敬で罪に問われてしまうのではないかとハラハラしてしまう。
でもエミリアはエグゼルドと親戚関係にあるから大丈夫なのか?
「宰相だって決闘が始まる前に1人でいいのかとリックに対して聞いていたから問題ないでしょ?」
いや、問題ありまくりだろ! 宰相が言ったのはあくまで決闘が始まる前であって、決闘中に乱入していいことにはならないはずだ。
だけどエミリアは自分が言ったことが全て正しいと自信満々の表情をするため、たまにこっちが間違っているじゃないかと思うときがあるんだよな。
「この場に立つ意味がわかっているのか?」
「この場に立つ意味?」
「余と戦うということは命の保証はしないということだ。エミリアにはその覚悟があるのか?」
確かにエグゼルドの言うとおりだ。
ただ俺が窮地に立たされ、見ていられなくなったから思わず身体が動いて飛び出てしまったという理由ならこの決闘に参加しない方がいい。エグゼルドも口にしているようにこの決闘に負けたら無事に帰れる保証などどこにもないのだから。
「覚悟? そんなものあるわけないじゃない」
「ならば早々に立ち去るがよい!」
守ってくれたことには感謝しているけど覚悟がないならこの場から立ち去るべきだ。
そしてエグゼルドの言葉には殺気がこもっているし、俺との決闘を邪魔されたことに対して相当怒り浸透だということがわかった。そのため下手なことを言うとエグゼルドは激昂して斬りかかってくるかもしれない。
だがこの後エミリアは、一騎当千の強さを持つエグゼルドに対してとんでもないことを言い始める。
「私が⋯⋯私達が勝つのに何故負ける覚悟をしないといけないの?」
さ、さすがエミリアだ。歴戦の勇者でありこの国の皇帝に対して啖呵を切るとは。
相手が誰だろうが自分の持論を曲げることはない姿はある意味清々しく感じるな。
「フッ⋯⋯フッハッハッ!」
殺気まみれだったエグゼルドが突然声を高らかに笑い始める。
「確かにその通りだ。余も負ける覚悟を持って戦ったことなど1度もない」
化物のような強さを持つエグゼルドならともかくエミリアまで敗北する自分を想像していないとはな。エグゼルド相手にそんな言葉を言えるのはこの世界でエミリアだけじゃないのか。
俺はその頼もしき背中に視線を送るがその時に気づいてしまった。エミリアの足が僅かだが震えていることに。
そうだ、相手はこの国のトップである皇帝陛下、それにこれ程の強烈な殺気を食らって正気を保つことなど常人には不可能だ。
だけどエミリアはその恐怖を乗り越えて俺を守るためにこの場に来てくれた。
例え勝負に負けたとしても加勢してくれたエミリアの命だけは絶対に護らないとな。
「リック! 何ボサッと突っ立っているの!」
「お、おう」
「やる気あるの? 絶対にこの勝負は勝つから!」
俺はエミリアに鼓舞され、再びカゼナギの剣を構える。
エミリアは俺が知るなかで唯一エグゼルドに立ち向かうことができる実力者で、帝国の守護者と呼ばれている公爵家のイシュバル・フォン・ルーンセイバーの娘であり、剣の天才と呼ばれている。
幼き頃は剣術に興味はなかったが、ドルドランドでサーシャと拐われた後、何か思う所があったようで剣の道に進むと忽ち頭角を現し、今では剣の技術は帝国1だと自他共に認められている存在である。
だがそれでもエグゼルドの強さにはまだまだ届かないと思う。しかし俺の創聖魔法で強化すれば⋯⋯。
「いいだろう。二人ともかかってくるがよい!」
そしてエグゼルドに認められたため、エミリアもこの決闘に正式に参戦することになった。
こうして俺はエグゼルドの攻撃によって窮地に陥ったが、エミリアが加勢してくれたことによって何とか命を取りとめることに成功し、そして今、俺・エミリアVSエグゼルドの決闘が始まるのであった。
少女は風の衝撃波を全て剣で斬ることができなかったのかダメージを受け苦悶の声を上げる。
「立ちなさいリック! こんな所で倒れることは私が許さないから!」
なんとエグゼルドの攻撃から俺を守ってくれたのは観客席にいたエミリアだった。
「エ、エミリア⋯⋯」
「無駄口を叩く暇があったらさっさと回復魔法を使いなさい!」
エミリアにお礼の言葉を伝えようとしたが、確かに今はいつエグゼルドの攻撃がくるかわからない。
俺は左手に魔力を込め、風の衝撃波を食らったエミリアから回復魔法をかける。
「クラス5完全回復創聖魔法」
するとエミリアは魔法の光に包まれ、エグゼルドに受けた傷が消えていく。
「バ、バカね。まずは自分の傷から治しなさいよ⋯⋯でもありがと」
人には無駄口を叩くなと言っていたが、自分はしっかりと言いたいことを口にするのか。さすがエミリアだな。
そして俺も自分にクラス5完全回復創聖魔法をかけて傷を治療し、落としてしまったカゼナギの剣を拾う。
エミリアに回復魔法をかけている時からエグゼルドを注視していたが、大剣を地面に突き刺していることからどうやらこちらをすぐに攻撃する意思はないように見えた。
「エミリア⋯⋯どういうことだ?」
エグゼルドの重厚で低音な声が闘技場に響き渡る。
「見ての通りよ。リックの手助けをしただけですけど」
エミリアは突然加勢したことに対して悪びれもなく、何が問題なのかわからないと言った表情でエグゼルドの問いに答える。
おいおい。皇帝陛下にそんな態度を取ってもいいのか? 見ているこっちとしては不敬で罪に問われてしまうのではないかとハラハラしてしまう。
でもエミリアはエグゼルドと親戚関係にあるから大丈夫なのか?
「宰相だって決闘が始まる前に1人でいいのかとリックに対して聞いていたから問題ないでしょ?」
いや、問題ありまくりだろ! 宰相が言ったのはあくまで決闘が始まる前であって、決闘中に乱入していいことにはならないはずだ。
だけどエミリアは自分が言ったことが全て正しいと自信満々の表情をするため、たまにこっちが間違っているじゃないかと思うときがあるんだよな。
「この場に立つ意味がわかっているのか?」
「この場に立つ意味?」
「余と戦うということは命の保証はしないということだ。エミリアにはその覚悟があるのか?」
確かにエグゼルドの言うとおりだ。
ただ俺が窮地に立たされ、見ていられなくなったから思わず身体が動いて飛び出てしまったという理由ならこの決闘に参加しない方がいい。エグゼルドも口にしているようにこの決闘に負けたら無事に帰れる保証などどこにもないのだから。
「覚悟? そんなものあるわけないじゃない」
「ならば早々に立ち去るがよい!」
守ってくれたことには感謝しているけど覚悟がないならこの場から立ち去るべきだ。
そしてエグゼルドの言葉には殺気がこもっているし、俺との決闘を邪魔されたことに対して相当怒り浸透だということがわかった。そのため下手なことを言うとエグゼルドは激昂して斬りかかってくるかもしれない。
だがこの後エミリアは、一騎当千の強さを持つエグゼルドに対してとんでもないことを言い始める。
「私が⋯⋯私達が勝つのに何故負ける覚悟をしないといけないの?」
さ、さすがエミリアだ。歴戦の勇者でありこの国の皇帝に対して啖呵を切るとは。
相手が誰だろうが自分の持論を曲げることはない姿はある意味清々しく感じるな。
「フッ⋯⋯フッハッハッ!」
殺気まみれだったエグゼルドが突然声を高らかに笑い始める。
「確かにその通りだ。余も負ける覚悟を持って戦ったことなど1度もない」
化物のような強さを持つエグゼルドならともかくエミリアまで敗北する自分を想像していないとはな。エグゼルド相手にそんな言葉を言えるのはこの世界でエミリアだけじゃないのか。
俺はその頼もしき背中に視線を送るがその時に気づいてしまった。エミリアの足が僅かだが震えていることに。
そうだ、相手はこの国のトップである皇帝陛下、それにこれ程の強烈な殺気を食らって正気を保つことなど常人には不可能だ。
だけどエミリアはその恐怖を乗り越えて俺を守るためにこの場に来てくれた。
例え勝負に負けたとしても加勢してくれたエミリアの命だけは絶対に護らないとな。
「リック! 何ボサッと突っ立っているの!」
「お、おう」
「やる気あるの? 絶対にこの勝負は勝つから!」
俺はエミリアに鼓舞され、再びカゼナギの剣を構える。
エミリアは俺が知るなかで唯一エグゼルドに立ち向かうことができる実力者で、帝国の守護者と呼ばれている公爵家のイシュバル・フォン・ルーンセイバーの娘であり、剣の天才と呼ばれている。
幼き頃は剣術に興味はなかったが、ドルドランドでサーシャと拐われた後、何か思う所があったようで剣の道に進むと忽ち頭角を現し、今では剣の技術は帝国1だと自他共に認められている存在である。
だがそれでもエグゼルドの強さにはまだまだ届かないと思う。しかし俺の創聖魔法で強化すれば⋯⋯。
「いいだろう。二人ともかかってくるがよい!」
そしてエグゼルドに認められたため、エミリアもこの決闘に正式に参戦することになった。
こうして俺はエグゼルドの攻撃によって窮地に陥ったが、エミリアが加勢してくれたことによって何とか命を取りとめることに成功し、そして今、俺・エミリアVSエグゼルドの決闘が始まるのであった。
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