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ナンバー1、ナンバー2の登場

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 何だ? 何かがおかしい。
 さっきと比べて空気が重いのは気のせいか?

「おうリック、遅かったな。慣れてない所に来て体調でも崩したのかと思ったぜ」
「そんなことないですよ」

 だがテッドはいつも通りだな。
 この違和感に気づいていないのか? それともテッドは既に酒を何杯も飲んでいるから、酔ってこの状況を理解していないのかもしれない。

 とりあえず俺は辺りを警戒しつつ席に座る。

「戻りました」
「お、お帰りなさい⋯⋯」

 ん? ライムさんの声が震えてないか?

「ライムさん? もしかして寒かったりしますか?」
「い、いえ⋯⋯そういう訳ではありません」

 何だか様子がおかしいな。
 俺がいない間に何かあったのだろうか。

「ライムお姉さん、席を外した後から様子が変なんですよ~」
「急に大人しくなって何を言っても教えてくれねえんだ」

 二人の話からライムさんは、ここから離れた時に何かあったと考えるべきだろう。
 だがどうしてかは教えてくれないというわけか。

「リックさん⋯⋯テッドさん⋯⋯と、当店のナンバー1とナンバー2が来られたので⋯⋯わ、私達と代わらせて頂き⋯⋯ます⋯⋯」

 おいおい。ライムさんは本当にどうしたんだ。顔が真っ青じゃないか。
 だけど一度下がると言っているからちょうど良かった。
 体調悪いのに、わざわざ俺なんかの相手をさせるのは申し訳ないからな。

「そ、それでは失礼致します。レモンさんも下がって下さい」
「う~⋯⋯せっかく楽しくお喋りしていたのに」
「俺も寂しいよ。次に来た時は必ずレモンちゃんを使命させてもらうよ」
「絶対ですよ~」

 そしてライムさんとレモンさんは席を離れて、バックヤードへと下がっていく。

「いや~二人ともマジ綺麗だったし可愛かったな! しかもあの二人でナンバー3とナンバー4だろ? ナンバー1と2はどんだけ容姿がいいのか楽しみだな!」

 こ、こいつは⋯⋯。
 何の目的でここに来たのか忘れたのか!

「テッドさん。遊ぶのもいいけど、ケインさんの情報を調べるのを忘れないで下さいよ」
「バカヤロー!」
「ぐはっ!」

 突然テッドが俺の顔面を殴ってきた。
 まさか手を出してくるとは思っていなかったので、まとも食らってしまった。

「いきなり何をするんだ!」
「お前が情報収集のことを何もわかってねえから殴ったんだ」
「ど、どういうことだ」

 もし納得いく内容じゃなかったら、強化魔法をかけてテッドをぶん殴ってやろう。

「俺は相手のことをよく観察してからケインの旦那のことを聞いてるんだ」
「それは何故ですか?」
「ケインの旦那はな⋯⋯勝手にいなくなるような人じゃねえんだ。ましてやラフィーネ様に何も言わずにどこかに行くなんてありえねえ」

 確かに、親しい人に何も言わずに姿を消すなんて普通は考えられない。

「俺はケインの旦那は連れ去られたと見ている。だから信用できる相手なのか見極めてから情報収集するようにしているんだ。もし旦那を拐った奴らに俺達のことを知られると、警戒されるかもしれないからな」
「最悪殺される可能性もあるってことですか」
「そうだ。だからまずは普通の客として相手を探り、少しずつケインの旦那の情報収集をするつもりだったんだ。けしてレモンちゃんの美貌にメロメロになっていた訳じゃないぞ」

 意外にもちゃんと考えているんだな。ちょっとだけ見直したぞ。

「それにしても早くナンバー1と2の娘来ないかなあ。こんなに楽しみになのは久しぶりだぜ」

 前言撤回。やはりテッドは情報収集のことなど考えていないように見える。
 鼻の下を伸ばして、まさにだらしないという言葉が似合う表情をしていた。

「おっ! 来たぞ! あれがこの店のナンバー1とナンバー2か! 1人はスレンダーな美人で、もう1人は胸が大きくてスタイル抜群の可愛い娘だぞ!」

 テッドよ視線が俺の背後へと向けられる。そのため二人の姿は俺の目にはまだ見えない。

「リックも見てみろよ! ルナ嬢ちゃん並みに可愛い娘だぞ!」

 ルナさんと同じくらい可愛い娘だと!? 
 そのような逸材はサーシャとエミリア、リリくらいしか思い浮かばないぞ。すぐにでも確かめたい衝動に駆られるが、後ろを振り向くと、がっついているように思われそうなので、俺は二人が席に来るのを待つ。

「お待たせ致しました」
「⋯⋯待たせたわね」

 挨拶の声が聞こえると同時に、ナンバー1とナンバー2の方は俺の両肩に手を置いてきた。

「遠くからでも可愛いのはわかっていたけど、近くで見ると気品があるというかオーラが違うな」

 そんなに可愛い人達なのか? 滅茶苦茶気になるぞ。
 俺は後ろを振り向かないと決めていたが、テッドの様子を見て我慢できず、思わず後ろを振り向いてしまった。
 だが俺はその選択を後悔することになる。

 何故ならそこには二匹の鬼がいたからだ。
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