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8話

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 ドサっと崩れ落ちる1人目──

 顔がめっちゃ気持ち悪いけど、倒せる事は判明した。

 やったのは【性感度】を10にしただけだ。

「何しやがった!? 「──果てろ」──……」

 2人目が襲って来たので、そのまま同じ要領で果てさせる。

 そのまま、3人目の魔術師であろう男が困惑している間に近寄り果てさせる──

 もう声なんて聞きたくない。

 男の果てる声なんて誰得だよ!

 よく見ると股間が濡れている……イカ臭い……そしてピクンピクンと動いていて気持ち悪い。

 まぁ、でもこれならBランクの男にも通用するだろう。

 哀れに滑稽に沈んでもらおう。そしてこの街で冒険者が出来ないように吹聴しまくってやる!

 レラを泣かせた罪は重い。

 やっとデレてくれたのにまたツンツンしたらどうしてくれるんだ!

「お前……いったい何しやがった……」

 未知の攻撃でBランクの男は困惑しているが──当然ながら容赦はしない。

「さてね? 気持ち良過ぎて気絶したんじゃない?」

「ふざけんなっ!」

 ふざけてないし、本当の事なんだけどね。

 しかし、こいつ本当にBランクなのか?

 攻撃が単調過ぎる。

 ──いや、母さんが凄すぎるだけか。

 今回、急に攻撃が見えるのも謎だ。

 もしかして何か新しいスキルとか習得したんだろうか?

 今はどうでもいいや。こいつを後悔させてやるのが先決。

 鍋の蓋で攻撃を防ぎながら掴もうとするが、腐ってもBランク──中々掴めない。

 僕も鍛えているとはいえ、体力が限界だ。

 どうしたもんか──

「ちょこまかと逃げやがって──」

 と思っていると、男はレラに向かって剣を突き刺そうと走り出す。

 拙い──レラはいきなりの事で呆然としている。

 なんとか僕はレラに当たる前に間に入り、間一髪で剣を止める事に成功する。

「ロ、ロイ?」

 僕の背中にいるレラが名前を呼ぶ。

「レラ……大丈夫?」

 僕は顔だけを振り向きそう答える。

 胸には剣が刺さっている──

「ロイぃぃぃぃっ! やだっ! そんな──なんで!?」

 僕の胸から滴る血を見て、意識が引き戻されたようにレラの叫び声が木霊した。

「これで終わりだな。お前に犯す所を見せてやれないのが悔しいがな」

 Bランクの男は下品な顔をしながらそう言うが──

 僕は剣を握る手を掴む──

「──確かにこれで終わりだ──果てろ──」

「ぐぅぅぅ──●▼◯△◇◆──」

 無事に【性感度】が発動し、その場に崩れ落ちた。


 ……やっと終わった。

 胸が痛いな……たぶん生きているから心臓とかは避けているはず。

 呼吸が苦しいのは肺を刺されているからだろう。

 血も全然止まらない。

 でも、レラを助けられて良かったと思う。

 僕も立っているのが限界だ。

 そのまま大の字で寝転がる。

「ロイ……ロイ……死んじゃ嫌……私なんかの為に死なないで……お願い……」

「……レラ……ごほっ……」

 レラだから助けたんだよ──そう話そうとしたけど喀血する。

「──ロイっ! しっかりしなさいっ! シャーリー頼みますっ!」

「わかりました──『回復』──」

 母さんとシャーリーさんが駆け付けて来てくれたみたいだ。

 僕の体も痛みがひいていく。

 ただ──

 疲れた。

「母さん──後頼むね?」

 そう言って意識を手放した。


 ◆


「ロイぃ……ロイぃ……死なないでぇ……」

 レラちゃんはずっと泣き続けている。

「シャーリー、ロイは助かりますか!?」

 私も心配だわ。シャーリーにどうか尋ねる。

「当然です。処置が早い段階なので問題ありませんよ。安心しなさい」

 致命傷だったので、その言葉に安堵する。

 急にロイが表情を変えて走り出すから気になってシャーリーと後をつけたけど、まさかレラちゃんが狙われるとは……。

 しかも相手は最近街にやってきたBランクの冒険者。強姦、強盗、恐喝と素行が悪くて街で噂になっていた奴だった。

 本当は直ぐにでも助け出してあげたかった……。

 冒険者にとってこういう荒事は日常茶飯事。

 所詮は素行の悪い奴らばかり。ロイの思うような冒険者は少ない──それを知って欲しかった。

 ロイが危なくなればもちろん介入するつもりだったけど、思いの外ロイは奮闘した。

 しかも木剣と木盾でだ。

 これには私も驚いた。

 木盾が燃やされて、さすがに拙いと思って動こうとすると今日の護衛役である『聖天』の1人で元部下のゾルが制止してきた。

 カイルの流派の兄弟子で、『聖天』で守りを担っている。

 ゾルは言う。

「カイルの忘れ形見をもう少し見たい。見極めさせてもらう──隊長が邪魔するなら俺が相手をする」

 さすがに街中で争うと被害が甚大だと判断した私は大人しくした。

 ゾルは何を思ったのか、鍋の蓋をロイの近くに転がした。

「──実は『盾術』って鍋の蓋でも効果出るんですよ。ほら、形が似てるでしょ?」

 私は真顔のゾルの言葉に頭に血が昇る。

 こいつ『ぶっ殺してやろうか』──と。

 だけど、ロイは鍋の蓋に気付いて手に取り、使いこなした。

 ゾルの言っている事が本当なのであればロイはやはり『盾術』を習得している事になる。

 これからの訓練内容を変える必要性が出てきた。

 戦闘は終盤に差し掛かると、ロイが反撃を開始していく。

 触れるだけで倒している事にその場にいる私を含めた3人が驚愕した。

 そして、ロイはレラちゃんを守って今に至る。

 傷が回復して呑気に寝ているロイにレラちゃんも泣き疲れて横で寝ている。

「隊長の息子さんは──将来立派な盾使いになるでしょう。カイルの代わりに俺が鍛えても良いですか?」

 一安心しているとゾルがそんな事を提案してきた。

 その提案は願ったり叶ったりだと私は頷く。

 私は剣しか教えてあげれない。出来ても剣による様々な攻撃を体に叩き込んで防ぎ方を我流で昇華させる事しか無理だ。

 最高の守り手であるカイルがいない以上は同じ【ガスタール流盾術】の兄弟子であるゾルは最適だろう。

 ゾルにそこまで言わせるぐらいロイには盾の才能がある。これはもう私もロイを認めなければならないでしょう。

 11歳から冒険者育成学園に通えるようになる。そうすれば見習い冒険者になり、他よりも早いスタートが出来る。

 その中でも冒険者ギルド本部がある学園にはダンジョンがある──あそこなら、この子達はもっと伸びるかもしれない。

 学園生活でダンジョンに潜れるのは授業と空き時間だけ。その空き時間を手に入れるには特待生にならなければならない。

 入学試験まで一年を切っている。

 なんとか試験に必要な勉強や訓練の計画を立てて実行しないと──

「「「う、うぅ……」」」

 育成計画を立てているとロイが倒した男共が呻き声を上げて動き出す。

 とりあえず──

 こいつらは愛しのロイを傷付けてくれた。

 しっかり落とし前はつけてもらう──

 私は剣を両手に持ち──

「「「ゔぎゃぁぁぁぁっ──」」」

 男達の目掛けて細切れするように斬撃を放つと叫び声を上げる。

 ナニを細切れにしたかは言わない。

 復元不可能にする為にシャーリーにを頼む。

 これでこいつらは女の子に悪い事は出来ないでしょう。

「次悪い事したらどうなるかわかってるわよね?」

 ダメ押しで殺気を込めた最大の『威圧』を放って話しかける。

 男共は命の危険を感じ取り顔面蒼白になった後、漏らしながら首をガクガクと縦に振る。

 さて、これで一件落着ね。


「ライラは相変わらずですね」

 とシャーリーはくすくす笑いながら言い──

「隊長は鬼だな」

 とゾルは言う。

 むしろ命を取らないで脅すだけにしている私を褒めてほしいぐらいだわ。

 さて、帰ったら訓練メニュー考えないと──
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