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ゴールデンなウィーク
軌道修正
しおりを挟む芳佳さんと別れたのは午後十時を回ってからだった。
そろそろ帰れ、と柾哉さんが促すまで私は芳佳さんと女子トークで盛り上がった。もちろん話題は柾哉さんのことだ。
普段の柾哉さんの様子や仕事中の彼の様子など余すことなく私は芳佳さんに伝えた。なんたって「存在自体が尊い」のだ。もうここまで大きく成長してださっただけで感謝である。
もちろん出逢えなければ私の幸せは半減もそもそも知らないので「人生最大のプレゼントです!」って言ってしまった。芳佳さんは笑っていたけど私は本気でそう思う。
なぜなら柾哉さんに出逢わなければきっと愛される幸せを知らなかったから。甘やかされているのは重々承知だけど、そこは末っ子次女だし仕方ない。昔から甘やかされていたと自覚した以上に彼は私を甘やかしてくれる。
それが負担にならない程度にしてほしいけど、彼を見ている限り今のところそのようには感じない。
芳佳さんからは柾哉さんの幼い頃の話をたくさん聞かせてもらった。お宝情報ザクザクゲットだ。おまけに、「今度アルバム見せてあげるね!」というありがたき幸せも約束された。できれば小さい柾哉さんの写真をいただきたい。絶対可愛いはずだとウキウキする私に芳佳さんは「期待してて」と言い、最後は柾哉さんに呆れられながら連絡先を交換した。
そしてようやく自宅に帰ってきた、んだけど。
「果穂?」
「ひゃい!」
扉が閉まるや否やなんか不穏な雰囲気を感じて飛び上がった。
柾哉さんを見上げれば笑顔の圧が怖い。
「どうして俺が怒ってるかわかってる?」
「…い、色々喋りすぎました?」
柾哉さんが靴を脱いでズンズンと廊下を進む。その後ろをすごすごとついて行くと寝室の扉が開いた。入っていいのかと怖気付いていると彼がくるりと振り返る。おいでと言われて部屋の中に一歩足を踏み入れた。
「それはいい」
「…じゃあどうして?」
肩にかかるジャケットが脱がされた。
ワンピースの肩紐がずらされてパサっと足下に落ちる。
「俺、今日早く二人きりになりたいって言ってたよね?」
帰りの新幹線で、と言われて今更ながらに思い出した。確かにあの時は早く二人になりたくて抱き合いたかった。昨日も一昨日もたくさんシたのに、早く彼と肌を重ねたくてソワソワして…。
「…うん」
Tシャツにショーツのまま彼を見上げた。場違いかもしれないけど、不貞腐れた顔が最高に可愛くてキュンキュンする。
(ま、柾哉さんが拗ねてる…!)
にやけそうになる口元を必死に引き締めていると彼は私のTシャツに手をかけて「万歳して」と優しく命令した。
「姉さんが来たのは突然だったし、優しい果穂が提案にのったのもわかるよ?でもちょっと俺のこと忘れ過ぎじゃない?」
柾哉さんは膝をつくとブラとショーツになった私を抱きしめて胸に顔を埋めた。白い肌に散らばる赤い痕。少し薄くなった赤に重なる紅。胸元に顎を置いて下から見上げてくる彼はおもちゃを取られた小さな子どものよう。
それに加えて故意なのか下半身が密着している。決して薄い布じゃないのに、その布の向こうから主張するソレがぷんすか怒っているように見えた。
(…か、可愛いがすぎる!!渋滞1000km!玉突き事故発生案件…っ!)
「忘れた分ちゃんと返してくれる?」
いい?と絶対断らせない声に小さく頷いた。
何度も貫かれた身体はその瞳に見つめられるだけで期待する。腰を抱く手がいつショーツを脱がしてくるのかと緊張して心拍が上がった。
「ん…」
いつもと姿勢が反対だ。なのに下から突き上がってくる舌が暴力的に思考を鈍らせていく。こぼれ落ちる唾液を互いの咥内で分け合い舌を絡める。彼の首を抱き締めてキスに夢中になっていると、柾哉さんの手がショーツに隠された秘部を撫でた。
「…っぁ、」
期待して敏感になっていた身体はその愛撫に歓声をあげた。もっと触って、と無意識に脚が開いていく。キスをねだり開いた脚で彼の手のひらに下腹部を押し付けると、下から見上げる彼が意地悪く笑った。
「…っ、いじわるっ」
「何もしてないけど?」
撫でていた指の動きが止まる。ただ指がソコに置かれたままはもどかしくて仕方ない。
それなのに「何もしていない」って…!
立派に「焦ら」してるのに…!
すっとぼけた彼はそのまま私をベッドまで運ぶと丁寧に転がした。しかも後ろ向きで。柾哉さんはジャケットや衣服を脱ぎ捨てるとパンツ一枚になった。
「…っや」
「ここ、すごく湿ってる」
クイっと腰を持ち上げられて濡れた箇所が晒された。布地を這う指が意地悪く行ったり来たりするのに、直接触ってこない。それなのに、すでに膨らんで硬くなったソレを後ろから押し付けてくる。
柾哉さんのおかげでいかに自分が我慢強くないか知った。こんなふうに焦らされても我慢できない。掴まれた腰をより高い位置にあげて彼の下腹部に押し付ける。ちょうど秘部が彼の膨らみの一番太い部分に擦れるように腰をしならせた。
「そんなエロいこと誰に教えられたの」
「ま、柾哉さん」
「んー?」
「だってこうしたら“くれる”って言ったもん」
振り返って見上げた顔は獲物を目の前にした肉食獣のようにギラついていた。欲望を前面に押し出した狩人の目。その目に見つめられてぞわりと腰が疼く。
「…ほしい、の」
彼に抱きつこうと膝立ちになったのに後ろから回された腕に引き寄せられた。ベッドの上に尻餅をつく。しかしそれは彼の足の間。さっきよりも近い距離で妖しく光る瞳とぶつかった。
「なにを?」
「…まさ、」
言葉を塞ぐようにキスが落ちてくる。ブラがずり上げられて押し出された胸の先端を彼の長い指が優しく挟んだ。
「こんなに硬くして」
「だって」
「でもまだだめ。俺がどれだけお預けされたと思う?」
そんなこと言われても…♡♡!
ブラのホックが外されて自由になった膨らみが彼の手のひらで弄ばれた。
口蓋を撫でる肉厚の魔物が息をする暇もないぐらい私に絡みついて離れない。
「果穂」
甘く蕩けた声が脳を揺らす。この声に呼ばれると私はもう彼の言いなりだ。
「もっと脚開いて」
「…っン」
彼の脚が私の膝下に絡みつく。熱い体温に誘導された四肢が素直に開かれた。少し姿勢を崩して柾哉さんに持たれかかったまま、私の脚がM字を作る。
「ここだけ色が違う」
「…っ」
「果穂。どうしてほしいか言って?」
「っ、ちょくせつ、さわってほしい」
「どうやって?」
「…っ、こう、して?」
私は柾哉さんの手を引いて自分のショーツの中に招いた。彼の大きな手が面積の狭いショーツからはみ出る。その画がとてつもなくいやらしくて、下腹部のキュンキュンが止まらない。
「すごい溢れてるけど。俺何もしてないよ?」
「…っだって、」
「ぁあ、ここもこんなに膨らませて」
かわいい、と耳元で囁かれてさらに体内から蜜が溢れ出す。自然と揺れてしまう腰に応えるよう、彼の指が膨らみを挟んでは軽く押し潰してと弄び始めた。外側を可愛がられているうちに内側が寂しくなる。早く指でかき混ぜてほしいのに柾哉さんは意地悪だ。
「果穂、言ってごらん?」
「…っ、ぁ、ぁあああ」
言ってごらん、って言いながら言わせてくれないのはいつもの柾哉さんだ。
だけどいつもならキスをくれるのに今日はキスをくれない。その代わりさっきまで焦らしていた指が弱いところばかり撫でてくる。
下半身が震えて目の前が真っ白に弾け飛んだ。くたりと彼にもたれかかると冷たくなったショーツを脱がされる。
「っ、ぁ、だめっ。まだ、おふろ、ぁあぁああっ♡」
熱く蠢く肉厚の魔物がぐずぐずになったそこを丁寧に舐めとった。
達したばかりの下腹部にまた波が押し寄せる。腰をくねらせて「ちょっと待って」と言ってるのに手加減してくれない。
「ぁっ、ぁああっ、やっ…っ♡♡♡」
彼の頭を太ももで挟みながら抗議すれば舌の動きが激しくなった。立て続けにイッてしまい、下半身の力がもう入らない。
「…まさや、さん…っ」
いつもならそろそろくれるはずなのに、今夜はなかなかその気配がない。
力の入らない腕を広げると「どうしたの」と私を抱きしめてくれた。
「どうして、くれないの」
「果穂がナニをほしいか言わないから」
「…いじわる!」
「いまさら?」
むぅと頬を膨らませば、彼がクスクス笑うだけだ。硬くなったそれを隠している布を脱がそうと手でそれを引っ張ると引っかかっていた指から落ちてパチンと肌をうつ音がした。
「果穂」
「ぬ、脱がしたかったの」
「脱がしてどうしたいの?」
抱きしめられた腕の中でよいしょと脚を彼の腰に引っ掛ける。直接的な単語を避けてどうやって伝えるか考えながら彼を見上げた。
「ココ、に挿れてほしぃ…です」
恥ずかしくて恥ずかしくて仕方ない。一生懸命言葉にしているのに柾哉さんは私を胸に抱き込むと盛大にため息を吐き出した。
「…本当、小悪魔。いや、もう悪魔。誰だこんなおねだりを教えたのは」
「……柾哉さんしかいないよ?」
「…なら天才すぎだわ」
顔を見合わせて笑いあってどちらからともなく唇を重ねた。
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