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ヴァレールにはうんざりよ
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ヴァレールは、人妻のわたしにつきまとっている。理由はわからない。とにかく、ことあるごとにわたしの目の前に現れ、わたしをうんざりさせる。
どう考えてもふつうの男性のすることではない。だから、最近では彼だからという理由で諦めている。
どうせ彼になにを言ってもきかないだろうから。
というわけで、彼の好きなようにさせて男爵邸までやってきた。
つきまとう彼をひたすら無視し、いろいろ物色してまわった。
そして、所持するとか所持しないとか廃棄するとかしまい込んだままにするとかなどを、ザッと決めていく。
様々な品を見ながら、自分がいかに物忘れがいいかを痛感する。
自分でも驚くほど忘れてしまっている。
いうか、忘れてしまっているというレベルではない。まったく知らないといっても過言ではないほど、わからないのである。
愕然とした。大ショックだった。信じられなかった。
あらためて痛感しつつ、さして大きくない邸内を物色してまわった。
とはいえ、つい最近のことは大丈夫。侯爵の契約妻になる直前のこと、たとえば馬関係の資料を自分なりにまとめていたこと、一応料理のレシピを書き写していたことなどは覚えている。
(それにしても、これってなにかの病かしらね?)
もしかして、老化が始まっている?
だったら笑うに笑えない。
そのようにショックを受けたり絶望したりしている間にも、ヴァレールはつきまとい続けている。それをひたすら無視しているけれど、彼はそれでも「かまってちゃん」を発揮しつつあとをついてくる。
(仕方がない。今日は持って帰るのをまとめるだけにしておこう)
荷物があると、ヴァレールに「シルヴェストル侯爵家まで送っていく」という機会を与えるようなもの。
侯爵に気兼ねをするわけではない。向こうもそれなりにレディがいて、付き合っているでしょうから。
それでも、一般的には上位貴族の妻であるわたしが他の男性とむやみにいっしょにいるべきではない。ましてや馬車内で二人きりになり、送ってもらうなどということは軽率すぎる。
とはいえ、ヴァレールがわたしにつきまとっていることは、侯爵は知っているはず。すでに耳に入っているでしょうから。あるいは、どこかで見られたかもしれないから。
当然、そのことで彼がわたしになにか言ってくることはない。そして、当然のことながらわたしが彼になにか言うことはない。
面倒くさすぎるから。
とにかく、いまも出来るだけさっさと物色し、帰宅することにした。
「送っていただかなくて結構です」
「ほら、見ろよ。陽がガンガンに照っている。きみのその顔が焼けてしまうぞ」
プランタード公爵家の馬車は、わがソニエール男爵家の前庭にはサイズが大きすぎる、らだから、馬車は門の外で待っている。
戸締りを確認してから門へと歩いていると、案の定ヴァレールがしつこく言ってきた。
「シルヴェストル侯爵家へ送っていく」、とうるさすぎるのである。
どう考えてもふつうの男性のすることではない。だから、最近では彼だからという理由で諦めている。
どうせ彼になにを言ってもきかないだろうから。
というわけで、彼の好きなようにさせて男爵邸までやってきた。
つきまとう彼をひたすら無視し、いろいろ物色してまわった。
そして、所持するとか所持しないとか廃棄するとかしまい込んだままにするとかなどを、ザッと決めていく。
様々な品を見ながら、自分がいかに物忘れがいいかを痛感する。
自分でも驚くほど忘れてしまっている。
いうか、忘れてしまっているというレベルではない。まったく知らないといっても過言ではないほど、わからないのである。
愕然とした。大ショックだった。信じられなかった。
あらためて痛感しつつ、さして大きくない邸内を物色してまわった。
とはいえ、つい最近のことは大丈夫。侯爵の契約妻になる直前のこと、たとえば馬関係の資料を自分なりにまとめていたこと、一応料理のレシピを書き写していたことなどは覚えている。
(それにしても、これってなにかの病かしらね?)
もしかして、老化が始まっている?
だったら笑うに笑えない。
そのようにショックを受けたり絶望したりしている間にも、ヴァレールはつきまとい続けている。それをひたすら無視しているけれど、彼はそれでも「かまってちゃん」を発揮しつつあとをついてくる。
(仕方がない。今日は持って帰るのをまとめるだけにしておこう)
荷物があると、ヴァレールに「シルヴェストル侯爵家まで送っていく」という機会を与えるようなもの。
侯爵に気兼ねをするわけではない。向こうもそれなりにレディがいて、付き合っているでしょうから。
それでも、一般的には上位貴族の妻であるわたしが他の男性とむやみにいっしょにいるべきではない。ましてや馬車内で二人きりになり、送ってもらうなどということは軽率すぎる。
とはいえ、ヴァレールがわたしにつきまとっていることは、侯爵は知っているはず。すでに耳に入っているでしょうから。あるいは、どこかで見られたかもしれないから。
当然、そのことで彼がわたしになにか言ってくることはない。そして、当然のことながらわたしが彼になにか言うことはない。
面倒くさすぎるから。
とにかく、いまも出来るだけさっさと物色し、帰宅することにした。
「送っていただかなくて結構です」
「ほら、見ろよ。陽がガンガンに照っている。きみのその顔が焼けてしまうぞ」
プランタード公爵家の馬車は、わがソニエール男爵家の前庭にはサイズが大きすぎる、らだから、馬車は門の外で待っている。
戸締りを確認してから門へと歩いていると、案の定ヴァレールがしつこく言ってきた。
「シルヴェストル侯爵家へ送っていく」、とうるさすぎるのである。
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