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謎のレディは、夫の愛人じゃなかった
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「アイ、ほんとうにごめんなさい。フェリクスにきいているものとばかり思っていたの」
ラングラン侯爵家に戻ってきた。
屋敷のみんなはもちろんのこと、フェリクスの愛人であるアンヌ・リヴィエールも出迎えてくれた。
訂正。謎のレディ、わたしが愛人と勘違いしてしまっていたのだ。
フェリクスにあらためて紹介された。そのときになってやっと、彼女はリヴィエール侯爵家の才女と名高いレディであることに気がついた。
彼女は、ジラルデ帝国軍初の女性軍医として大活躍していている。
そして、毒の刃を受けたフェリクスの命を救った恩人でもある。
彼女は、すでに死のカウントダウンが始まっているフェリクスが突然駐屯地から領地に帰ってしまったときいた。
彼女はそこで、いてもたってもいられなくなって追いかけてきたのである。
美しい上に才女である彼女には、ジラルデ帝国の三将軍のひとり、つまりフェリクスとは同量であり大親友である将軍の夫がいて、その夫との間に三人の息子がいるらしい。
アンヌとわたしは、わたしの部屋の寝台の上に二人で並んで座って話をしている。
「愛人? このわたしが? フェリクスの愛人ですって? よしてよ。こんな強面の脳筋バカが愛人だなんて、冗談じゃないわ」
アンヌとは、すぐに仲良くなった。
同世代の友人といえば、メイドのロマーヌとヴェロニクくらいなもの。彼女とのやり取りは、すごく新鮮だった。
なにより、すごく気が合う。
「ああ、ごめんなさい。彼は、強面の脳筋バカだけど将軍としては最高だから。三将軍の筆頭だし。しかもあんな外見なのに、人を想うことにかけてはどんな男性にも負けやしないわ。わたしのダーリンでさえね。アイ、だから安心して。そういう点は、あなたがうらやましいくらいよ」
彼女は、何度もおなじことを言った。
パトリスとピエールは知らなかったらしいけれど、フェリクスはわたしのことを彼女に告げていたのである。
「レディの気持ちとか感情とかがわからないからと、なにかとあなたのことで相談されたの。その際、あなたが癒しと加護の力を持つジャックミノー家の出身だときいたの。彼の毒は、残念ながらわたしの力では、いいえ、ジラルデ帝国の医療ではどうにも出来ない。あなたなら彼を癒すことが出来るかもしれない。わたしは、そう思い立ったの。いいえ。切望したといっていいわね。だけど、彼は頑なに『うん』とは言わなかった。あなたを巻き込みたくない。その為に結婚したのだと思われたくない。そんなくだらない妄想や考えに囚われてね。毒が彼に与える痛みは、すさまじいものだと思う。彼はきっと睡眠だってままらなかったと思う。最近は、ふつうに生活することが出来ないほどの痛みを伴っていたはずなのよ」
「そんな……。わたしが気がつけていれば、注意深かったら、もっとはやく彼を癒せたはずだったのです」
屋敷に帰るなり、パトリスとピエールとモルガンとロドルフにフェリクスをおさえつけてもらい、嫌がるフェリクスに癒しを行った。
彼は完全に解毒されて痛みが消え去ると、自分の寝室でぐっすり眠ることが出来ている。
「アイ。フェリクスを許してやって。真実を知ったあなたが彼を許してくれるのなら、あなたも彼もきっとしあわせになれる」
彼女の言葉に、わたしは大きく頷いた。
だって、それ以外にある?
当たり前よね?
ラングラン侯爵家に戻ってきた。
屋敷のみんなはもちろんのこと、フェリクスの愛人であるアンヌ・リヴィエールも出迎えてくれた。
訂正。謎のレディ、わたしが愛人と勘違いしてしまっていたのだ。
フェリクスにあらためて紹介された。そのときになってやっと、彼女はリヴィエール侯爵家の才女と名高いレディであることに気がついた。
彼女は、ジラルデ帝国軍初の女性軍医として大活躍していている。
そして、毒の刃を受けたフェリクスの命を救った恩人でもある。
彼女は、すでに死のカウントダウンが始まっているフェリクスが突然駐屯地から領地に帰ってしまったときいた。
彼女はそこで、いてもたってもいられなくなって追いかけてきたのである。
美しい上に才女である彼女には、ジラルデ帝国の三将軍のひとり、つまりフェリクスとは同量であり大親友である将軍の夫がいて、その夫との間に三人の息子がいるらしい。
アンヌとわたしは、わたしの部屋の寝台の上に二人で並んで座って話をしている。
「愛人? このわたしが? フェリクスの愛人ですって? よしてよ。こんな強面の脳筋バカが愛人だなんて、冗談じゃないわ」
アンヌとは、すぐに仲良くなった。
同世代の友人といえば、メイドのロマーヌとヴェロニクくらいなもの。彼女とのやり取りは、すごく新鮮だった。
なにより、すごく気が合う。
「ああ、ごめんなさい。彼は、強面の脳筋バカだけど将軍としては最高だから。三将軍の筆頭だし。しかもあんな外見なのに、人を想うことにかけてはどんな男性にも負けやしないわ。わたしのダーリンでさえね。アイ、だから安心して。そういう点は、あなたがうらやましいくらいよ」
彼女は、何度もおなじことを言った。
パトリスとピエールは知らなかったらしいけれど、フェリクスはわたしのことを彼女に告げていたのである。
「レディの気持ちとか感情とかがわからないからと、なにかとあなたのことで相談されたの。その際、あなたが癒しと加護の力を持つジャックミノー家の出身だときいたの。彼の毒は、残念ながらわたしの力では、いいえ、ジラルデ帝国の医療ではどうにも出来ない。あなたなら彼を癒すことが出来るかもしれない。わたしは、そう思い立ったの。いいえ。切望したといっていいわね。だけど、彼は頑なに『うん』とは言わなかった。あなたを巻き込みたくない。その為に結婚したのだと思われたくない。そんなくだらない妄想や考えに囚われてね。毒が彼に与える痛みは、すさまじいものだと思う。彼はきっと睡眠だってままらなかったと思う。最近は、ふつうに生活することが出来ないほどの痛みを伴っていたはずなのよ」
「そんな……。わたしが気がつけていれば、注意深かったら、もっとはやく彼を癒せたはずだったのです」
屋敷に帰るなり、パトリスとピエールとモルガンとロドルフにフェリクスをおさえつけてもらい、嫌がるフェリクスに癒しを行った。
彼は完全に解毒されて痛みが消え去ると、自分の寝室でぐっすり眠ることが出来ている。
「アイ。フェリクスを許してやって。真実を知ったあなたが彼を許してくれるのなら、あなたも彼もきっとしあわせになれる」
彼女の言葉に、わたしは大きく頷いた。
だって、それ以外にある?
当たり前よね?
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