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三章 暗躍

謝罪会見

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「…………この度は誠に申し訳ございませんでした」

 どこでこのような光景を見るだろう。
 配下にボコボコにされ、更には頭を下げさせられる上司など見たこともない。また、見たくもない。

「皆さんに心配をかけてしまい…………」

 吹っ飛ばされて、タコ殴りにされたハデスは膨れる頬を押さえている。

 あの後、吹っ飛ばされたハデスはマーリンが転移で回収しに行った。
 そして、この部屋でさらにボコボコにされたというわけだ。

 今はまるで記者会見のように前方にハデスは座らされている。
 これが魔王など今でも信じがたい光景だ。

「それで何故我は呼び出されたのでしょうか?」

 ハデスは不思議そうに聞いてくる。

「レイ様のことを放っておいたからです。しっかりレイ様の責任はとってください」
「そうだ。俺のスキルのせいでもあるけど、俺が魔王覇気を使えるようになってるんだよ」

 先ほどのハデスのスローライフを送りたいという言葉に少し俺の心が揺さぶられていないと言えば嘘ではない。
 今、俺は実際に勇者という称号から逃れてスローライフを送ろうとしている。

 どことなくハデスと俺の境遇は似ているのだ。
 しかし、まぁここで許容するのも違う。

 そう。それは俺の望むスローライフではないのだ。

「…………え? レイに覇気?」

 ハデスは理解できないといったように聞いてくる。

 そろそろ俺も自分自身を見つめなおさなければならないと思っていた。
 それが今だ。

 俺は山積みにされている中から一人の筋肉マッチョの女性を引き抜く。
 衣服は水着のように上と下に薄い下着だけだ。少し扱いに困ってしまう。

 なぜ、マーガレットと分かったのかって?
 校長が一番のビッチと言っていたからだ。

「起きてくださ~い」

 ペシペシペシぺシ!

「「「「……………………」」」」

 往復平手打ちをする俺を見て四人は気まずそうに見守っている。
 しかし、この魔王幹部。マーガレットは起きそうにない。

 この女性が起きれば俺のスキルを鑑定できる。
 今まで自然に背けてきた俺の中身だ。
 少し緊張しないこともない。だが、ここで知らなければ永遠に俺は目を背けるだろう。

 俺は少しだけマーガレットと距離をとった。
 そして、魔王らしい歪な笑みを浮かべて世界で一番恐ろしい声で朝の挨拶を口にする。

「【朝ですよ~】!」
「きゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ⁉」

 マーガレットの沈んでいた意識は覇気のショックによって戻される。
 沈められた覇気によってもう一度起こされるなど皮肉なものだ。
 マーガレットの気持ちなど想像もしたくない。

 そして、更にこれから起こる巨大なショックについても。

「マーガレットさん。ちょっとあなたにご協力を願いたいのですが」

 よりによって何故ハデスが言うのか。
 まぁこういう状況ではトップが言うのが一番手っ取り速いのだが、それは時と場合による。

 マーガレットの気持ちにもなってみてほしい。
 急に出てきた新参者の元勇者に気絶させられ? そして起こされた時には敵派閥に囲まれて? 更には目の前にトップである魔王?

「い、いやあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ⁉」

 まぁそうなるわな。トラウマになってなければいいが。
 せっかく意識を取り戻したマーガレットは、目の前の光景に目を限界まで見開いて気絶したのだった。
  
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