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私の愛を試そうと婚約破棄をしかけて来た彼は…それが現実のものとなり、後悔しています。

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 家同士の約束で婚約する事になった彼には、少し困った癖があった。

 それは…とにかく疑い深くて、私の愛を試そうとする事だ─。


 例えば、私の目の前でわざと女の子に優しくし…後から嫉妬した?怒った?としつこく聞いて来る。

 最初こそ、勿論よ…だからもうそんな事は辞めてと言って居た私だったが…何回もそんな事をされては、悲しみでは無く怒りが湧く様に─。

 

 そうやって、私の嫌がる事を平気でする癖に…私が殿方と世間話をするだけで、すぐに怒鳴って来るんだもの。

 そんなの、益々嫌になっちゃうわ。

 あぁ…こんな思いするくらいなら、いっそ彼から婚約破棄すると言ってくれないかしら─。



 そんなある日の事─。

 私の家で行われた私の誕生日パーティーで…彼はある令嬢の腕を組み、私に婚約破棄を宣言して来た。

「最近のお前は、俺に余りに冷たい。そんな時この彼女に優しくされ…俺はお前と婚約破棄し、彼女を新たな婚約者に迎えたいと思った。」

 
 
 そう言い放った彼の目は…冷たくしてごめんなさい、捨てないで下さいと言うなら今だぞと言う期待に満ち溢れて居た。

 そう…この人の考える事くらい、私はもうお見通しよ─。

 だからこそ、私はあなたの思い通りになどならないわ─。



「…そうですか。ならば仕方ありませんね、婚約破棄しましょう。」

「…え?」

「人の気持ちを縛り付ける事は出来ませんから…あなたは、どうぞその方と幸せになって下さい。」



 そう話す私に…彼は焦った様子で、これは一体どういう事だと呟いて居る。

 そんな彼の元に、彼の父親が慌てて駆け寄って来た。

「お、お前は何を言って居る!彼女と婚約破棄したら、彼女の家との繋がりが…そうなったら、我が家の事業は─!」

「違うんです父上!ここは婚約破棄などしたくないと、彼女が泣きつくはずで…。その為に、この女にも金を渡し協力して貰って─。」



 すると、それを見て居た私の父が…怒った顔で二人の前に立った。

「娘が言って居た事はやはり本当だったか…。婚約者を信じられず、そんな愚かな事をする者との婚約など、喜んで破棄させて貰う。婚約の件だけでなく…事業に関しての縁も、今日この場で完全に切れたものと思え!」

 その言葉に…彼は後悔の涙を流し、その場に崩れ落ちたのだった─。



 その後…彼は自身の父親から大層叱られ、親子の縁を切られ家から追放される事に─。

 彼の愚かな行いは、既にこの地に知れ渡って居た為…誰もそんな彼を助けようとしなかった。

 その為、彼はこの地を去り…そして路頭に迷う羽目になったのだった─。



 一方、私はと言うと…あのパーティに来て居たある殿方に見初められ、彼を新たな婚約者に迎える事に─。
 
 彼は私の愛を疑う事無く、私だけを一途に想ってくれ…そんな彼と一緒に居ると、とても心が安らいだ。

 こうして、愛は試されるものと耐えてきた私は…漸くその呪縛から解放され、幸せを手にする事が出来たのだった─。
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