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二年目 いざ、グラムナードへ!
楽しみ一つ
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一晩を宿で過ごした翌日は、エルドランの孤児院でお世話になる。
勿論、お世話になるんだから雑用の類のお手伝いもさせてもらう予定。
ポッシェは力仕事担当で、アッシェはご飯の用意。
私は洗濯や繕い物のお手伝い。
実は、お料理は苦手。
多分アレは、なんらかのセンスが必要なんだと思う。
私には無理。
レシピ通りに作ってるはずなのに、何故か独創的な味になっちゃうんだもん。
代わりに、飾り切りの類は得意だけどね。
ただ、そういうのは量が食べたい子供の多いところには向かないんだよ。
その点、アッシェが作ると材料の無駄はないし、味も良い。
こう言うのは適材適所ってやつがあるじゃない?
私は、大人しく手先が器用なのを生かせる繕い物を黙々とこなします。
ところで、活動的な子が多いと、どうしても服があっという間に傷んでいくんだよね。
だから、私のお仕事は沢山あるだろうと意気込んでたんだけど、これが思ったよりも少ない。
勿論、ない訳でもないし、一日で終わる量でもないんだけどね。
子供たちの人数の割には少ないんだよ。
「思ったよりも少ない……?」
なので、思わず拍子抜けした私はそう呟いた。
「こないだ、リエラちゃんが来た時に殆ど直してくれたからだよ!」
嬉しそうにそう教えてくれたのは、今日一緒に繕い物をするジョゼットちゃん八歳。
淡い茶髪のウサギ耳族の女の子。
「ほとんど新品状態にしてくれたのに、すぐに男の子達が破っちゃったのよね。」
「やんなっちゃう。」
そう続けるのは、同じく繕い物担当のベルナンドちゃん九歳とリリアネットちゃん十歳。
二人とも丸耳族で暗い茶髪と明るい茶髪の女の子達。
「リエラさんって、お裁縫上手なんだ。」
新品同然に見えるくらいに綺麗に繕うのなんて、よっぽどの熟練職人さんじゃないと無理だと思う。
きっとリエラちゃんってのは、『ちゃん』付けされてるおばさんかお婆ちゃんなんだな。
そう思って敬意をこめてそう返すと、可笑しそうな笑い声が三人の口から上がる。
「リエラちゃんは、去年ここから自立して、グラムナードに弟子入りしたお姉ちゃんだよ。」
「元々、凄く器用だったけど、魔法まで使えるようになっててビックリしたのよね。」
「うんうん。
シスター達にも魔法教えてくれて、ちょっとだけ火をつけたりとか楽になった。」
「えええ?」
――魔法って、そんなに簡単に使えるようになるモノなの?
と言うのが、第一の驚き。
第二の驚きは、去年自立して弟子入りしたって事は、今は十三歳だって事だよ。
そういえば、きちんと思い返してみると、エリザちゃんちゃんがひたすら話してたこの名前がリエラちゃんだったかも。
半分聞き流してたから、すぐには繋がらなかったけどたしかそうだったはず。
私が驚いて目を白黒させてる間も、彼女達の話は止まらない。
「繕い物も、こうやって平たくして置いたのを、撫でただけで破れてた場所が綺麗にくっついちゃったんだよ!
魔法ってすごいよねぇ!」
「だよねぇ。
あたしも早く魔法使ってみたいなぁ……。」
「十一歳になったら教えてくれるって言ってたし、楽しみ。」
もう、これは私が居ても居なくても話してる内容なのかも。
聞いてる感じだと、どうもリエラちゃんとやらは無償で魔法を教えてあげるつもりのように聞こえるんだけど……。
随分と気前がいいんだなとビックリ。
魔法って、本来なら魔法を使える人――大体が錬金術師と名乗ってる――に弟子入りするか魔法学園に入学してやっと覚えることが出来るかもしれないって代物なのに。
それだけ、この孤児院に思い入れがあるのかもしれないけど、ちょっと肩入れをしすぎるのは危ないんじゃないのかな?
上手く言えないけど、変な人にここが目をつけられたりしたらどうするんだろ。
それにしても、魔法で繕い物までできるなんて思ってもみなかった……。
魔法ってずいぶんと便利なモノらしい。
リエラちゃんって子が、一年そこそこでそんな事までできるようになったって事は、私にだってその可能性はあるって事。
また、グラムナードに辿り着いた後の楽しみが増えた気がする。
その晩は、イリスさん達の送迎会って事で少し豪華なお夕飯だったらしい。
普段は並んでないようなものが食卓には並んでたみたいで、子供たちは歓声を上げていた。
私達的には、割と普通のメニューだったところを見ると、やっぱりフレトゥムールの孤児院は恵まれてたんだと再確認。
ちなみに、材料費はイリスさん達が出したみたい。
私とアッシェとポッシェの三人は、イリスさん達と一緒に院長先生と近い席で色々とお話をさせてもらった。
院長先生は随分とお年を召した猫耳族の女性で、なんだか暖かい雰囲気をまとった人。
子供たちが『お母さん』って呼んでる理由が良く分かる。
私達はエルドランの町の事を教えて貰った代わりに、フレトゥムールの話をさせてもらった。
話をするのは主にアッシェだったのは、まぁいつもの事。
アッシェが話しそこなった事を、私とポッシェでフォローすればいいからある意味楽だから、いつの間にかそういう風になってたんだよね。
様々な理由で親を失った子がそろって生活する場だから、大きな意味では変わらないんだと思うんだけど、多分、ところ変われば~っていうヤツなんだよね、きっと。
思ってたよりも、エルドランとフレトゥムールだと違う部分もあったんだよ。
フレトゥムールの孤児院だと、同じ年の子達が同じお当番をすることの方が断然多かった。
だから、同い年の子同士の方が仲が良かったんだけどね、こっちの孤児院はいろんな年齢の子が混ぜこぜで孤児院の雑事をこなしてるから、全体的に仲が良い感じ。
あと、十一歳の子達はあっちと違って、アルバイトはしてなかった。
これはアルバイト人手をに割くほどの余裕がなかったからみたい。
フレトゥムールの孤児院の話をしたら、なんとかこっちでもやれないか考えてみたいって話してた。
どうも、ここでは自立させる為の費用の捻出に苦労してたみたい。
だからその話をした時には、なんだか目から鱗が落ちたような顔をしてた。
今年からって言うのは難しいかもしれないけど、早いうちに似たような事を出来ないか検討したいって話してたからその内、この孤児院の子達もアルバイトをするようになるのかも。
勿論、お世話になるんだから雑用の類のお手伝いもさせてもらう予定。
ポッシェは力仕事担当で、アッシェはご飯の用意。
私は洗濯や繕い物のお手伝い。
実は、お料理は苦手。
多分アレは、なんらかのセンスが必要なんだと思う。
私には無理。
レシピ通りに作ってるはずなのに、何故か独創的な味になっちゃうんだもん。
代わりに、飾り切りの類は得意だけどね。
ただ、そういうのは量が食べたい子供の多いところには向かないんだよ。
その点、アッシェが作ると材料の無駄はないし、味も良い。
こう言うのは適材適所ってやつがあるじゃない?
私は、大人しく手先が器用なのを生かせる繕い物を黙々とこなします。
ところで、活動的な子が多いと、どうしても服があっという間に傷んでいくんだよね。
だから、私のお仕事は沢山あるだろうと意気込んでたんだけど、これが思ったよりも少ない。
勿論、ない訳でもないし、一日で終わる量でもないんだけどね。
子供たちの人数の割には少ないんだよ。
「思ったよりも少ない……?」
なので、思わず拍子抜けした私はそう呟いた。
「こないだ、リエラちゃんが来た時に殆ど直してくれたからだよ!」
嬉しそうにそう教えてくれたのは、今日一緒に繕い物をするジョゼットちゃん八歳。
淡い茶髪のウサギ耳族の女の子。
「ほとんど新品状態にしてくれたのに、すぐに男の子達が破っちゃったのよね。」
「やんなっちゃう。」
そう続けるのは、同じく繕い物担当のベルナンドちゃん九歳とリリアネットちゃん十歳。
二人とも丸耳族で暗い茶髪と明るい茶髪の女の子達。
「リエラさんって、お裁縫上手なんだ。」
新品同然に見えるくらいに綺麗に繕うのなんて、よっぽどの熟練職人さんじゃないと無理だと思う。
きっとリエラちゃんってのは、『ちゃん』付けされてるおばさんかお婆ちゃんなんだな。
そう思って敬意をこめてそう返すと、可笑しそうな笑い声が三人の口から上がる。
「リエラちゃんは、去年ここから自立して、グラムナードに弟子入りしたお姉ちゃんだよ。」
「元々、凄く器用だったけど、魔法まで使えるようになっててビックリしたのよね。」
「うんうん。
シスター達にも魔法教えてくれて、ちょっとだけ火をつけたりとか楽になった。」
「えええ?」
――魔法って、そんなに簡単に使えるようになるモノなの?
と言うのが、第一の驚き。
第二の驚きは、去年自立して弟子入りしたって事は、今は十三歳だって事だよ。
そういえば、きちんと思い返してみると、エリザちゃんちゃんがひたすら話してたこの名前がリエラちゃんだったかも。
半分聞き流してたから、すぐには繋がらなかったけどたしかそうだったはず。
私が驚いて目を白黒させてる間も、彼女達の話は止まらない。
「繕い物も、こうやって平たくして置いたのを、撫でただけで破れてた場所が綺麗にくっついちゃったんだよ!
魔法ってすごいよねぇ!」
「だよねぇ。
あたしも早く魔法使ってみたいなぁ……。」
「十一歳になったら教えてくれるって言ってたし、楽しみ。」
もう、これは私が居ても居なくても話してる内容なのかも。
聞いてる感じだと、どうもリエラちゃんとやらは無償で魔法を教えてあげるつもりのように聞こえるんだけど……。
随分と気前がいいんだなとビックリ。
魔法って、本来なら魔法を使える人――大体が錬金術師と名乗ってる――に弟子入りするか魔法学園に入学してやっと覚えることが出来るかもしれないって代物なのに。
それだけ、この孤児院に思い入れがあるのかもしれないけど、ちょっと肩入れをしすぎるのは危ないんじゃないのかな?
上手く言えないけど、変な人にここが目をつけられたりしたらどうするんだろ。
それにしても、魔法で繕い物までできるなんて思ってもみなかった……。
魔法ってずいぶんと便利なモノらしい。
リエラちゃんって子が、一年そこそこでそんな事までできるようになったって事は、私にだってその可能性はあるって事。
また、グラムナードに辿り着いた後の楽しみが増えた気がする。
その晩は、イリスさん達の送迎会って事で少し豪華なお夕飯だったらしい。
普段は並んでないようなものが食卓には並んでたみたいで、子供たちは歓声を上げていた。
私達的には、割と普通のメニューだったところを見ると、やっぱりフレトゥムールの孤児院は恵まれてたんだと再確認。
ちなみに、材料費はイリスさん達が出したみたい。
私とアッシェとポッシェの三人は、イリスさん達と一緒に院長先生と近い席で色々とお話をさせてもらった。
院長先生は随分とお年を召した猫耳族の女性で、なんだか暖かい雰囲気をまとった人。
子供たちが『お母さん』って呼んでる理由が良く分かる。
私達はエルドランの町の事を教えて貰った代わりに、フレトゥムールの話をさせてもらった。
話をするのは主にアッシェだったのは、まぁいつもの事。
アッシェが話しそこなった事を、私とポッシェでフォローすればいいからある意味楽だから、いつの間にかそういう風になってたんだよね。
様々な理由で親を失った子がそろって生活する場だから、大きな意味では変わらないんだと思うんだけど、多分、ところ変われば~っていうヤツなんだよね、きっと。
思ってたよりも、エルドランとフレトゥムールだと違う部分もあったんだよ。
フレトゥムールの孤児院だと、同じ年の子達が同じお当番をすることの方が断然多かった。
だから、同い年の子同士の方が仲が良かったんだけどね、こっちの孤児院はいろんな年齢の子が混ぜこぜで孤児院の雑事をこなしてるから、全体的に仲が良い感じ。
あと、十一歳の子達はあっちと違って、アルバイトはしてなかった。
これはアルバイト人手をに割くほどの余裕がなかったからみたい。
フレトゥムールの孤児院の話をしたら、なんとかこっちでもやれないか考えてみたいって話してた。
どうも、ここでは自立させる為の費用の捻出に苦労してたみたい。
だからその話をした時には、なんだか目から鱗が落ちたような顔をしてた。
今年からって言うのは難しいかもしれないけど、早いうちに似たような事を出来ないか検討したいって話してたからその内、この孤児院の子達もアルバイトをするようになるのかも。
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