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二年目 見習い期間 ~調薬工房~
エリザ・パニック
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二年目の春の満月になった。
今月から新たに決まったリエラの予定は、午前中はラエルさんの魔力捜査の授業に参加して、午後は調薬工房と魔法具工房で交互に学ぶ事になってる。
先月はずっと魔法具工房に入り浸ってたから、今日は久しぶりにセリスさんの監督の下での調薬三昧。
たのしみだなぁ……。
ただ、気になってる事がふたつ。
それは、セリスさんから今日から調薬工房に通う事になったという事を誰にも言わないでほしいって言われてる事。
それから、調薬工房に来る時間を少し三十分くらい遅らせてほしいって言う事。
セリスさんから頼まれたんだから、そりゃあ、きちんと言われた通りにしますとも。
なんで、エリザにも言っちゃいけないのかは良く分からなかったけど。
リエラはセリスさんに言われた通り、きっちりと三十分間、自室で高速治療薬を調合して過ごした。
相変わらずグレッグおじさんとの取引は続いてるからね。
時間のある時に作るようにしておかないと、欲しいって言われた数を調達できない恐れがあるんだよ。
それに、こうやって作り続けることも重要。
何事も積み重ねが大事なのです。
足取り軽く階段を駆け降り、調薬工房の扉の前に到着。
扉を開けようと取っ手を握り、ノックをしようとしたところでふと気が付く。
そういえば、エリザってば突発事項に弱いんだっけ。
そこで、ノックをするのは取りやめて、そーっと扉を開いて中を覗き込んでみる。
悪い予感はあたるものなのかな?
中では、丁度エリザが魔導具を使っての調薬に挑戦しているところだ。
――なんて懐かしい……!
リエラも、去年はあの魔導具の乳鉢セットを使ってたんだよね。
久しぶりに見るその道具を、エリザが使っているところを目の当たりにして、ちょっぴり感動してしまう。
こんな風に感じるのって、もしかしたらエリザが身近な存在だったからかもしれない。
小さいころから一緒に育ってきた彼女が自分と同じ道を目指してるんだって、そう改めて感じたって言うのもあって、より感動しちゃったんじゃないかな。
多分、テミスちゃんやアッシェちゃんが同じことをしてるのを見ても、正直なところこんな風には感じなかった様な気がする。
ちなみに、この魔導具は一つしかないから、テミスちゃんとアッシェちゃんの二人は、エリザの作業をじっと見学してるみたいだ。
ああ、ちがうや。
二人は、『魔力視』で、魔導具を使うとどんな風に魔力が動くのかを観察してるらしい。
去年のリエラ時とは教え方が違うみたいに見えるのは、セリスさんも、ラエルさんやスフェーンさんから指導の仕方を色々教わってるからなのかも。
作業をしているエリザを驚かせないように、静かに中に入り、扉を閉める。
自分では、かなり静かに閉めたつもりだったんだけど、微かに鳴ったカチャリと言う音を耳聡く聞きつけたのはアッシェちゃん。
彼女は、エリザのから視線を外すと、不思議そうに目を瞬く。
「あれれ? リエラせんぱいは、今日も魔法具工房の方じゃなかったのです??」
その声は、魔導具を動かす音しかしていなかった調薬工房では、やけに大きく響く。
「ふええぇえぇえ?! リエラちゃん?!」
一泊遅れてテミスちゃんが、それから、素っ頓狂な声を上げながらエリザがリエラの方に視線を向けてくるのを見て、ちょっと気分的にめまいがした。
――エリザ!
作業中によそ見はダメでしょう?!
アッシェちゃんの声でリエラの方に注意が向いてしまったエリザは、当然のように、乳鉢の中身を作業机の上にまき散らす。
そして、また、その口から上がるのはいつものちょっぴり間の抜けた悲鳴。
お次は、慌ててひっくり返した赤薬草の粉末を集めようとして、逆にまき散らして、また悲鳴。
それをひたすら繰り返すものだから、いつまで経っても事態が収拾できないという悪循環っぷり。
「エリザちゃんは仕方ないですねえ~。」
「はいはい、エリザちゃん。落ち着いて。落ち着けばすぐに片付きますからね?」
あんまりの惨状に茫然とするリエラとは対照的に、アッシェちゃんとテミスちゃんの二人は慣れた様子でエリザを落ち着かせてる。
「ふえええええええ……。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……。」
涙交じりに謝り続けるエリザを宥めながら後始末をする二人から、やっとの思いで視線を外すと、セリスさんと目が合った。
彼女が微笑みながらも困ったように眉尻を下げてる姿に、エリザが失態を冒すのはある程度想定内だったらしいことを悟る。
ただし、どうやらセリスさんの考えていた以上の状態になったっぽいけど。
なにはともあれ、これは何とかしないとまずい。
リエラが調薬工房にやってくるのなんて、大した突発事項じゃない。
それなのに、特に何も言わない状態でやってきたからと言ってこんな状態になっちゃうなんて……。
エリザをこの工房に推薦したのは、他ならぬリエラ自身だ。
推薦したリエラ自身で、エリザがきちんと、どんな環境でもきちんとお仕事ができるようにしてあげないと。
今月から新たに決まったリエラの予定は、午前中はラエルさんの魔力捜査の授業に参加して、午後は調薬工房と魔法具工房で交互に学ぶ事になってる。
先月はずっと魔法具工房に入り浸ってたから、今日は久しぶりにセリスさんの監督の下での調薬三昧。
たのしみだなぁ……。
ただ、気になってる事がふたつ。
それは、セリスさんから今日から調薬工房に通う事になったという事を誰にも言わないでほしいって言われてる事。
それから、調薬工房に来る時間を少し三十分くらい遅らせてほしいって言う事。
セリスさんから頼まれたんだから、そりゃあ、きちんと言われた通りにしますとも。
なんで、エリザにも言っちゃいけないのかは良く分からなかったけど。
リエラはセリスさんに言われた通り、きっちりと三十分間、自室で高速治療薬を調合して過ごした。
相変わらずグレッグおじさんとの取引は続いてるからね。
時間のある時に作るようにしておかないと、欲しいって言われた数を調達できない恐れがあるんだよ。
それに、こうやって作り続けることも重要。
何事も積み重ねが大事なのです。
足取り軽く階段を駆け降り、調薬工房の扉の前に到着。
扉を開けようと取っ手を握り、ノックをしようとしたところでふと気が付く。
そういえば、エリザってば突発事項に弱いんだっけ。
そこで、ノックをするのは取りやめて、そーっと扉を開いて中を覗き込んでみる。
悪い予感はあたるものなのかな?
中では、丁度エリザが魔導具を使っての調薬に挑戦しているところだ。
――なんて懐かしい……!
リエラも、去年はあの魔導具の乳鉢セットを使ってたんだよね。
久しぶりに見るその道具を、エリザが使っているところを目の当たりにして、ちょっぴり感動してしまう。
こんな風に感じるのって、もしかしたらエリザが身近な存在だったからかもしれない。
小さいころから一緒に育ってきた彼女が自分と同じ道を目指してるんだって、そう改めて感じたって言うのもあって、より感動しちゃったんじゃないかな。
多分、テミスちゃんやアッシェちゃんが同じことをしてるのを見ても、正直なところこんな風には感じなかった様な気がする。
ちなみに、この魔導具は一つしかないから、テミスちゃんとアッシェちゃんの二人は、エリザの作業をじっと見学してるみたいだ。
ああ、ちがうや。
二人は、『魔力視』で、魔導具を使うとどんな風に魔力が動くのかを観察してるらしい。
去年のリエラ時とは教え方が違うみたいに見えるのは、セリスさんも、ラエルさんやスフェーンさんから指導の仕方を色々教わってるからなのかも。
作業をしているエリザを驚かせないように、静かに中に入り、扉を閉める。
自分では、かなり静かに閉めたつもりだったんだけど、微かに鳴ったカチャリと言う音を耳聡く聞きつけたのはアッシェちゃん。
彼女は、エリザのから視線を外すと、不思議そうに目を瞬く。
「あれれ? リエラせんぱいは、今日も魔法具工房の方じゃなかったのです??」
その声は、魔導具を動かす音しかしていなかった調薬工房では、やけに大きく響く。
「ふええぇえぇえ?! リエラちゃん?!」
一泊遅れてテミスちゃんが、それから、素っ頓狂な声を上げながらエリザがリエラの方に視線を向けてくるのを見て、ちょっと気分的にめまいがした。
――エリザ!
作業中によそ見はダメでしょう?!
アッシェちゃんの声でリエラの方に注意が向いてしまったエリザは、当然のように、乳鉢の中身を作業机の上にまき散らす。
そして、また、その口から上がるのはいつものちょっぴり間の抜けた悲鳴。
お次は、慌ててひっくり返した赤薬草の粉末を集めようとして、逆にまき散らして、また悲鳴。
それをひたすら繰り返すものだから、いつまで経っても事態が収拾できないという悪循環っぷり。
「エリザちゃんは仕方ないですねえ~。」
「はいはい、エリザちゃん。落ち着いて。落ち着けばすぐに片付きますからね?」
あんまりの惨状に茫然とするリエラとは対照的に、アッシェちゃんとテミスちゃんの二人は慣れた様子でエリザを落ち着かせてる。
「ふえええええええ……。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……。」
涙交じりに謝り続けるエリザを宥めながら後始末をする二人から、やっとの思いで視線を外すと、セリスさんと目が合った。
彼女が微笑みながらも困ったように眉尻を下げてる姿に、エリザが失態を冒すのはある程度想定内だったらしいことを悟る。
ただし、どうやらセリスさんの考えていた以上の状態になったっぽいけど。
なにはともあれ、これは何とかしないとまずい。
リエラが調薬工房にやってくるのなんて、大した突発事項じゃない。
それなのに、特に何も言わない状態でやってきたからと言ってこんな状態になっちゃうなんて……。
エリザをこの工房に推薦したのは、他ならぬリエラ自身だ。
推薦したリエラ自身で、エリザがきちんと、どんな環境でもきちんとお仕事ができるようにしてあげないと。
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