リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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二年目 錬金術師のお仕事

エリザの選択

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「それにしても、すごい量ですね……」

 エリザが、作業台の上に山積みにされた書類に目を丸くする。
この書類は、グラムナードの民の血統図やなんやらの情報が詰め込まれたモノ。
なんとかかんとか、アスタールさんに言われた期日内に中身を覚えることができた。
月末までって言う期日は、地味にきつかった……。
それにこの大量の資料。
これらは全部リエラの手元に置いておくようにと言われてしまった。
仕事の時に、間違いがないように確認する必要があると言われたら仕方がないよね……。
とりあえず、今はこれを入れるようの本棚を注文中。
本棚がきてくれないと、部屋の中が汚く見えてしまってすごく嫌だ。
早く出来上がってきてほしいなぁ……。

 今日リエラの部屋にエリザとスルトが遊びに来ているのは、スルトの婚約祝いっていう名目だ。
また別の時に、ルナちゃんも誘ってきちんとやる予定ではあるけど、今回は集まる理由に使わせてもらった。
それよりも、今日集まった三人で話す機会って思いのほかないんだよ。
同じ建物に住んでるのに、不思議。
それに、エリザの試用期間も終わったからね。
たまには故郷を共にする同士で集まるいい機会だと思ってスルトにも声を掛けてみた。
別に、改めて何かを話すって訳じゃないんだけど……。
それなりに気心の知れた相手と一緒に過ごす時間も、やっぱり必要だよね?

「エリザは、あちらの方でどんな感じ?」
「イリス先生にはとてもよくして貰ってますわ」

 実際のところ、イリスさん――セリスさんのお母さん――のところで学び始めてから、エリザはそれまで繰り返してたドジはやらかしてないらしい。
どうやら今までの分を取り返す勢いで、頑張ってるみたいだってセリスさん経由で教えて貰った。
セリスさんは自分の力不足だってしょんぼりしてたけど、原因はそこじゃなかったり……。

「セリス先生に問題があった訳でもないのに、私のせいでなんだか申し訳ないです……」
「そんなん、お前が気にする必要ないだろ」
「でも……」
「むしろ、お前が苦手にしてる『同年代の仲間』が居る環境に放り込んだリエラが悪い」
「おぅふ……」

 そこを言われると辛い……。
返す言葉がないもん。
エリザがあんな風に挙動不審になるほど、同年代の子が苦手だなんて認識してなかったからね……。

「そこは……ごめんなさい」
「そんな、リエラちゃんが謝る事なんて……!」

 潔く頭を下げたリエラに、エリザは慌てふためく。
謝ったってどうしようもないんだけど、でも、謝る以外の事が思いつかなかったんだよ。
だって、リエラが何も言わなかったらエリザは別の道を選択して、もっと上手くやれてたのかもしれない。
後悔に唇を噛むリエラに、スルトが追い打ちをかける。

「んでさ、リエラ?」
「うん?」
「今は、外に習いにってればいいんだとしてさ、その後って、コイツ、どうすんの?」
「……」

 今後の事についてまだ聞いていないものだから、スルトの問いに、思わず黙り込んでしまう。
そんなリエラの代わりに質問に答えたのは、エリザ自身だった。

「今回、イリス先生のもとで学ぶ事になった時点で、アスタール師にはその後どうするかを自分で決めて良いと言われてますの」
「……そんで?」
「私は、イリス先生の元で、学べるだけ学んだら、また、ここに戻ってくるつもりですの」
「――だよなぁ……」

 リエラには意外だったその言葉も、スルトにはすんなりと納得できる物だったらしい。
エリザは、そんなリエラに照れ臭そうな微笑を浮かべて理由を教えてくれた。

「私、リエラちゃんがセリスさんの事を大好きなのと同じような感じで、リエラちゃんの事が好きだから。だから、リエラちゃんの役に立つようになりたい。その為には、自分がきちんと学べる場所で、学べるだけのモノをきっちりとモノにするべきだと思うのですわ。だから……この工房には必ず戻ってきます」
「お前のリエラ好きも、リエラのセリスさん好きも、どっちも病的だもんなぁ……」
「「病的とは失礼な?!」」

 エリザとリエラの抗議の言葉がハモる。
その事に、思わず目を見合わせると、思わずクスクス笑いが込み上げてきた。

「そっかぁ……。エリザは、そんなにリエラの事が好きなんだ……?」
「お嫌、ですか……?」
「ううん、嬉しい」

 これは、掛け値なしに本当の気持ち。
だって、リエラはセリスさんの事、そんなに明確な理由があって好きな訳じゃない。
むしろ自分でも、なんでこんなに好きなのかなーって、たまに不思議になる位。
多分、理屈じゃないんだよね。
だから、それと同じ様な感じで、エリザが自分の事を好きだなんて、『嬉しい』以外の言葉が見つからないよ。

「それに……リエラも、エリザがそばにいてくれるとやっぱり嬉しい」

 これは、掛け値なしの本心だ。
出来る事なら、一緒に居られるのが一番嬉しい。
でも、それが無理なんだったら、可能な限り近くにいて欲しい人として一番最初に思い浮かぶのはエリザだと思う。
ここでセリスさんが浮かばないのは、多分、彼女はアスタールさんの側にいるべき人だからかな?

「私、リエラちゃんの側に居られるように頑張りますわ!」

 そんなエリザの決意表明を聞きながら、リエラはちょっぴり照れ臭い気持ちで、自分自身も彼女のその決意にふさわしい人間にならなくちゃね。
ところで、お布団に入って目を閉じた後にふと気が付いたんだけど……。
よく考えてみると、エリザの発言って嬉しくはあるけど、ちょっぴり重い……?
……うん、リエラはセリスさんにそう思われない様に、発言には気をつけるようにしよう……。
引かれたら、ちょっと悲しいし。
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