リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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二年目 岩窟の迷宮

私の立場といつもの添い寝

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 本採用が決まった私達はお師匠様に個別に呼び出された。
お話の内容は、グラムナードという町の特殊性も含めての様々な守秘義務契約を結んだ上で、今後もこの工房での仕事を続けるかどうかの最終確認をする為らしい。

「――とは言え、申し訳ないのだが君に選択肢はない」
、は?」

 お師匠様の目をじっと見ながら首を傾げる。

「君が水の愛し子の代行者になってしまっているからだ」
「ああ……」

 わざわざ私だけ・・・って言うのは何でだろうって思ったんだけど、理由は単純。
『水の愛し子』の代行者――正直な話、最初のうちはネタだと思っていた話だ。
納得したかったわけじゃないけど、あれから三カ月近く経った今、私はこの話を認めざるを得ない状況になってしまっていた。
うん。もうね、否定のしようがない。
アストールちゃんに何かあると、すぐに分かるし、彼女の心からの要望に逆らえない――というか、逆らう気にならないんだもの。
多分『代行者』って、主人格の意向に逆らえないんじゃないかと思う。
ううん。
逆らえないって言うのは違うかも。
『こうしてほしい』って言う希望程度なら、自分の事情次第で突っぱねることは可能だ。
例えば私の場合は、アストールちゃんに抱っこをせがまれても、自分の気分次第で断ることはできる。
ただ、『本気の』命令には逆らえないかも。
眠るまで、どうしてもそばにいて欲しいとかそう言うのは、今のところ断れた試しがないんだよね。
小さな子にとって、一人で暗い部屋の中で眠るのは心細いから仕方ないと思う。
でも、アストールちゃんが寝るのはお師匠様の寝室。
私には心に決めた相手ポッシェがいるって言うのに異性の寝室に入るのって、なんだかいけないことをしている気分になるから、出来れば断りたいんだけど……。

「一人だけ呼ばないというのも不自然だから、君も呼ばせてもらった」

 私に、この地を去るという選択肢を用意してないなら何で呼んだのかと思ったけど、その理由には納得。
一応はお師匠様なりに気を使ったということらしい。

「それから、今後の君の立場について話しておいた方が良いと思ったのだ」
「立場……」

 アストールちゃんの代行者というものの他に、まだなにかあるの?

「元々、今年の求人はリエラの補佐をする者を探すために行ったもので――」

 続く説明によると、どうやらお師匠様には王都に弟子を送り出す予定があった。
叔母がどうのこうのって言ってたのが良く分からないけど、とにかく叔母さんの命令で魔法薬を作る指導ができる人間が必要らしい。
でも、グラムナードって閉鎖的な町だ。
外町に行くくらいならまだしも王都なんて遠方に行ける人がいなくて、他の町から弟子を取ることになった。
なんか、話しぶりからするとお師匠様的には別の目的もあったみたいだけど、そこは関係ないし深追いしない。
まあ、それで採用した弟子がリエラちゃん。
リエラちゃんは思った以上に優秀で、来年か再来年位には王都に送り出してもいい感じなんだって。
でも、彼女を一人で送り出すのは心配だ。
付き添い兼サポーター役をこなせる人を今年、採用することにした。
って言うのが、私達がこの工房で働けることになった理由なんだって。
リエラちゃんがモノになったからいいものの、そうでなかったらお師匠様ってどうする気だったんだろうと思って訊ねてみると、良い弟子が入ったら送り出せばいいと思って考えていなかったらしい。
そんなにいい加減でいいの? って思ったけど、まあ、結果オーライみたいだから黙っておく。

 なにはともあれ、お師匠様が『リエラちゃんの助手候補』の側面を『水の愛し子の代行者』よりも優先させてほしいのだってことは理解した。

「――という訳なのだ」
「ん、理解。リエラちゃんの助手がメイン」
「うむ。理解してもらえて何よりだ」

 長々と語ったお師匠様は、私の答えに満足したようにうなずく。
お師匠様って、意外と話し好きだよね。
話し上手じゃないけど。
立て板に水って感じで話し続けられると、相槌を打つのも一苦労。
それに私は、さっきからお師匠様の隣で大あくびをしているアストールちゃんのが気になって仕方がない。

「……ところでコンちゃ」
「ん」
「アストールを頼めないかね?」
「ん」

 その言葉に頷いて、アストールちゃんに手を差し伸べる。
このところほぼ毎日、寝かしつけをしているから彼女も慣れたものだ。
眠そうな顔に笑みを浮かべて両手を広げた。
その小さくて柔らかな体を抱き上げて、今日もまた思う。
『なんでこの子は、私のことを選んだんだろう?』って。
私はアッシェみたいに、子供が好きな訳じゃない。
だから、孤児院にいた時もこんな風に小さな子に甘えられたことってなかった。

「コンちゃ、あいっき!」
「ん。私も」

 嬉し気に私の首にしがみついてくる姿に、思わず口の端が上がる。
まあ、実際のところ、これだけ懐かれれば悪い気はしないよね。
お師匠様の執務室から隣にある寝室に移動すると、アストールちゃんが眠るまでの間、小さな頃の記憶を頼りに子供向けの物語を話して聞かせた。
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