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二年目 錬金術師のお仕事
怖い魔法 上
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夕方になりラエルさんとの今日の仕事を終えると、アスタールさんの執務室に向かう。
今日は改めて魔法の事について教わりたいと申し出ると、アスタールさんは思いの外あっさりとその言葉に頷く。
「今日は、ラエル殿の下でよく学べたようだ」
満足げにそう呟いてから、言葉を選んでいるようにポツリポツリと話し出す。
「『魔法』は本来、想像を形にするものなのだ」
「想像を?」
「例えば、寒かったら君はどうする?」
「服をたくさん着るか……焚火をするか、ですかね」
「成程。流石に、魔法で服を生み出すことは出来ない。だから、この場合はおそらく『暖かい服』の代わりに『暖かな空気の膜』が君の体を覆うか、目の前にある焚き木に火が付くかという現象が起こる事になる」
「おお~! なんだか、魔法っぽい」
「魔法だから」
そうだった。
というか、『物語』に出てくる魔法みたいだと思うんだけど。
実際にリエラが使っているのとはちょっと違うし。
「あれ? そういえば、魔法について書かれた文字は読むことが出来なくなっちゃうのに、物語には普通に魔法使いが出てきますよね??」
「そうなのかね?」
「……ああ、でも、詠唱的なのは変な字になってた? ……ような気もします」
「考えられる理由としては、魔法が主題ではない為……ではないだろうか」
ちゃんとした理由は、アスタールさんにも分からないって事か。
でも、確かに物語の中に魔法が出てきても理屈的なものなどの描写は大概存在しない。
きっと不思議な魔法の力によって~程度の表現で終わっちゃってたんだよね。
「ちなみに、先代がわざと想像できる現象を制限する為に考えたものが、君が学んだものだ」
その言葉に続く説明によると、先代様は魔法書を書く際に、詠唱の言葉回しだけでなく説明文をつける事によって魔法の種類を限定しようとしているらしい。
ラエルさん、すごい。
そのものずばり言い当ててたよ!
それはいったん置いといて、リエラが今知っている魔法の詠唱は大きく分けて三種類。
生活に便利な『生活魔法』と、生物を傷つける『攻撃魔法』そして、生物の能力を一時的に上昇させる『補助魔法』だ。
三節からなるその詠唱は、順番に『我求む』、『我命ず』、『我は知る』から始まる。
その次に続く二節目は、大体どんな感じの現象が起きるのかが想像できる言葉。
『そは、安堵の光』なら照明だし、『そは、焼き払う炎也』なら火弾、『汝が秘めし疾風』だと素早さ上昇みたいな感じ。
最後の三節目は、『求めに従い~しろ』という類の言葉になってる。
「……って事は、詠唱の言葉ってソレっぽかったら何でもいいって事ですか?」
「君は知っているだろうに。むしろ、詠唱など無くても現象を起こすことはできる」
そういや、そのせいで変だなって思ったんだっけ。
なんというか、ルナちゃんから『輝影の支配者』の話を聞いた辺りでその辺がすべて吹っ飛んでたよ。
だってね?
目の前でのんびりと猫を撫で繰り回してる人が、その『輝影の支配者』様だって話なんだもの。
他の事なんて、色々と吹っ飛んじゃうと思うんだ……。
あれ? というか、さっきまで猫なんていなかったと思うんだけど、アスタールさんの膝の上にいる赤茶と黒のサビ猫はどこから現れたんだろう??
「実際、五〇〇年ちょっと前までは、最初に魔法を使うイメージの補強代わりに『着火』だの『照明』だののキーワードを唱えるだけだったらしい」
「ルナちゃんの話してくれた、『妻子惨殺事件』ですね」
「うむ。先代は、その時に魔法が使われていた事によって、『魔法』に関する記述や言葉を認識できない様にしたらしい」
「さっきから、『らしい』って仮定ばっかりですけど……」
「結果は知っているが、本人からそうと聞いたわけではないのだ。仕方ないではないか」
って事はもしかして、アスタールさん自身もルナちゃんと知ってる事は大差ないって可能性もあるのかな?
「そしておそらくだが、『結界』の外では『魔力』も自覚し辛くなってるのだと思う」
「――おそらく?」
「おそらく、だ。なにせ、私には結界の中も外も変わらないのだから判別のしようがない。……君もそうなのではないかね?」
言われて少し考える。
確かに、中町に結界が張られていると教えられても、全然分からないし、里帰りの時に魔力を感じ取り辛かった事もない。
「そういえば、結界の中と外ってどんな風に違うモノなんでしょうか?」
「さて……? 自分で経験してみない事には何とも言えないのではないかね?」
「アスタールさんの役立たず」
リエラの悪態に、アスタールさんの猫を撫でる手が止まる。
ごめんなさい。
咄嗟に本音が口を突いて出ちゃいました。
今日は改めて魔法の事について教わりたいと申し出ると、アスタールさんは思いの外あっさりとその言葉に頷く。
「今日は、ラエル殿の下でよく学べたようだ」
満足げにそう呟いてから、言葉を選んでいるようにポツリポツリと話し出す。
「『魔法』は本来、想像を形にするものなのだ」
「想像を?」
「例えば、寒かったら君はどうする?」
「服をたくさん着るか……焚火をするか、ですかね」
「成程。流石に、魔法で服を生み出すことは出来ない。だから、この場合はおそらく『暖かい服』の代わりに『暖かな空気の膜』が君の体を覆うか、目の前にある焚き木に火が付くかという現象が起こる事になる」
「おお~! なんだか、魔法っぽい」
「魔法だから」
そうだった。
というか、『物語』に出てくる魔法みたいだと思うんだけど。
実際にリエラが使っているのとはちょっと違うし。
「あれ? そういえば、魔法について書かれた文字は読むことが出来なくなっちゃうのに、物語には普通に魔法使いが出てきますよね??」
「そうなのかね?」
「……ああ、でも、詠唱的なのは変な字になってた? ……ような気もします」
「考えられる理由としては、魔法が主題ではない為……ではないだろうか」
ちゃんとした理由は、アスタールさんにも分からないって事か。
でも、確かに物語の中に魔法が出てきても理屈的なものなどの描写は大概存在しない。
きっと不思議な魔法の力によって~程度の表現で終わっちゃってたんだよね。
「ちなみに、先代がわざと想像できる現象を制限する為に考えたものが、君が学んだものだ」
その言葉に続く説明によると、先代様は魔法書を書く際に、詠唱の言葉回しだけでなく説明文をつける事によって魔法の種類を限定しようとしているらしい。
ラエルさん、すごい。
そのものずばり言い当ててたよ!
それはいったん置いといて、リエラが今知っている魔法の詠唱は大きく分けて三種類。
生活に便利な『生活魔法』と、生物を傷つける『攻撃魔法』そして、生物の能力を一時的に上昇させる『補助魔法』だ。
三節からなるその詠唱は、順番に『我求む』、『我命ず』、『我は知る』から始まる。
その次に続く二節目は、大体どんな感じの現象が起きるのかが想像できる言葉。
『そは、安堵の光』なら照明だし、『そは、焼き払う炎也』なら火弾、『汝が秘めし疾風』だと素早さ上昇みたいな感じ。
最後の三節目は、『求めに従い~しろ』という類の言葉になってる。
「……って事は、詠唱の言葉ってソレっぽかったら何でもいいって事ですか?」
「君は知っているだろうに。むしろ、詠唱など無くても現象を起こすことはできる」
そういや、そのせいで変だなって思ったんだっけ。
なんというか、ルナちゃんから『輝影の支配者』の話を聞いた辺りでその辺がすべて吹っ飛んでたよ。
だってね?
目の前でのんびりと猫を撫で繰り回してる人が、その『輝影の支配者』様だって話なんだもの。
他の事なんて、色々と吹っ飛んじゃうと思うんだ……。
あれ? というか、さっきまで猫なんていなかったと思うんだけど、アスタールさんの膝の上にいる赤茶と黒のサビ猫はどこから現れたんだろう??
「実際、五〇〇年ちょっと前までは、最初に魔法を使うイメージの補強代わりに『着火』だの『照明』だののキーワードを唱えるだけだったらしい」
「ルナちゃんの話してくれた、『妻子惨殺事件』ですね」
「うむ。先代は、その時に魔法が使われていた事によって、『魔法』に関する記述や言葉を認識できない様にしたらしい」
「さっきから、『らしい』って仮定ばっかりですけど……」
「結果は知っているが、本人からそうと聞いたわけではないのだ。仕方ないではないか」
って事はもしかして、アスタールさん自身もルナちゃんと知ってる事は大差ないって可能性もあるのかな?
「そしておそらくだが、『結界』の外では『魔力』も自覚し辛くなってるのだと思う」
「――おそらく?」
「おそらく、だ。なにせ、私には結界の中も外も変わらないのだから判別のしようがない。……君もそうなのではないかね?」
言われて少し考える。
確かに、中町に結界が張られていると教えられても、全然分からないし、里帰りの時に魔力を感じ取り辛かった事もない。
「そういえば、結界の中と外ってどんな風に違うモノなんでしょうか?」
「さて……? 自分で経験してみない事には何とも言えないのではないかね?」
「アスタールさんの役立たず」
リエラの悪態に、アスタールさんの猫を撫でる手が止まる。
ごめんなさい。
咄嗟に本音が口を突いて出ちゃいました。
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