リエラの素材回収所

霧ちゃん→霧聖羅

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二年目 不本意な継承

後継者を探すわけ 中

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 アスタールさんが後継者探しをしてる事を言い当てた後は、思いのほかすんなりと大まかな事情を話してくれた。
どうも物心ついた頃から、アスタールさんは先代様の後を継ぐつもりがなくてアスラーダさんに継いでもらう気満々だったらしい。
ところが、アスラーダさんにはその素養がなくて自分の方に白羽の矢が立ってしまい、何とかそこから逃れようとあれこれ画策したものの、その努力は実を結ばず、輝影の支配者後継者になる羽目に。
それで、今に至る……と。

「なんだか、大分はしょられてる気がします」
「私の二五年分の人生を全てこの短時間に聞く気かね? 何をどう思ったのかまで全てを含めて?」
「まぁ、無理ですね。でも、肝心な事を話してくれてない感じがして仕方ないです」

 そんな風に、胸張られても……。
子供じみたそんな態度に、思わずため息が漏れてしまう。

「それよりも、後継者が見つかったとして、継承した後って……。もしかしてアスタールさん、死んじゃったりしませんか?」

 驚いたように耳がピンと立つところを見ると、考えてなかったのか。
先代様がアスタールさんに輝影の支配者としての力を継承した後に干からびて死んじゃったって話を聞く限り、アスタールさん自身もそうなる可能性が高いんじゃないかと思うんだけど。

「大体、なんで後継者が必要なんですか? まだ、アスタールさんは十分すぎる程若いですよね」

 案の定、その話には触れないようにしていたらしく目が逸らされた。
さっき聞かせてもらった話から、先代様が居た頃には、他の人との接触を完全に遮断されて育ったそうだから、アスタールさんの身代わりを探すのが無理だったと言うのは理解した。
先代様が亡くなった後、リエラが弟子入りする事になる前はグラムナードの中でも候補者を探していたっぽいし。
だけど、今でも自分の身代わりを探し続けてるって言う理由が分からない。
むしろすでに手遅れだからって、諦めて受け入れそうなタイプな気がするんだけどなぁ……?

「むしろ、まだ探す動機がある方向……?」
「――さて、君が気にしていた魔法書の件だが……」
「あからさまに話を逸らさないでください」
「アレは先代が――」
「アスタールさん」

 リエラの呟きは、思いのほか痛いところを突いてたらしい。
必死になって話を逸らそうとし始めたアスタールさんの言葉を、少し強めに名前を呼んで止める。
別に、リエラはアスタールさんがやりたい事を邪魔したいわけじゃない。
むしろ、出来る範囲で、かつリエラに不利益がない事だったら協力しても良いと思ってる。
そう思うくらいに、アスタールさんはグラムナードに来てからリエラに便宜を図ってくれてるんだもの。
リエラが味方になる事で、少しでも恩返しになるのなら味方になるよ。

「別に、その『動機』がなんであれ、邪魔する気なんてないですから落ち着いてください」

 強い口調で名を呼ばれて口をつぐんだアスタールさんが、リエラのその言葉に、今日初めて目を合わせた。
いつも通りの人形みたいに整った無表情の中で、その金色の瞳が期待と不安の間で揺らめく。

「リエラが出来る範囲でなら、協力もしますから。だから、キチンと話してください」

 目を逸らさず、瞬きもせずに視線を合わせていたのがどれくらいの時間なのかは分からないけど、不意にアスタールさんの右手がその目元を隠す。
俯いて背中を丸めてしまうその様子が、なんだか泣き方を知らない子供のように見えた。
ふと、リエラが泣いてしまった時のアスラーダさんの言葉を思い出して、胸が苦しくなる。
リエラが知らない間に人以外の何かになってしまってるんじゃないかと言う不安で泣いてしまった時は、側にアスラーダさんが居て、慰めてくれた。
アスタールさんは?
先代様が、前もってどの程度の説明をしていたのかは分からないけど、先代様の後を継ぐ事自体が嫌だったというアスタールさんが、輝影の支配者になるという事を喜んで受け入れたとは思えない。
リエラは静かに立ち上がると、アスタールさんの隣に座ってそっと背中に手を添えた。
一瞬、ビクッとその肩が上がったけど、振り払われるような事はなく。
アスタールさんが気を取り直すまで、その日はそうしているうちにセリスさんがお夕飯だと呼びに来た事によってお話は打ち切り。
翌日、改めて仕切り直しをする事になった。
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