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第3章 幼女、王都へ行く

幼女、解錠する

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「うーん、見たところ使われているのは【幻惑錠】か」

【外形擬態】がスキル発動者の意思によって解除できるのに対し、【幻惑錠】は発動者自身が解錠することはできない。
 なので例えば【幻惑錠】を使ってカエルに変身してしまうと、誰かに気付いてもらえない限り一生カエルとして生きていくことになる。

 何か新たなウイルスを作製したらその抗体も同時に作るように、鍵をかけるスキルを開発したら解錠するスキルも同時に発明するのが鉄則だ。
 当然、【幻惑錠】にも正規の解錠スキルがある。

「【幻破鍵】」

 瞬く間に伝記が姿を変え、古びた薄い手帳へと変貌する。
 開いてみるとびっしりと暗号文字が書かれていて、その字は紛れもなくユーゲルのものだ。

「ほ、本当に手記が伝記に紛れていたなんて……。ちょ、ちょっと貸してもらってもいいかしら?」

「いいよ」

 私が手記を渡すと、シエルはそれを慎重に開いて眺め始めた。

【幻惑錠】の発動者より高い能力を持つものでなければ、錠がされていることも分からないし、【幻破鍵】を使っても解錠できない。
 つまりは伝説の七賢人を超える者でなければ見つけられないし開けられないわけだ。
 ユーゲルは数年後、いや数百年数千年後にそんな存在が現われると予想したのか、はたまたそもそも誰かに読ませる気はなかったのか。
 読ませる気がないならこんな手の込んだことはしないだろうしなぁ。
 実際のところは、じっくりと手記を読んでみれば分かるだろう。

「ミリアちゃん、これは研究エリアに戻って調査するべきものだわ。私の研究室に戻りましょう」

「そうだね。シエルが解読に挑戦してみる?」

「してみたい気持ちはやまやまだけど、もし裏意味まであったらお手上げだわ。イリナさんたちが帰ってくるまで5日あるしやってはみるけど、ダメだったらミリアちゃんを頼るかも」

「了解。頑張ってね」

「ありがとう。こんな小さな子供を大人の学者が頼るなんて、変な話よね」

「そんなことないよ。むしろ、変なプライドを持たず誰にでも頼れる方が研究は上手くいく」

「ミリアちゃんて、時々すごく大人びたことを言うわね」

 まあ、人生2周目の146年目なんで。
 それにしても、私をリスターニャの生まれ変わりだと信じる様子はまだなしか。
 そのうち、否が応でも気付かなければいけなくなるだろうけど。

 さて、シエルがユーゲルの手記を解読している間、私はニノの手記を読みつつメリュンがどこに隠したかを考えるとするかな。
 私たちは伝記を全て元の位置に戻してから、シエルの研究室へと帰る。
 研究用のテーブルにつくと、彼女は熱心に手記を読み始めた。

「ニノの手記はどこにある?」

「写しならあるわよ。文字の形とかもきれいに写したはずだから、裏意味があっても気付けるはず。そこの棚にあるから探して」

 シエルは手記から顔を上げずに横の棚を指差す。
 完全に集中モードだな、こりゃ。
 私は棚からニノの手記を取ると、シエルとは別の机でそれを開いた。
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