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135話 幕間 想いの行方 1
しおりを挟むリルトが触れられない精霊に腕を沿わせ、壊れ物のように優しく抱きしめるように包み込む。
「~♪」
腕の中のラテルは何か上機嫌に見える。
魔力が周囲を包むように広がってゆき、魔力の圧で揺らめくリルトの髪は空気が澄んだ星のよく見える夜空のように煌めいている。
その神秘的な光景に周りの人達も動けずにいるし、大司教様と審議官はリルトに祈りを捧げてる。
(リルトはやっぱりスゴいなぁ)
ーーーーーーーーーー
…最初リルトの事があんまり好きじゃなかった。
いや、好きじゃないというか"ズルい"と思っていた。
同じハーフエルフなのに周りに人が集まって、可愛い精霊獣までいて、何でリルトだけ…って。
セリアナに頼まれた護衛のお仕事だから途中で投げ出したりはしないけど、ちょっとだけ憂鬱な気分だった。
でも、影から見守っていて気づいた。
ふとした瞬間に見せるリルトの顔は、王都の賑やかな街中にいても"どこにも居場所が無い"とでも思っているような寂しげな顔だった。
ママも立ち寄った町でたまにそんな顔をしていた時があって、そんな時は必ず故郷の思い出話を私に聞かせてくれた。
それに気づいてからは、何となくリルトへの嫌な感情は薄れたと思う。
そして色々な事が起きたけど、リルトとパーティーを組む事になった。
リルトはすごく頭がいい。
先々の事を考えて行動してるし、色々な事を冷静に分析する事が出来る。
自分のスキルについても深く調べて色々な戦術を考えているし、私との連携についてもたくさん考えてくれて、初めて知った自分のスキルの力に驚く事さえあった。
リルトがいて、ラテルと瑠璃がいて、訓練しながらキャンプしてストレージで泊まって…
冒険者なら普通の事かもしれないけど、私には初めての事ばかりですごく楽しかった。
錬金術の力もスゴい。
これから王都で売り出されるというアクセサリーは、オシャレとかにあんまり興味が無い私でもうっとりしてしまうような素晴らしいものだし、
一晩で作り上げてしまったブランとラリーは本物の馬みたいなのに、精霊と同じように意思の疎通が出来るので初心者の私でもすぐに乗馬が出来た。
…改めて考えると、何でリルトが私とパーティーを組んでくれたのかよく分からない。
ーーーーーーーーーー
"隼の瞳"が衛兵に連れられて行く…
今回は全てリルトに助けてもらった。
私は何も出来なかったし、リルトがいなかったら罪を着せられてあんな風に衛兵に連れて行かれるのは私だったかも知れない。
リルトは言ってた、
「ボクらはパーティーなんだから一緒に悩んで一緒に解決するんだ」
って。
今回は何も出来なかったけど、私もリルトを助けられるようになりたい、ううん、ならなきゃダメだ。
涙を拭きながら恥ずかしそうにこちらに戻って来るリルトを眺めながら強く思った。
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