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「次はこちらです」
「次って……」
まだあるのかとひそひそする周り。
新たな魔道具を手に持つが、再生はしない。
「こちらはこの場で再生するのは控えさせていただきます。とてもこの場で再生出来るようなものではございませんので」
「ふ、ふん!何の証拠か知らないけど、再生出来ないようなもの証拠になると思ってんの?」
「あら、再生しても良いと?」
「出来るものならしてみなさいよ!」
「本当に?」
「だからやれるものならやってみなさいって!」
「そう?それなら……」
何の映像が記録されているのかも知らず良くもまあそんなに強気に出れるものだ。
たった今見た自分の痛々しい姿をもう忘れてしまったのかしら。
うーん、でもまあ早送りも出来るからさわりだけなら問題ないかしら。
陛下に視線で許可を求めるとこくりと頷かれる。
陛下の許可があるのならば良いだろう。
ちらりと従者に目を向けると、心得ましたと言わんばかりに頷きその映像が再生される。
最初は騎士団長の長男ギャレットとジュリの二人。
鍛錬場の物陰で寄り添う……というにはいささか近過ぎる距離に周りが騒めく。
『あっ、ギャレット、ダメよこんな所で』
『そんな事言って、こっちは期待してるみたいだけど?』
『やだ、もう、ふふ』
なんて寒気のする会話をしながらギャレットの手はジュリの腰からお尻へ。
ジュリも全身をギャレットに預け腰をくねらせ胸を押し付けている。
誰がどう見てもこれからそういうコトになだれ込むとわかる雰囲気。
さすがにこの場の全員の目が丸くなり、彼女達は焦りだす。
「ちょっ、待っ……!」
「待て!何だこの映像は!?」
「止めて!止めなさいよ!」
「あらあらまだ続きがあるのよ」
「ちょ……!?」
だって出来るものならやってみろって言ったのはそちらですもの、最後の人までちゃんと皆さんにお見せしないと。
明らかなコトの最中の映像は飛ばして、次に映されたのは魔導士協会現会長の三男フィガロ。
こちらもどこかの教室の中でいちゃいちゃうっふん。
『好き、好きだよジュリ、僕もう我慢出来ない……!』
『そんなに急がないで、大丈夫だから』
『ジュリ、ジュリ……!』
「なっ、違う、こんな、僕は……!」
はいはい違うと言っても映像が全てを映し出しています。
もはや焦りすぎて違う違うしか言えていない。
次は精霊学の教師リンデル。
教師だというのに生徒に手を出すのもアウトだししている行為も少し変態っぽくて色々とアウトでした。
道具使うのなんてないわー。
『ふふ、今日もこれ使うの?好きだねえ先生』
『これで乱れるジュリが可愛すぎるのがいけない。ほら、もうこんなに』
『んっ、あ……』
もうこんなに、何なのかしらね。
「待っ、これは、その……!」
最後が宰相の次男マークだ。
こちらはガードが固かったらしくやっと手に入れたのだろう。
ジュリがマークに乗っかってノリノリである。
『婚約者の彼女は何もさせてくれないんでしょ?私なら何でもしてあげるし、させてあげる』
『ジュリ……!』
『ふふ』
「なっ、これは……!」
「……なるほど、私ではさせてくれないあれこれをしていただいたんですね」
「クリスティーン!違うんだ、これはその……!」
「言い訳は結構です」
「クリスティーン!」
他の方々の婚約者の皆様は黙っていらしたけど流石にマークの婚約者のクリスティーンは黙っていられなかったのだろう。
家柄もクリスティーンの方が上だし、何より元々はマークがクリスティーンに一目惚れして、宰相であるお父様が頼んで頼んで頼み込んでやっと婚約者になれたという裏話がある。
一目惚れした相手と婚約出来たのに他所の女に目移りして欲望に負けて浮気なんて呆れて何も言えない。
他の皆様方の婚約者の方々は立場が下なので面と向かって抗議を出来ずにいるが、その視線は近寄るのも視界に入れるのも穢らわしいと言わんばかりに冷たい。
そりゃそうよね、自分の婚約者が影で一人の女を取り合ってあまつさえ肉体関係まで持っていたんですもの。
男性陣はそれぞれ、まさか他の男とまで、といった風な顔でジュリを見ている。
自分だけと思っていたのね、可哀想に。
いや可哀想じゃないか、婚約者いるくせに他の女に手出したんだから自業自得、因果応報よね。
映像の中には当然エリオットのものもある。
こちらは流石に陛下の手前流せなかったが中身は似たようなものだ。
清純そうな顔してよくやるわよね。
というよりもこのゲーム全年齢だったはずだけれど、よくもまあここまで全員誑し込めたものよね。
全員ちょろすぎない?
ヤリたい盛りというやつかしら。
おっといけない、ヤリたいだなんてはしたないわよ私ったら。
「詳細はこちらの映像に全て記録されていますわ。これで私にも私以外の婚約者の方々にも非がないと証明出来るでしょう」
「盗撮なんて非常識よ!」
「不特定多数に足を開くよりはマシよ」
「ふ、不特定多数じゃないわよ!」
「足を開いた事は否定しないのね」
「っ、っ!!!」
ギリ、とジュリが歯を噛み締める音が聞こえる。
視線だけで射殺せそうな雰囲気だがそんなもの痛くも痒くもない。
嫌がらせの自作自演や婚約者のいる男達とのあれこれなどただのおまけ。
ジュリがしでかした事の中で一番許せないのがこれから話す事。
「ジュリさん、貴女にはもうひとつの罪があるわ」
「罪?そんな、私にはそんな覚え……」
まだすっとぼける余裕があるのね。
あんな映像出されたら恥ずかしくて意気消沈するものだと思っていたけれど、この子はやっぱりどこかのネジが外れているのかしら。
まあそんなのどうでも良いわ。
「貴女、いいえ、貴女達。精霊樹の根元に一体何をしたのかしら?」
「……っ」
この一言にぎくりと肩を震わせたのはジュリと宰相の次男マーク、騎士団長の長男ギャレット、魔導士協会現会長の三男フィガロの四人。
「な、何の話?私、何の事だか……ねえ?」
「そ、そうだ、何の事だ!」
「何をしたかだなんて、俺達が知るはずないだろう!」
「そうだ!」
「……そのように動揺していては心当たりがあると自白しているようなものですわ」
そんなんで良く今まで貴族社会で生きてこれたわねこの人達。
「知らないったら!精霊樹が瘴気に侵されてるのなんて今更なんだし……!」
ジュリの一言で騒めきが大きくなる。
誰も瘴気なんて言っていないのにね。
「精霊樹が、瘴気に?」
「そんな、だって浄化されたはずでは?」
「そんな情報どこからも出ていないぞ?」
「精霊樹が侵されているとしたら、まずいじゃないか!」
「え?え?ちょっと、どういう事?」
周りの声にジュリが首を傾げる。
そうよね、ジュリがこの世界にやって来たのは精霊樹の瘴気を祓う為なんですもの、そんな情報で今更みんなが驚くのが理解出来ないのだろう。
他の攻略対象者達はジュリの失言を止められず、しまったと顔色を悪くしている。
「精霊樹に瘴気とは、一体どういう事だ?」
「かの方より再び瘴気が現れたと告げられました」
「何……!?」
陛下に問われ答える。
かの方、とはまあこの後出てきて貰うので割愛しておきましょう。
さて、この世界の精霊樹といえば物語の要でもあり
この国そのものと言っても良い貴重な存在だ。
精霊樹が燃えれば国も燃え、精霊樹の根が枯れれば地が割れる。
そして精霊樹が瘴気に侵されれば国も瘴気に沈み、焦土と化し魔獣が蔓延り人々は蹂躙されると、そう伝えられている。
なので流石の陛下も動揺を隠せないようだ。
「前回そなたが浄化してからまだ一月と経っていないぞ!?」
「ええ、その通りです」
「は?ちょっと待ってよ、そなたがって、あんたが浄化したの?」
陛下の言葉にジュリが喚く。
答える必要はないけれど、うるさいからさらりとだけ頷いておこう。
「ええ、私が浄化したわ」
「何でそんな事するのよ!だから全然瘴気がなかったのね!?おかしいと思ったのよ!もう瘴気が溢れてなきゃおかしい時期なのに全然ないから……!そのせいで苦労してアレを仕込まなきゃいけなくなったじゃ、あ……!」
「あらあらまあまあ、何を、苦労して仕込んだのかしら」
「……っ」
「それに、何故瘴気が溢れていなければおかしい時期だと思ったのだ?全て説明してもらおうか」
「ひっ……」
語るに落ちるとはまさにこと事。
自分ではっきりと罪を認めてしまうなんて本当にお馬鹿さん。
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