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そして全能神は愉快犯となった
【180話】
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「最近私の私物が消えるのだが、何か知らないかマロン?」
「お兄様の私物が欲しいものは王宮にもごまんと居ると思われますが?」
「まぁそうなのだが、私の部屋に置いてあった私物が消えるのだ。並の相手では私の部屋に入る事もままならないであろう?」
「そうですしたの?なら犯人は決まったかのようなものですわ」
「?」
「お兄様は本当に乙女心が分からない方ですね」
サイヒの髪を梳いていたマロンがクスクスと笑う。
全能神のサイヒに対してこれ程気さくに話せる女はマロンを筆頭に片手の指で足りるほどしか居ない。
しかも揶揄って見せ余裕まである。
これくらいでサイヒが己に怒ることなどないと分かっているのだ。
もう20年の付き合いになる。
サイヒの逆鱗の場所など理解済みだ。
そしてその性格と、マロンに対する信頼も。
「失敬だな、私とて女だ。乙女心位理解できるぞ?」
「理解しているならとっくに犯人は見つかってますわ」
「…………」
完全にサイヒがやり込められた。
マロンにとっては、犯人を捜すのは簡単なものらしい。
乙女心があればすぐに見つかるそうだ。
「なら乙女心があるマロンに犯人捜しを頼んで良いか?」
「ソレは駄目ですわ。犯人さんが傷ついてしまいます。お兄様が自分で見つけられることが重要なのです」
「難しいな…………」
「少し考えれば、これほど簡単な謎も無いですのよ?」
そう言ってクスクス笑うマロンは可憐である。
さすがサイヒには無い乙女心の持ち主なだけはある。
「では少しばかり真剣に考えるとしよう」
そうサイヒが言ったのは3日前の事。
:::
「何故お前がここで寝てるのだルーク………?」
サイヒとルークの共同の寝室。
今は使われていない部屋である。
そのベッドにサイヒのハンカチやらストールやらを敷き詰めてルークがスヤスヤ眠っていた。
「まるで巣作りだな」
ベッドに腰かけルークの髪を梳く。
さらさらの銀髪が気持ち良い。
丸まって寝る姿と言い、本当に猫のようだと思う。
「ん、サイ…ヒ………」
「起きたか?」
「んん~~~」
起きた訳では無い様だ。
再びルークはすぅすぅと寝息を立てた。
「何故、私の私物で巣作りなどしたのだ?」
ルークからの返事はない。
相当熟睡をしているようである。
ルークが作った巣は、サイヒが使用した物ばかりだ。
本来なら洗濯に出すもの。
まだサイヒの匂いが残ったものをルークは収集していたのだ。
「20年前のようだな、あの時もお前は私の匂いに包まれると熟睡が出来ると言っていた…私の遺伝子情報は感じれないようにしたのに、何故このような事をする、ルーク?」
乙女心が皆無なサイヒには分からない。
遺伝子など関係なく、ルークがサイヒの香りが好きだと言う事が。
だってサイヒはルークの恋心は欠片も残さず奪ったのだから、自分に友情以上の好意が向けられるなんて思いもしてないのだ。
では何故サイヒはルークを見つけられたのか?
それは消去法に他ならない。
サイヒの結界を無効化してサイヒの部屋に入れる人物。
自分の残滓を残さないようにできる人物。
サイヒの部屋に入っても誰も咎めない人物。
ソレが出来るのは、サイヒの次に力を持つルーク位だ。
だがよりによって、サイヒの私服などで巣を作っているとは思いもしなかった。
ソレも2人の寝室で。
ただ巣を作るだけなら、己の寝室にサイヒの物を持ち込めばよいのだ。
だがルークは巣を作るのにサイヒとの共同の寝室を選んだ。
ソレが意味するものは?
「あまり可愛い事をしないでくれルーク、私は、お前のそんな行動に勘違いしてしまいそうになるのだから………」
此処でルークを起こして問い詰めれば問題は解決するだろう。
案外大した理由など無いのかもしれない。
それでも、サイヒはルークの気持ちを知るのが怖くて起こすことが出来ない。
ルークの口から語られる真実が自分を傷つけるのではないか、恐ろしくて仕方ない。
ただの気紛れだと言われたら、きっとサイヒは傷つく。
サイヒは未だにルークを愛してるから。
そんな言葉を聞きたくなくて、サイヒは今日もルークにかける言葉を飲み込んでしまう。
だからサイヒは眠るルークを放置して、寝室を後にした。
「お兄様の私物が欲しいものは王宮にもごまんと居ると思われますが?」
「まぁそうなのだが、私の部屋に置いてあった私物が消えるのだ。並の相手では私の部屋に入る事もままならないであろう?」
「そうですしたの?なら犯人は決まったかのようなものですわ」
「?」
「お兄様は本当に乙女心が分からない方ですね」
サイヒの髪を梳いていたマロンがクスクスと笑う。
全能神のサイヒに対してこれ程気さくに話せる女はマロンを筆頭に片手の指で足りるほどしか居ない。
しかも揶揄って見せ余裕まである。
これくらいでサイヒが己に怒ることなどないと分かっているのだ。
もう20年の付き合いになる。
サイヒの逆鱗の場所など理解済みだ。
そしてその性格と、マロンに対する信頼も。
「失敬だな、私とて女だ。乙女心位理解できるぞ?」
「理解しているならとっくに犯人は見つかってますわ」
「…………」
完全にサイヒがやり込められた。
マロンにとっては、犯人を捜すのは簡単なものらしい。
乙女心があればすぐに見つかるそうだ。
「なら乙女心があるマロンに犯人捜しを頼んで良いか?」
「ソレは駄目ですわ。犯人さんが傷ついてしまいます。お兄様が自分で見つけられることが重要なのです」
「難しいな…………」
「少し考えれば、これほど簡単な謎も無いですのよ?」
そう言ってクスクス笑うマロンは可憐である。
さすがサイヒには無い乙女心の持ち主なだけはある。
「では少しばかり真剣に考えるとしよう」
そうサイヒが言ったのは3日前の事。
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「何故お前がここで寝てるのだルーク………?」
サイヒとルークの共同の寝室。
今は使われていない部屋である。
そのベッドにサイヒのハンカチやらストールやらを敷き詰めてルークがスヤスヤ眠っていた。
「まるで巣作りだな」
ベッドに腰かけルークの髪を梳く。
さらさらの銀髪が気持ち良い。
丸まって寝る姿と言い、本当に猫のようだと思う。
「ん、サイ…ヒ………」
「起きたか?」
「んん~~~」
起きた訳では無い様だ。
再びルークはすぅすぅと寝息を立てた。
「何故、私の私物で巣作りなどしたのだ?」
ルークからの返事はない。
相当熟睡をしているようである。
ルークが作った巣は、サイヒが使用した物ばかりだ。
本来なら洗濯に出すもの。
まだサイヒの匂いが残ったものをルークは収集していたのだ。
「20年前のようだな、あの時もお前は私の匂いに包まれると熟睡が出来ると言っていた…私の遺伝子情報は感じれないようにしたのに、何故このような事をする、ルーク?」
乙女心が皆無なサイヒには分からない。
遺伝子など関係なく、ルークがサイヒの香りが好きだと言う事が。
だってサイヒはルークの恋心は欠片も残さず奪ったのだから、自分に友情以上の好意が向けられるなんて思いもしてないのだ。
では何故サイヒはルークを見つけられたのか?
それは消去法に他ならない。
サイヒの結界を無効化してサイヒの部屋に入れる人物。
自分の残滓を残さないようにできる人物。
サイヒの部屋に入っても誰も咎めない人物。
ソレが出来るのは、サイヒの次に力を持つルーク位だ。
だがよりによって、サイヒの私服などで巣を作っているとは思いもしなかった。
ソレも2人の寝室で。
ただ巣を作るだけなら、己の寝室にサイヒの物を持ち込めばよいのだ。
だがルークは巣を作るのにサイヒとの共同の寝室を選んだ。
ソレが意味するものは?
「あまり可愛い事をしないでくれルーク、私は、お前のそんな行動に勘違いしてしまいそうになるのだから………」
此処でルークを起こして問い詰めれば問題は解決するだろう。
案外大した理由など無いのかもしれない。
それでも、サイヒはルークの気持ちを知るのが怖くて起こすことが出来ない。
ルークの口から語られる真実が自分を傷つけるのではないか、恐ろしくて仕方ない。
ただの気紛れだと言われたら、きっとサイヒは傷つく。
サイヒは未だにルークを愛してるから。
そんな言葉を聞きたくなくて、サイヒは今日もルークにかける言葉を飲み込んでしまう。
だからサイヒは眠るルークを放置して、寝室を後にした。
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