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18.6 王子とメイド
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『殿下のことなんか大嫌いです! もう絶対しません!』
(俺はおかしくなったのか?)
あの瞬間、憎いマリエルの姿がリアに重なって見えたのは何故なんだ。
本能的な恐怖を感じてしまい、あの場では深く考えられなかった。
しかし、まるで当人から言われたかのような、強い衝撃があった。
(……そういえば)
目が覚めたリアと行為に及ぼうとしたところ、結婚前の貫通は罪になるからと拒絶されてしまった。
その時は目覚めたばかりで不調なのかと思ったが、散々交わってきた彼女がなぜ今さらになって自分を拒絶したのか、理由がハッキリと分からない。
「リアが別人……。そんなことあるはずが。俺の考え過ぎか?」
「動くな」
「……ッ!」
首筋にナイフが当てられている。
「あ、暗殺か」
「違う。これはお嬢様を裏切った罰だ」
「その声……」
冷たいナイフの感触が離れる。
佇んでいたのは、リアの専属メイドだった。
「お前は、リアについて気づいたことがあるんだな?」
「問答する時間が惜しい。私をマリエルに会わせろ」
「な、なぜだ」
「薄々気づいてるんだろ? 私の読みではあちらが本物のリアお嬢様だ」
「あれは紛れもなくマリエルだぞ!?」
「肉体はな。転魂の剣という魂を入れ替える呪物がある。恐らくはそれを使ったんだ」
「そんな呪物聞いたこともないぞ!?」
「私も知らなかったが、クラリスが口を割った。本来は魂を代償にする呪物だが、聖女の奇跡で生還したらしい」
「そうか。しかし……あのマリエルがリアだなんて……」
「いいから会わせろ! 必要な情報は全て吐いただろ!」
いつも冷静沈着なメイドが激怒している……。
「今も独りで寂しい想いをされているのかもしれないです。一刻も早くお嬢様に会わせてください。暖めてさしあげないと、気が触れて変になりそうです」
――リアは彼女のことを姉のように思っているらしいが、今のエミリーから感じるのは母性だ。
王族に対してこれ程の怒りをぶつけられる平民は他にいないだろうな……。
「……分かった。会わせればいいんだろ」
「お願いします」
考えがまとまらない。
それでも、自分も感じていた違和感の正体を確かめる為に、俺は彼女に従うしかなかった。
(俺はおかしくなったのか?)
あの瞬間、憎いマリエルの姿がリアに重なって見えたのは何故なんだ。
本能的な恐怖を感じてしまい、あの場では深く考えられなかった。
しかし、まるで当人から言われたかのような、強い衝撃があった。
(……そういえば)
目が覚めたリアと行為に及ぼうとしたところ、結婚前の貫通は罪になるからと拒絶されてしまった。
その時は目覚めたばかりで不調なのかと思ったが、散々交わってきた彼女がなぜ今さらになって自分を拒絶したのか、理由がハッキリと分からない。
「リアが別人……。そんなことあるはずが。俺の考え過ぎか?」
「動くな」
「……ッ!」
首筋にナイフが当てられている。
「あ、暗殺か」
「違う。これはお嬢様を裏切った罰だ」
「その声……」
冷たいナイフの感触が離れる。
佇んでいたのは、リアの専属メイドだった。
「お前は、リアについて気づいたことがあるんだな?」
「問答する時間が惜しい。私をマリエルに会わせろ」
「な、なぜだ」
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「あれは紛れもなくマリエルだぞ!?」
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「そんな呪物聞いたこともないぞ!?」
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「そうか。しかし……あのマリエルがリアだなんて……」
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「今も独りで寂しい想いをされているのかもしれないです。一刻も早くお嬢様に会わせてください。暖めてさしあげないと、気が触れて変になりそうです」
――リアは彼女のことを姉のように思っているらしいが、今のエミリーから感じるのは母性だ。
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「……分かった。会わせればいいんだろ」
「お願いします」
考えがまとまらない。
それでも、自分も感じていた違和感の正体を確かめる為に、俺は彼女に従うしかなかった。
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