紳士な若頭の危険な狂愛

桜居かのん

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覚悟

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午後一時、大きな邸宅の前に、私は立っていた。
グレーの壁が家の周囲を覆い、いくつも防犯カメラが見える。
間違い無ければこの家が『藤代組の本部』であるはず。

美東さんが姿を消した後、私はすぐに藤代組の事を調べることにした。
今までも時折調べていたけれど、それは美東さんの事ばかりだった。
だが今回は本部の場所だ。
有名な地図サイトでは、著名人など大きな邸宅は当事者の申し立てにより画像の地図などでモザイクをかけられている。
それらしき場所をネットでいくつか見つけ、私は一番可能性の高いであろう場所に来た。
この都市で仕切っているのなら、本部もこの都市にあるはずだから。

呼吸を整え、自分の身長を軽く超える大きな扉の横にあるインターホンを押した。

「・・・・・・はい」

「突然の訪問、申し訳ございません。
私、一谷綾菜と申します。
美東さんにお会いしたく、伺いました」

「・・・・・・お待ちください」

少し年齢が上の男性だろうか、丁寧な受け答えに拍子抜けする。
ドアが開いてそちらを見ると、白シャツに黒いパンツの男性が出てきた。
白髪交じりで目つきが鋭い。
頭を下げると、

「美東はおりません。
ですが組長が貴女にお会いしたいと言っております。
いかがされますか?」

いないなら追い返されると思っていたが、組長さんが私に話とはなんだろうか。
そもそも何故私と。
だけど美東さんと会いたいと思う以上、お会いするのが筋なのかもしれない。

「是非」

私の答えに彼はどうぞ、と私を敷地に招き入れた。


ヤクザと言えば和風の家を勝手に想像していたが、立派な今時の建物。
何台も停められそうな駐車場、玄関も洒落た作りでスロープが出来ていた。
モダンな廊下は幅が広く、全体的にゆったりな作りだ。
他にも驚いたのは、玄関入ってすぐにエレベーターがあったこと。
なんとなく気がついている。
この家は、いわゆるバリヤフリーへ配慮されていることを。
広い応接間に案内され、座り心地の良い大きなソファーに座らされる。
若い男性がお茶を出してくれ、言葉を発さずに頭を下げて部屋を出て行く。

「少しお待ちください」

案内してくれた男性も下がってドアが閉まり、私はすぐお茶に口をつけた。
既に緊張して喉が渇いてしまっている。
何を言われるのか、いや、いいことを言われることは無いのだろう。

数分してドアがノックされ、車椅子に乗ったラフなシャツ姿の年配の男性が入ってきた。
車椅子を押しているのは色っぽい若い女性。
彼女の手を借りて車椅子から、私の前のソファーに座り直した。
すぐに男の人がお茶を持ってきて頭を下げると出て行く。
女性はにこりと私に笑いかけ、部屋を出て行った。

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