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仕方がないので女湯と書かれた方のドアを開ける。
灯油式ストーブが着いていて暖かく、ほっこりとさせられるのであろうが……、私の心臓は緊張でドキドキしている。
人気が少ない脱衣所だったために、より一層緊張は増した。
人が居ると安心できる、でも一人だけだったらどうしよう……。そんな思考が脳内を駆けめぐる。
私はそそくさと服を脱ぎ、湯あみ着を手に取る。
上下で別れており、上着は胸の上で止めてスカートみたいに裾がふわっと広がるもの、下は短パンに近いものだった。生地は夏のパジャマみたいだな、と思う。茶色なので透ける心配もなさそうだ。
寒さで身体が震えたので慌てて着る。
髪の毛を上の方で軽くまとめ、入浴前だし……と思って水を一口飲み、そそくさと露天風呂に出てみる。
さむい。風が強くて一瞬で凍えてしまう。
慌てて洗い場を探すが、どうやら無いらしい。
申し訳程度にかけ湯をして、浴槽の階段を降り、身体を湯に入れる。
丁度良い温度だ。ほっとする。
まるで凍った身体が溶けていくようだ。
改めて周りを見渡すと、そこは絶景だった。
既に陽は沈み、辺りは薄暗くて奥の方までは見えないが、かなりの範囲までお湯が広がっている。とにかく広い。
湯けむりがライトで照らされており、なんだか幻想的だ。
あまり人はいなくて……、そのことて少し焦るが、この景色とお風呂を独り占めできるだなんて最高だな、と思う。
ほぅ、とため息をついて中心の方まで歩いてみる。
どうやら入り口近くのお湯は冷めていたらしく、どんどん暖かくなっていく。気持ちいい、と想う。
暗い中、ライトに照らされている『混浴入り口』と書かれたドアを見つけて、まじまじと見つめる。
露天風呂の中にドア。少し異質な存在だ。
『恋の悩みにも効能あり』なんて謳い文句を見てしまって身体がこわばる。
確かにアキちゃんの事は好きだ。だがそれはきっと私が一方的に抱いている感情であって、どうせアキちゃんは私のことを体の良いおもちゃとしか思っていない、気がする。
私もアキちゃんにいっぱい弄られて快感を得るのがいい訳だし……、所詮こんなの、身体だけの関係だ。
そう考えて胸の奥がちくり、と痛む。本当にそれだけだろうか?
アキちゃんの長い指先が好きだ。伸ばしたことのないであろう爪も、染めたことがないであろう髪の毛も。
顔は……、正直そんなにイケメンではないけれど、ニヤニヤと笑った顔が好きだ。私に意地悪してくるときの顔だ。全てを見透かされるような瞳も――。
そこまで考えて私は一人でぶんぶんと頭を横に振る。
今それを考えていても仕方がない。問題はこのドアをくぐるかどうかだ。
ドアをくぐった先は男湯。男性は湯あみ着レンタル無料と番台のお爺さんが言っていたから、まぁ大丈夫だろう。
それでも男湯という未知の空間に入るのだ。どうしてもドキドキしてしまう。
それでもアキちゃんは『待ってるから。』と言った。
待たせすぎてはいけない。後でどんなお仕置きが待っているか分からない。
私はもう一度頭を横にぶんぶんと振り、混浴入り口と書かれたドアを開けた。
灯油式ストーブが着いていて暖かく、ほっこりとさせられるのであろうが……、私の心臓は緊張でドキドキしている。
人気が少ない脱衣所だったために、より一層緊張は増した。
人が居ると安心できる、でも一人だけだったらどうしよう……。そんな思考が脳内を駆けめぐる。
私はそそくさと服を脱ぎ、湯あみ着を手に取る。
上下で別れており、上着は胸の上で止めてスカートみたいに裾がふわっと広がるもの、下は短パンに近いものだった。生地は夏のパジャマみたいだな、と思う。茶色なので透ける心配もなさそうだ。
寒さで身体が震えたので慌てて着る。
髪の毛を上の方で軽くまとめ、入浴前だし……と思って水を一口飲み、そそくさと露天風呂に出てみる。
さむい。風が強くて一瞬で凍えてしまう。
慌てて洗い場を探すが、どうやら無いらしい。
申し訳程度にかけ湯をして、浴槽の階段を降り、身体を湯に入れる。
丁度良い温度だ。ほっとする。
まるで凍った身体が溶けていくようだ。
改めて周りを見渡すと、そこは絶景だった。
既に陽は沈み、辺りは薄暗くて奥の方までは見えないが、かなりの範囲までお湯が広がっている。とにかく広い。
湯けむりがライトで照らされており、なんだか幻想的だ。
あまり人はいなくて……、そのことて少し焦るが、この景色とお風呂を独り占めできるだなんて最高だな、と思う。
ほぅ、とため息をついて中心の方まで歩いてみる。
どうやら入り口近くのお湯は冷めていたらしく、どんどん暖かくなっていく。気持ちいい、と想う。
暗い中、ライトに照らされている『混浴入り口』と書かれたドアを見つけて、まじまじと見つめる。
露天風呂の中にドア。少し異質な存在だ。
『恋の悩みにも効能あり』なんて謳い文句を見てしまって身体がこわばる。
確かにアキちゃんの事は好きだ。だがそれはきっと私が一方的に抱いている感情であって、どうせアキちゃんは私のことを体の良いおもちゃとしか思っていない、気がする。
私もアキちゃんにいっぱい弄られて快感を得るのがいい訳だし……、所詮こんなの、身体だけの関係だ。
そう考えて胸の奥がちくり、と痛む。本当にそれだけだろうか?
アキちゃんの長い指先が好きだ。伸ばしたことのないであろう爪も、染めたことがないであろう髪の毛も。
顔は……、正直そんなにイケメンではないけれど、ニヤニヤと笑った顔が好きだ。私に意地悪してくるときの顔だ。全てを見透かされるような瞳も――。
そこまで考えて私は一人でぶんぶんと頭を横に振る。
今それを考えていても仕方がない。問題はこのドアをくぐるかどうかだ。
ドアをくぐった先は男湯。男性は湯あみ着レンタル無料と番台のお爺さんが言っていたから、まぁ大丈夫だろう。
それでも男湯という未知の空間に入るのだ。どうしてもドキドキしてしまう。
それでもアキちゃんは『待ってるから。』と言った。
待たせすぎてはいけない。後でどんなお仕置きが待っているか分からない。
私はもう一度頭を横にぶんぶんと振り、混浴入り口と書かれたドアを開けた。
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