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ディルクはアルフィオの部屋の扉を叩く。だが応答はない。

仕方がない。

ディルクは背を向け歩き出す。諦めたかと思いきや、ある程度離れると扉に向かって体当たりをした。

バンッ‼︎と勢いよく音を立てて扉は開いたが。

「…いない」

中には誰もいなかった。アルフィオは一体何処に…。

「あぁ、兄上。如何なさいましたか?人の部屋に勝手に侵入して、尚且つ扉まで壊して」


涼しい表情を浮かべながら、アルフィオが部屋へ入ってきた。

「…アンジェリカを何処にやったんだ」

「さあ?誰ですか、それは」

アルフィオはワザとらしく如何にも知らないと言う風に首を傾げて見せた。少し小莫迦にした様な振る舞いでも普段なら気にはしない。だが今は焦りもあり苛ついてしまいアルフィオを睨み付けた。

「惚けるな。君が彼女を連れて行ったと証言は得ているんだ」

「あ~あ。つまらないですね。もう喋っちゃったんですか、あの門兵。やっぱり使えないですねー」


面倒そうにアルフィオは大袈裟に溜息を吐く。

「彼女は僕の妃になる女性ひとだ。もし何かしたら…その首繋がっていると思うなよ」

「はいはい、分かってますよ。兄上は相変わらず冗談が通じなくて困りますね。取り敢えず、座って話しませんか」

アルフィオはそう言って笑みを浮かべると、手短な椅子に腰を下ろした。ディルクも不満げにしているものの、取り敢えずは腰を下ろす。対峙する形で座るディルクとアルフィオの間には異様な空気が流れる。

普段から仲が悪い2人はこうして向かい合い座るなど殆どない。

「アンジェリカを何処にやった」

「さっきも同じ台詞聞きました。そんなに何度も言わずとも聞こえています。顔怖いですよー兄上?まあまあ、落ち着いて下さい。ゆっくりお茶でもしながら話しましょうよ。今煎れさせますから」

アルフィオはテーブルの上にあるベルを手にする。用がある時はこのベルを鳴らせば直ぐに侍女やらが飛んでくる。

「お茶など必要ない。それより早く居場所を言うんだ」

ディルクはアルフィオのベルを持つ手を止めた。

「…じゃあ、私と遊戯ゲームをしましょう」

遊戯ゲームなんてしている暇など」

「ならこの話は終いですねー」

アルフィオは徐に立ち上がり部屋を出て行こうとする。

「アルフィオ!待つんだ…分かった。取り敢えず内容だけでも聞こう」




遊戯ゲーム内容。

明日の昼までに、この城の敷地内にいるアンジェリカを探し出す事。

「簡単でしょう?どんな手を使っても良いですよ。別に1人で探す必要はないし、王太子の権力を使って城中の者達を動かして総出で探してもいいです。重要なのはアンジェリカを明日の昼までに探し出す事のみ」

アルフィオはかなりの自信があるのか、随分とディルクに有利な条件を提示した。しかし。

既に考えられる場所は全て探した。これ以上ない程に。

「…もし昼までに間に合わなかったら」

「兄上がアンジェリカを探し出せれば、そのままお返しします。でも、もし明日の昼までに探し出す事が出来なければ…彼女は私が妃に貰います」




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