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寄付するお金を奪う婚約者、でもその寄付先は…。<前>

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「お前の金は、婚約者こんやくしゃである俺の物だ!」 

 そう言って、私の財布さいふからお金を抜き取っていく彼。

 婚約して同棲どうせいを始めた途端とたん、彼の態度たいど豹変ひょうへんした。

 元々もともと、お金には少しこまかい所がある人だった。
 
 でもそれは、私にはこのましく思えた。
 
 節約志向せつやくしこうのある、真面目まじめな人だと思ったのに。
 こんなことになるなんて…!

「何だ、この封筒ふうとう…。おい、これにも金が入ってるじゃないか。しかも何だこれ、寄付金きふきんって。お前、俺の金を誰にあげようって言うんだ!」

「それだけは、持って行かないで!それは、大事だいじな物なの。私のお給料きゅうりょうから、お小遣こづかいから出した物よ。だから、ゆるして!」

「うるさい!」

 彼は手にした札束さつたばで、私のほほなぐった。

まったく…金にうるさい女はいやになる。」

 そう言って、彼は私の部屋を後にした。

 そんなことして、あなたはただじゃまないわ。
 だって、その寄付先は…。

※※※

「おい、あれT・Kグループの御曹司様おんぞうしさまだよな。何でこんな所に居るんだ?」

「もしかして、今度の提携先ていけいさきはあそこか?でも御曹司が直々じきじきにお出ましとは…。」

 何が、御曹司様だよ。
 ただのボンボンだろうが、えらそうにしやがって─。

「君、ちょっと来なさい。お客様から、大事な話がある。」

「はい…?」

 客って、あの御曹司か?
 大事な話って、まさか引き抜きとか?
 だとしたら、大出世だいしゅっせじゃねーか!

「失礼します!」

 やっぱり、御曹司…え?
 何で、こいつも居るんだ?
 
 俺の婚約者のこの女が、何でここに…。

「君は…私の大事な家族に、ずいぶんな事をしてくれたね。金をうばい顔を殴るなんて、君はそれでもこの子の婚約者かい?毎月、彼女が手渡ししてくれる寄付金。今月はそれを渡すことができないと、涙ながらにうったえられた時は、どういう事かと思ったけど…まさか、そんな目にっていたとはね。」

「か、家族って…?だって名字みょうじも、顔も、まったく違う…。」

「私たちに、血のつながりは無いよ。でも、家族だ。私たちは、同じ施設しせつで育ったんだ。そこに居た者たちは、みんな大事な家族だ。」
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