あたしは蝶になりたい

三鷹たつあき

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変異・変色

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次の日もとても明るい気持ちで学校に向かうことになった。彼氏と早く逢いたい。声が聞きたい。そんなこと考えながら学校までの道のりを急いだよ。

学校に着くと既に彼は自分の席に腰をおろしていて数人の仲間とお話をしていた。ちらっとあたしの方をみて微笑んで、右手を椅子の後ろに回し、手を振ってくれた。ああ。恋をするということはこんなにも素晴らしいことなのか。その日の下校時もあたし達はふたりで帰ったわ。きっともう他人の目から見たら完全にカップルに映るのだろう。多少照れくさいのはあったが恥ずかしくはなくなっていた。かえって、

「どう?素晴らしいでしょう。」

という誇らしげな気持ちになっていた。彼氏の家の庭に自転車を止めて玄関先で軽くキスをして家の中に入った。だけどふたりは今日は交わることはしなかったわ。それがなくてもお互いを愛おしく思っていることがたくさん伝わってきたの。甘く、暖かな空気が亮君の部屋の中を漂っていた。

ああ。幸せだなあ。ここ何年も味わったことの無い明るい気分をあたしは噛締めていた。

優しく穏やかで暖かな日々が続いた。ついこの前まであたしの目には氷河のように映った景色も今は春が訪れたかのように、程よい日差しが差し込んでいる。もうすぐ季節も移ろい本物の春がやって来るだろう。世界は明らかに変わりつつあった。

あたしの体にも小さな変化が現れた。身体が暖かくなってきたのだ。自分の肌に、掌に、首元に、胸元に、ややオレンジがかった黄色い空気が纏わりつくようになったの。ヒヨコの群れにあたしが埋もれているような感覚だったわ。この子達はみんな甘えん坊で、あたしの肌にすり寄ってくる。あたしの着ている服の上からでは物足りないらしく、襟元とか裾の隙間から潜りこんできてはあたしの体温を温めてくれる。嘴が小さくてすぐに折れてしまいそうな程優しいので、あたしのからだを傷つけることはない。その辺で見かける雛より首が短く柔らかい体毛に包まれた体はあたしの握りこぶし程の大きさもなかった。

そして気が付けばあたしの体もこの子達と同じような色に変化していった。手の先、足の先、人の目につく箇所には全く変化は見られなかったけど、胸元から太ももにかけてもやや変色は広がっていった。別に黄疸が出来たわけではない。ほんの少しだけ日に焼けたようなそんな変化だった。そしてあたしの体の芯を温めてくれているのだ。

 ぽかぽかしているから眠りやすい。これまではベッドに入ってから眠りにつくまでに苦しくて辛い思いをすることが多かったが、体が温まるにつれてあたしは気持ち良く眠りの世界に落ちていくことが出来るようになっていた。
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