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三十八話 蛇
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にょろりと長い体、口から出るちろちろとした舌。ざりざりとした白い鱗に、冷ややかな真っ赤な瞳。
アリシアにとってそれは何故か恐怖の対象であり、近くによるだけで体が言うことを効かなくなる。
「へへへへへへびぃぃぃ!」
悲鳴を上げるアリシアに対して、蛇も蛇でアリシアの反応に驚いて部屋の隅へと慌てて移動する。
「お、おおお、お前、突然悲鳴を上げるな! 恐ろしいだろうが! しかも先ほどわしを箒で叩こうとしたな!」
「……しゃべっておられる」
突然冷静になったアリシアは、体はへっぴり腰ながらも、その蛇をじっと見つめた。
たしかに怖い。蛇である。
しかし、何故かその蛇はちゃんと見ればあまり怖いとは感じられない。
いつもならば怖いのだけれど、何故だろうかとアリシアは思ったのだが、とある理由に気付く。赤い瞳が、セオの瞳と同じように美しいのである。
白蛇は大きくため息をつくと、まるで姿勢を正すようにすっと首を伸ばして言った。
「今日はおぬしに頼みがあって来た」
「え?」
アリシアは蛇をじっと見つめ、箒の柄の部分でちょいちょいと小突いた。
「やめい!」
そう言われ、慌てて箒を引っ込めはするものの、白蛇がしゃべっている状況にアリシアはびくびくとする。
「えっと、申し訳ございませんが、私はセオ様の侍女ですので、白蛇の言うことを聞くことは出来かねます」
それでも自分の仕事はセオの侍女。白蛇の頼みを聞く気はないとはっきりと告げる。
白蛇は舌をちろちろと出すと、ため息を漏らすように言った。
「わしは聖国が神と崇める白蛇。お前を襲ったローゼンが、本来崇めるべき神だ」
「え?」
アリシアは首を傾げ、白蛇をじっと見つめた。
突然蛇がしゃべりだし、神だとかしゃべり始めたとアリシアは一体現状がどうなっているのか理解が出来ない。
その時であった。
部屋の中に、シューシューというような音が響き始め、そしてアリシアの背筋に悪寒が走る。
「え? え?」
いつの間にだろうか。部屋の中にいたるところに黒い蛇がシューシューと音を立てながら這いまわっている。
「っひ!」
アリシアは震え、黒い蛇達をよけて椅子の上へと立った。
「なななな」
動揺するアリシアの足元で白蛇はちょこんと首を持ち上げて言った。
「おぬしに力を貸してほしいのだ。どうか、ローゼンを救ってやってくれ」
「いえ、その前に私の方を救っていただきたいくらいです!」
その言葉に白蛇はちろちろと笑うように舌を出した。
「いいものを持っているではないか」
「は!?」
「そのシーツを蛇に向かって振り回せばいい」
アリシアは冷静になると白蛇を睨みつけた。
「シーツで蛇がどうになるわけがないでしょう」
白蛇は二っと笑うように瞳を三日月形にする。
「それは普通のシーツではない。お前が刺繍したものだ。稀有な力を持った人間よ。さぁ、振り回すのだ!」
言われなくても、蛇がどうやったら飛べるのか、アリシアに向かって飛んできたのである。
アリシアは無我夢中でシーツを振り回した。
アリシアにとってそれは何故か恐怖の対象であり、近くによるだけで体が言うことを効かなくなる。
「へへへへへへびぃぃぃ!」
悲鳴を上げるアリシアに対して、蛇も蛇でアリシアの反応に驚いて部屋の隅へと慌てて移動する。
「お、おおお、お前、突然悲鳴を上げるな! 恐ろしいだろうが! しかも先ほどわしを箒で叩こうとしたな!」
「……しゃべっておられる」
突然冷静になったアリシアは、体はへっぴり腰ながらも、その蛇をじっと見つめた。
たしかに怖い。蛇である。
しかし、何故かその蛇はちゃんと見ればあまり怖いとは感じられない。
いつもならば怖いのだけれど、何故だろうかとアリシアは思ったのだが、とある理由に気付く。赤い瞳が、セオの瞳と同じように美しいのである。
白蛇は大きくため息をつくと、まるで姿勢を正すようにすっと首を伸ばして言った。
「今日はおぬしに頼みがあって来た」
「え?」
アリシアは蛇をじっと見つめ、箒の柄の部分でちょいちょいと小突いた。
「やめい!」
そう言われ、慌てて箒を引っ込めはするものの、白蛇がしゃべっている状況にアリシアはびくびくとする。
「えっと、申し訳ございませんが、私はセオ様の侍女ですので、白蛇の言うことを聞くことは出来かねます」
それでも自分の仕事はセオの侍女。白蛇の頼みを聞く気はないとはっきりと告げる。
白蛇は舌をちろちろと出すと、ため息を漏らすように言った。
「わしは聖国が神と崇める白蛇。お前を襲ったローゼンが、本来崇めるべき神だ」
「え?」
アリシアは首を傾げ、白蛇をじっと見つめた。
突然蛇がしゃべりだし、神だとかしゃべり始めたとアリシアは一体現状がどうなっているのか理解が出来ない。
その時であった。
部屋の中に、シューシューというような音が響き始め、そしてアリシアの背筋に悪寒が走る。
「え? え?」
いつの間にだろうか。部屋の中にいたるところに黒い蛇がシューシューと音を立てながら這いまわっている。
「っひ!」
アリシアは震え、黒い蛇達をよけて椅子の上へと立った。
「なななな」
動揺するアリシアの足元で白蛇はちょこんと首を持ち上げて言った。
「おぬしに力を貸してほしいのだ。どうか、ローゼンを救ってやってくれ」
「いえ、その前に私の方を救っていただきたいくらいです!」
その言葉に白蛇はちろちろと笑うように舌を出した。
「いいものを持っているではないか」
「は!?」
「そのシーツを蛇に向かって振り回せばいい」
アリシアは冷静になると白蛇を睨みつけた。
「シーツで蛇がどうになるわけがないでしょう」
白蛇は二っと笑うように瞳を三日月形にする。
「それは普通のシーツではない。お前が刺繍したものだ。稀有な力を持った人間よ。さぁ、振り回すのだ!」
言われなくても、蛇がどうやったら飛べるのか、アリシアに向かって飛んできたのである。
アリシアは無我夢中でシーツを振り回した。
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