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第一章

グリードの歓喜した日

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 長かった時が、終わりを迎え、グリードは歓喜した。

 きっと、これで、フィリアが自分を見てくれるはずだ!!

 そう期待を込めて、グリードはハロルドとルーナの結婚式の後日フィリアを抱きしめて湖畔で寛いでいた。

「グリード?くすぐったいわ。」

 フィリアの首元に顔を埋めてぐりぐりとしていると、フィリアからそう言われたが、やめる気はなかった。

「フィリア?」

「なぁに?」

 グリードは決意を固めてフィリアをギュッと抱き締めると言った。

「そろそろ、俺と結婚式を上げてほしい。」

 その言葉に、フィリアの肩がピクリと震えた。

 グリードは、フィリアを降ろすと、その前に跪き、その細い手を取り手の甲に口づけを落とした。

「皆結婚式を上げた。もう、待ては出来そうもない。フィリア。俺と結婚してくれ。愛してる。」

 その言葉に、フィリアは顔を真っ赤に染めると、俯き、こくりと頷いた。

「、、、、はい。」

 そのしおらしく可愛らしい姿にグリードはフィリアを抱き上げてくるくると回った。

 その瞬間に湖畔に咲く花々も共に舞い上がった。

「良かった!よし、さぁ、行こう!!」

「え?」

「結婚式だ!」

「へ?」

「大丈夫!皆にはすでに伝えてある!」

「えぇ?!」

 フィリアが驚きの声を上げる中、グリードは瞬間移動を行い、結婚式の会場へと飛んだ。

 控室にいたメイド達に、どんどんとフィリアは着飾られていき、そして美しく仕上げられていく。

 フィリアは動揺し、終止、「え?」「どうして?」と声を上げている。

 グリードはニコニコしながら、フィリアに言った。

「ほら、このドレスはエマ嬢の時に、これを着たいと言っていただろう?ほら、このアクセサリーはクロエラ嬢のアクセサリーを選ぶ時に一番目が行っていた物だよ。ほら、髪型や化粧はマリア嬢の相談に乗るときに、こうしたいって言っていたことを参考にしてあるよ!靴はシェーラ嬢と選ぶ時に、うっととりと見つめていた物にしたよ!会場はフィリアが前から言っていたように妖精の結婚式のように仕上げてあるから!」

 怒涛の勢いで喋り続けるグリードに、フィリアは動揺した。

 今まで一緒にいてこんなにハイテンションなグリードを見たことが無い。

 だが、どれもこれも自分の好みにベストマッチしておりフィリアは文句のっけどころがない。

 出来上がった自分を見た瞬間、フィリアはすごいと最早感心した。

 憧れていたウェディング姿の自分がそこにいる。

「すごい。」

 思わずもれた声に、グリードがうっとりとした表情で言った。

「世界で一番素敵だよ。」

 フィリアが令嬢達の結婚式に意気込んでいる間に、グリードは父親のロードと共に結婚式の準備を着々とこなしていっていたらしい。

 しかも結婚式の準備には他の令嬢方も協力してくれたらしく、会場はそれは華やかに、それでいて自然があふれるまさに妖精の結婚式のようであった。

『フィリアおめでとー!』

『きれー!』

『おめでとー!』

 会場には精霊達も集まり、天井からは美しい花たちが降り注ぐ。

「フィリアおめでとう!」

「とてもキレイよ!」

「おめでとう!本当に素敵だわ。」

「良かったわ。フィリア。キレイ。」

 会場には令嬢や令息らの姿もあり、フィリアは瞳に涙をためて笑みを浮かべた。

 皆が、とても幸せそうに微笑んでいるのが嬉しくてたまらない。

 それと同時に何故か寂しさがこみ上げる。

 あぁ、終わったのだ。

 ゲームは終わりを迎え大団円。

 だが、この先は?どうしたらいいの?

 急に胸に不安が湧く。

 その時、フィリアをエスコートするグリードが言った。

「フィリアはまるで幸せを運ぶ青い鳥のようだな。」

「え?」

「ほら、皆が笑っている。でも、これを生み出したのはフィリアだ。」

「私?」

 グリードは優しく笑い、そして言った。

「もし、フィリアが俺を救っていなければこうはならなかった。そして、フィリアがいなければ皆も結婚していたかどうか。この幸せはフィリアが運んできてくれたんだ。」

 フィリアは、首を横に振った。

「いいえ、私は、ただ応援しただけ。」

 グリードは笑い、フィリアを抱き寄せた。

「そんなフィリアだから、皆が幸せになった。ありがとうフィリア。でも、これからは俺の事ももっと見てほしい。」

「え?」

「令嬢ばかりではなく、夫である俺も見てくれるか?」

 フィリアは、その言葉に笑い声を上げた。

「ええ。もちろん!」

 ゲームは終わりを迎えても、これからの人生はまだまだ続いていくのだ。

 これからはもっと素敵な物語を紡いでいこう。

 グリードはその瞬間、フィリアにキスをした。

 フィリアは驚き、会場の皆は二人を囃し立てた。




 皆に祝福され、その日、聖なる乙女と聖なる龍は結婚式を上げ、末永く幸せに暮らしました。

 聖なる龍は、その後も、事ある毎に令嬢方の所へ出掛ける聖なる乙女と一緒にいちゃいちゃしながら応援したとか、しないとか。









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