【完結】五年苦しんだの、次は貴方の番です。~王太子妃は許す気はありません~

なか

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18話

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 驚きの中で立ち尽くすルアンスを置いて、カミラはそれから何も言わずに連行されていく。
 事情を尋ねるように彼が視線を向けてきて、事実を明かすべきか迷ったが、隠しても仕方ないと全て伝える。

「そうか……どうやら僕は、母上の実子ではなかったのかもしれないな」

「ルアンス、ごめんなさい。こんな事実まで知る事は、望んでいないでしょうに」

「いや、いいんだ。むしろ……納得できた気がする」

 ルアンスは少しだけ悲しげに、瞳に哀愁を灯して語る。

「前に伝えた通り、僕は兄上より前に出ることを禁じられていた。それは母上の意向だったんだ」

「そうだったんですね」

「母からは愛と感じられるようなものは一切感じた事は無かった。それは僕が不甲斐ないからだと思い、努力を続けていたけれど。血の繋がりでは、どれだけ抗っても変わらないわけだ」

 詳しくは分からないが、恐らくハーヴィン国王陛下は妾との間に子を設けた。
 妾は当時の王家に抹消されたと聞いたが、ルアンス自身は後の世継ぎ候補として残されていた可能性がある。
 ただ妾の子では醜聞が立つため、隠れ蓑としてカミラの子とされたのだろう。

「どちらにしても……ハーヴィン国王陛下には、少し辟易してしまうわね」

「確かに、我が父ながら……こんな事実を隠して、僕に伝えてもくれなかったとは」

「現ハーヴィン王家は不都合を隠す隠蔽体質が整っている。それもかなり前からね」

「おっしゃる通りだ……正さねばならぬ事だと痛感するよ」

 ルアンスは呟きながら、私を見つめる。
 そしてまっすぐな瞳で問いかけてきた。

「まだ、やる事があるのだろう?」

「はい。私はロザリンの公爵家へ赴き。ある人の身柄を押さえにいきます」

「なら……僕に鎧の件と書置きを残した人物を調べさせてくれないか?」

「良いのですか?」

「君に聞いた話と、母の状況から……実行できるのは王家に近しい人間だと分かった。僕の立場なら詳しく調べられるはずだ」

 迷うが、確かに今の私では……一年前に真実を教えてくれた謎の人物まで探り当てる権力はない。
 ゆえに立場的に自由のきくルアンスに頼むべきかも。

「お願いしていいですか、ルアンス」

「君の期待に応える結果を届けられるようにするよ」

「ここまで協力してくださり感謝します。しかし、良いのですか? 貴方も忙しい身のはず」

「いいんだ。今まで日陰で生きていて、評価される事を母に縛り付けられていた。でもこの件をキッカケに王宮でも僕の支持者が増えてきてくれたんだ」

「……そうなのですね」

「兄が不甲斐ない今。僕はようやく、民の信頼を得るために自分の意志で働く事ができる。それが嬉しくてね」

 その言葉には裏がないと思えた。
 ルアンスの笑みがいつもより深く、喜色を含んだ本音だ。

「では、僕はこれで……母については改めて調査書をまとめておくよ」

「頼みます。ルアンス」

 去っていくルアンスを見送り、私は傍に立つリューグを見つめた。
 彼は無言のまま一部始終を見守っており、騎士として決して自らの意見を述べはしない。
 だけど、今は彼の意見も欲しいために言葉をかける。

「一時任を解きます。リューグ」

「フィリア様! あの女の血が付着しております。貴方の高貴な御身にこんな汚れが付着してはいけません。お、俺のような男の物で恐縮ですが、ハンカチにて血を拭ってください」
 
「ありがとう、リューグ。助かるわ」

 相変わらず癖の強い変貌に苦笑しつつ、ハンカチを受け取って血を拭う。

「血が付いてもう使えないかも。ごめんね」

「フィリア様の役に立てたなら、ハンカチも報われましょう」

「大げさよ。それと、貴方に少し聞きたい事があるの」

 リューグに聞きたい事があると告げた途端。
 彼は口を閉じて、私の問いかけを待った。

「ルアンスについて……貴方はどう思う?」

「警戒すべきです。監視を付けておくのが最善かと」

 ハッキリ告げられた言葉に、その意味を問う。

「根拠は?」

「あの方の言動には偽りは無く思えます。頼りになりますし、信頼もしたい」

「そうね」

「しかしながら……人生で初めて評価を得られる環境を得て、一喜一憂している状況は危険です。初心な承認欲求は時に過ちを犯す原動力になり得ます」

 鋭い指摘と、私と同様の考えを抱いているリューグに少し安心する。

「でも俺が監視は嫌です。フィリア様と一緒にいたい」

「分かっているから、大丈夫よ」

 任を解けば、まるで犬のように感情を振りまく。
 それが嬉しく思いつつ、私は微笑んだ。

「監視のための手は足りているの」

「本当ですか?」

「ええ、父ならきっと……私の意図を汲んでくれるから」


   ◇◇◇


 その言葉通り、二日後。
 シルヴァン王家より、新たな遣いが来たと報告を受けて王城前へと向かう。

「「フィリア様! お会いできて光栄です!!」」

 仰々しい言葉と共に、数十人の騎士が勢揃いして敬礼をする。
 一糸乱れぬ所作と統率のとれた動き。

 やはり、我が父は私の意図を汲み取っていち早く協力者をよこしてくれた。
 彼らは……

「我らがシルヴァン王家騎士団。総員十六名。シルヴァン陛下より命を受け、フィリア様の命令下となる特務を得ました! これより我らが貴方の手足となります!」

 シルヴァン王家の精鋭騎士達だ。
 リューグだけでも心強いのに、統率のとれた集となれば出来る事は大きく増える。
 加えてシルヴァン王家からは外交官も訪れ、ハーヴィン王家に対して正式な抗議を示している。

 高ぶる王家への批判の中で、私は最後の重要な証拠を手に入れに行こう。

「早速ですが、皆さんに協力してもらう事があります」

「なんなりと」
 
 私は数人、王宮内のルアンスの監視の任を伝え。
 そして残りの人員を連れて、ロザリンの生家であるテルモンド公爵家へと向かう。

「な、なにしに……きたのよ!」

 屋敷に着いた私を見て、自宅にて謹慎していたロザリンが叫ぶ。
 彼女の父であるテルモンド公爵も、私の来訪に驚いていた。
 
「ロザリン、貴方が知っている事、全て教えに貰いに来たわ。ここに隠している事も全てね」

「っ!」

「あまり時間をかけてられない。だから直ぐに終わらせましょう」

 ロザリン、そしてテルモンド公爵。
 彼らが抱えているという、五年前に私に偽りを告げた医師の身柄を押えよう。 
 決して逃げる猶予など与えない。

 証拠隠滅を防ぐため、確実に迅速な対応を取り続ける。
 私は決して貴方達を逃すなんて考えはないから。
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