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11話ーベルモンド家の危機!?ー
しおりを挟むあの事件から約二ヶ月が経った
今ではあの時の騒ぎがうそのように風化し
ルルの体調も元に戻っていた
そして当の本人は
「カイエン、準備はしましたか」
「はい!師匠!!罠を仕掛けたかいがありました」
カイエンはそう言って机の上に何やら箱を置いた
それを見てルルは怪しげな笑みを浮かべる
「それでは、秘密の訓練を始めましょうか」
「はい、俺のこの紅蓮の炎を更にたぎらせてください」
実はカイエンがルルにとある話を持ち掛けたのである
もっと魔法を強化する方法はないかと
アリサの魔法の教えもあり
多少の魔法は使えるようになったカイエンだが
彼はアリサに隠れて更に魔法を強化できる方法をルルに求めたのだった
「ですが、本当にいいんですね……苦しい試練ですよ」
「はい、俺は癒しの担い手を守るために……命もかけますよ」
「……分かりました」
真剣な顔で箱を見つめていた2人
そんな時、オリビアが部屋に入ってくる
「あら?何してるの?2人とも」
「母君、俺は癒しの担い手を守るために禁忌の力を得るんだ」
「えーと…アリサちゃんを守るために修行中なの?」
カイエンは赤くなりながら頷く
「あら、ならお母さんは応援するわよ、一体どんな方法なの?」
そう聞いたオリビアにルルは胸を張って答えた
「私が説明します!魔法使いが短期的に強くなる方法……それは恐怖を味わう事です!恐怖の刺激は魔力にいい影響があるんですよ」
「恐怖を…味わう?」
オリビアの背筋に嫌な汗が流れた
「カ、カイエン……あなたが怖いものって……確かお母さんと同じ」
カイエンは頷きながら目の前の箱を開けた
そこには虫がうごめいていた
「あ………」
バタリとオリビアはソファーにもたれて気絶してしまった
「母君は可愛いのが好きなのと逆に虫は大の苦手なんだ」
ルルは蠢く虫をみながら汗を流した
「実は私も苦手なんですよね、カイエンはどうですか?」
「……………もう泣きそう…」
「ふっふっふ…なら師匠の私がまずはお手本を見せてあげます!!」
ルルはそう言って虫たちの前で魔法を出す
(この前、私はなにもできなかった…カイエンと同じく無力感を感じたわ…だから耐えてみせる!)
恐怖しながら魔法を出すことにより、魔力が大きく流れるのを感じる
「きた、確かに感じる!私の魔力は強化されている!」
「さすが師匠…………」
だが、悲劇が起こった
始まりは小さな羽音だった
一匹の虫が前触れもなく飛び出したのだ
そしてそのままルルの手に止まってしまった
「あ…………」
ルルの声が虚しく響き、出していた魔法が制御を失って目の前の箱へと落ちた
「あ」
うごめく虫たちが解放される、押し寄せる黒い波
ルルは立ったまま気絶してしまった
「だ、誰かぁ!!」
叫びと同時にエブリンが入ってきた、丸めた紙束を持って
「カイエン様、おまかせを…事情は全て見ておりました、使用人歴40年の練り上げた技をお見せしましょう」
「エ、エブリン!!」
「さぁ、虫達には全員眠ってもらうよ!!」
「いけぇぇ!!」
エブリンが丸めた紙束を虫へと振り上げた時
カイエンはとある事を思い出した
(そういえば、あの黒い虫って)
「まってエブリン!その虫は叩き潰すと卵がまき散らされるんだ!!」
「んな!?」
エブリンの紙束がギリギリで止まる
「つ、潰せません…そんなおぞましい事になるなんて…」
打つ手がなくなった…
オリビアとルルは気絶しており
さらにエブリンが潰すこともできない
カイエンは冷汗が止まらない
ベルモンド家の危機であった
だが、そこに救世主が現れた
「おや?なんだか大変なことになってるね」
「父さん!!大変なんだ、虫が!」
「ふむ…なるほど」
部屋に入ったハウルは冷静に状況を観察し、カイエン達の前に立つ
「ここは子供のころ虫取りのハウルと呼ばれた僕に任せてもらおうか」
「父さん!!」「旦那様!!」
カイエンはかつてここまで父親の背中が大きく見えたことはなかった
まさに一家の大黒柱
頼れる父親であった
ハウルは笑顔で虫にちかづいていく
「いいかい?カイエン、怖がらずにとってあげれば大丈夫なんだよ…………うぐっ…」
そう言ってハウルはかがむが
突然うめき声を上げ
動きを止める
「父さん?どうしたの?」
「だ、旦那様?」
「…………腰をやってしまったみたいだ…」
「父さん!!!!!」
ハウルはよろよろと座り込んでしまった
(まずい!今度こそまずい!!)
いよいよ迫ってくる虫の大群にカイエンとエブリンが後ずさるが
ここで扉が開きアリサが帰ってきた
「ただいま買い出しから帰ってまいりました……って何が!?」
「まずい!!アリサ!逃げて!!」
虫が羽ばたき、アリサへと迫った
カイエンは慌てて走り出す
だが
パシ
アリサは飛んできた虫を魔法によって止める
さらに部屋に広がった虫たちも次々と動きを止められて宙に浮ぶ
「へ?」
「ビックリしました、カイエン様この虫たちはどこから?」
「えと……魔法の練度を高めるために連れてきた…森から…」
「そうですか、この子達もきっと突然連れて来られて怖がっていると思います、戻してきますね」
「え?…………」
虫たちを宙に浮かせながら外に飄々とでていくアリサ
この日、ベルモンド家の最大の危機を救い
そしてベルモンド家に虫が出た時はアリサに頼れと家訓ができたのであった
後日
ルルとカイエンは怒り狂ったオリビア様によって
二度と虫を使った魔法の修行を禁止されたのであった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本編と関係ない話
作中の黒い虫とは皆さんよく知るGです
叩き潰すと卵が飛び散るというのは半分ウソで半分本当のようです
諸説ありますが
妊娠したメスは住処から出てこない
卵のからは固いので潰しても大丈夫
とあまり心配する必要はないみたいです
ですが見た目の問題もありますので
殺虫剤を持っておくのが一番ですね
関係ないお話でした!
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