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12話ー冬になり始めてー
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季節も寒くなってきた
吐く息が白くなり、雪が降りだしそうな寒さだ
そんな中、私は屋敷の衛兵さん達にある物を届けにいっていた
「あの、良ければこれをどうぞ」
「あぁ、アリサさん!おぉ!ありがとうございます!」
手渡したのはマフラーだ
私が空いた時間で作った物だけど
寒くなってきていたのでいつも外で見守ってくれている衛兵さん達に配っていく
全員に配り終え、屋敷に戻ると
カイエン様がなぜかこっちを見ていた
「?……どうしましたカイエン様?」
「さっきの…」
「あぁ、マフラーですか?衛兵さん達が寒そうでしたので」
「そ、そうか!最近寒いものな、俺も煉獄の炎が消えかかっていて」
「それは大変です!屋敷に戻って温まりましょう!」
「…………いやいい!!」
?
なぜかカイエン様が膨れてしまった
何か失礼なことを言っただろうか
悩んでいた私に突然ルルがやってきて抱き着いてきた
「アリサーー!寒いから温めて!」
「わ!?ルル!もぅ、ルルもお仕事あるでしょ」
「へへぇ…ちょっとぐらいならいいじゃん」
もみ合う私たちにカイエン様が制止する
「師匠!!癒しの担い手が困っている!それぐらいで…」
「んー?じゃあこの辺にしておこうかな!」
ルルはやけにあっさりと離れるとカイエン様に耳打ちした
「気づいてもらえるといいね」
「!?」
気付く?
なんの事だろうか
とりあえず私は普段の仕事に戻る事にした
おかしい
カイエン様がずっと一緒にいる
しかも寒いのにやけに薄着だ
「カイエン様?寒くないですか??屋敷に戻った方が…」
「だ、大丈夫だ…俺は火炎の申し子だからな」
「は……はぁ」
一体どうしたのだろうか
屋敷からオリビア様とエブリン様がやけにニヤニヤしながら見ている
今日は不思議な日だ
庭の花に水やりをしていてもカイエン様は見ていた
このままじゃ風邪を引いてしまう、心配だ
「カイエン様、一体どうしたんですか?そんな薄着では風邪をひいてしまいますよ」
「問題ない!俺の煉獄の炎は凍てつく絶対零度さえ克服す…す…」
くしゅん
小さなくしゃみをカイエン様がする
私は慌ててカイエン様の両手を握り
包みこむ
暖かな息を吐き掛け
両手で擦り暖める
「ほら、寒いですよ…手が冷たいじゃないですか」
「あ…………あぁ…」
カイエン様のほほがやけに赤い
本当に風邪をひいてしまったのかもしれない
「大丈夫ですか?カイエン様、なにかご不満があればお申し付けください、アリサは聞きますよ」
「……うん、けどもういい…アリサ、もう少しだけ暖めてくれる?」
急に素直になったカイエン様がなんだか少し可愛らしくて
微笑みながら手を包みこみ
息を吹きかける
「ええ、もちろん」
そう答え、しばらくカイエン様の手を暖めていた
しばらく時間が過ぎて私はある事を思いつく
「そうだ、カイエン様に手袋をおつくりいたしますね、そうすれば手も暖かくなりますし」
「ほ、本当!?じゃ…じゃあ!マフラーも…ほしい」
「ええ、大丈夫ですよ」
その後、カイエン様は先ほどまでとは変わって凄く上機嫌だった
私のお仕事の手伝いまでしてくれた
原因はよくわからないが、とりあえずは良かったのかな?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふふ、カイエンも順調みたいね」
窓から見ていたオリビアは大きくなったお腹を撫でながら呟く
隣でエブリンも微笑む
「そうですね、奥様…カイエン様はもう少しで兄になられますもの」
「そうね…本当に……嬉しいわ」
オリビアは椅子に座ると自身のお腹に向かって囁く
「私の可愛い子、あなたには勇敢なお兄ちゃんと、優しいお姉ちゃんが二人もいるんだから…安心して出ておいで」
微笑みながら、オリビアは生まれてくるであろう子を想うのであった
季節は冬に
そして
悲劇と、奇跡が起こることになる
吐く息が白くなり、雪が降りだしそうな寒さだ
そんな中、私は屋敷の衛兵さん達にある物を届けにいっていた
「あの、良ければこれをどうぞ」
「あぁ、アリサさん!おぉ!ありがとうございます!」
手渡したのはマフラーだ
私が空いた時間で作った物だけど
寒くなってきていたのでいつも外で見守ってくれている衛兵さん達に配っていく
全員に配り終え、屋敷に戻ると
カイエン様がなぜかこっちを見ていた
「?……どうしましたカイエン様?」
「さっきの…」
「あぁ、マフラーですか?衛兵さん達が寒そうでしたので」
「そ、そうか!最近寒いものな、俺も煉獄の炎が消えかかっていて」
「それは大変です!屋敷に戻って温まりましょう!」
「…………いやいい!!」
?
なぜかカイエン様が膨れてしまった
何か失礼なことを言っただろうか
悩んでいた私に突然ルルがやってきて抱き着いてきた
「アリサーー!寒いから温めて!」
「わ!?ルル!もぅ、ルルもお仕事あるでしょ」
「へへぇ…ちょっとぐらいならいいじゃん」
もみ合う私たちにカイエン様が制止する
「師匠!!癒しの担い手が困っている!それぐらいで…」
「んー?じゃあこの辺にしておこうかな!」
ルルはやけにあっさりと離れるとカイエン様に耳打ちした
「気づいてもらえるといいね」
「!?」
気付く?
なんの事だろうか
とりあえず私は普段の仕事に戻る事にした
おかしい
カイエン様がずっと一緒にいる
しかも寒いのにやけに薄着だ
「カイエン様?寒くないですか??屋敷に戻った方が…」
「だ、大丈夫だ…俺は火炎の申し子だからな」
「は……はぁ」
一体どうしたのだろうか
屋敷からオリビア様とエブリン様がやけにニヤニヤしながら見ている
今日は不思議な日だ
庭の花に水やりをしていてもカイエン様は見ていた
このままじゃ風邪を引いてしまう、心配だ
「カイエン様、一体どうしたんですか?そんな薄着では風邪をひいてしまいますよ」
「問題ない!俺の煉獄の炎は凍てつく絶対零度さえ克服す…す…」
くしゅん
小さなくしゃみをカイエン様がする
私は慌ててカイエン様の両手を握り
包みこむ
暖かな息を吐き掛け
両手で擦り暖める
「ほら、寒いですよ…手が冷たいじゃないですか」
「あ…………あぁ…」
カイエン様のほほがやけに赤い
本当に風邪をひいてしまったのかもしれない
「大丈夫ですか?カイエン様、なにかご不満があればお申し付けください、アリサは聞きますよ」
「……うん、けどもういい…アリサ、もう少しだけ暖めてくれる?」
急に素直になったカイエン様がなんだか少し可愛らしくて
微笑みながら手を包みこみ
息を吹きかける
「ええ、もちろん」
そう答え、しばらくカイエン様の手を暖めていた
しばらく時間が過ぎて私はある事を思いつく
「そうだ、カイエン様に手袋をおつくりいたしますね、そうすれば手も暖かくなりますし」
「ほ、本当!?じゃ…じゃあ!マフラーも…ほしい」
「ええ、大丈夫ですよ」
その後、カイエン様は先ほどまでとは変わって凄く上機嫌だった
私のお仕事の手伝いまでしてくれた
原因はよくわからないが、とりあえずは良かったのかな?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふふ、カイエンも順調みたいね」
窓から見ていたオリビアは大きくなったお腹を撫でながら呟く
隣でエブリンも微笑む
「そうですね、奥様…カイエン様はもう少しで兄になられますもの」
「そうね…本当に……嬉しいわ」
オリビアは椅子に座ると自身のお腹に向かって囁く
「私の可愛い子、あなたには勇敢なお兄ちゃんと、優しいお姉ちゃんが二人もいるんだから…安心して出ておいで」
微笑みながら、オリビアは生まれてくるであろう子を想うのであった
季節は冬に
そして
悲劇と、奇跡が起こることになる
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