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天才魔法少女はこの気持ちを認めない
ep1ー教師としてー
しおりを挟む(ドキドキするなぁ……)
ルルは歩きながら思う
本日よりラディウス王国に設立された初の魔法学校
その第一期生となる生徒達にいまから会いにいくのだ
魔法を扱える子供は決して多くはない
このラディウス王国で6歳から12歳までで約3人のみがこの学校に入学している
教室の前まで行くと子供達の声が聞こえる
(き、緊張してきた……私って子どもの頃どんなだったかな……大丈夫だろうか)
今では彼女を紅蓮の魔法使いなんて呼ぶ者も多く
この学校に期待している者も大勢いるが
まだ21歳なのだ
この緊張も当然のことだろう
彼女を国に推薦したハウル様は
とある人を補佐官として任命したと言っていたが
(一体誰なんでしょうか?)
教室の前にはいないし、初日から遅刻?
(なめてるわね……まぁいいわ)
少しの怒りで緊張も和らいだ
ルルは教室の扉を開き、精一杯の笑顔で挨拶した
「みんなー!!おはよう!!今日から皆に魔法を教える!ルル・マリアンヌ先生でーす!」
しーん
(あれ?なんだか反応うすくない?)
ルルが教室を見渡すと
三人の男女が無言で見つめていた
強気そうな男の子と
逆に凄くびくびくしている男の子
そして、黙って見つめる女の子だ
「おい!あんたが俺たちに魔法を教えてくれるそうだけど!本当か!?」
強気そうな男の子がルルに指を指す
(この子は確か…グロスくんだったかな)
「そうですよ、グロスくん、よろしくね」
「俺はもう魔法なんてとっくに完璧なんだ!親に入れって言われたけど!教えてもらうことなんてない!」
そう言って彼は自身の手のひらに大きめの水球を作り出す
(この年で水魔法の中級まで使えるなんて、確かにすごいわね……)
ルルは素直に感心した
「グロス…やめなよ、怒られるよ」
「おい!クレインは黙ってろよ!」
弱気そうな男の子
クレインと呼ばれた彼は確か土魔法を得意にしている子だ
グロスは生意気なように見えるが
ルルにとっては想定内だった
もとより魔法を使える者は多くはない、使えるだけで周りの大人からもてはやされるのだ
気持ちが大きくなっても仕方ない
(現に昔の私がそうだったからね……)
ルルは昔の自分を反省しながら苦笑する
「な、笑ったな!?この!」
「あ!?」
グロスは新たに小さな水球を作り出し、ルルの元に投げつけた
彼女にとってこの程度の魔法は簡単に対応可能だ
即座に目の前に炎の壁を作り出したが
突然、水球は方向を変えて教室の扉の方向へ
魔法の軌道はグロスが変えた訳ではない
(エウィがやったのかな)
大人しそうに座っている女の子のエウィ
彼女は珍しく重力を操る魔法を扱えるのだ
だが
それを他人の魔法にまで適用できるなんて
かなり天才かもしれない
なんにせよ、エウィが水球の軌道を変えてくれたお陰で誰にも当たることもないだろう
そう思った瞬間
「おわ!?」
パシャッ!!
突然
教室に入ってきた男の顔面に水球は直撃した
そういえば補佐官がいるって……ルルは彼をみて驚愕した
いつも通り無精ひげを生やし
顔が濡れた男
見覚えのある男だった
「あんたが、補佐官だったのねラバルト」
目の前のラバルトは水を拭きながらニヤリと微笑んだ
「あぁ、遅れてすまんね…ルル先生?」
こうして、ルルとラバルトの奇妙な教師生活が始まったのであった
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