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王城乗っ取る?(仮)

41.ある意味劇物指定なんだが

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「置けたか?」
「えぇ、問題ありませんわ。それよりもこの接着剤と言うもの、凄いですわね。軽く扉を引いてみたのですが、動きませんでしたわ。」
「だろ?」
感心するメイニに、俺は得意げに笑ってみせる。
「これ、商品にしたら売れますわよ。」
まぁ、それは分かるんだが。
「とりあえず、ここを切り抜けてからだろ。」
「ですわね。」

決行時間の夜9時。メイニは直ぐに敷地内に忍び込むと、裏口へ向かって行った。ものの数分で戻って来たところで、接着剤の話題になる。
「見張りの交代はもうすぐなんだろ?」
「そうですわ。」
大きな屋敷だが、言い換えれば死角の多い建物だ。機動力のあるエリサは、闇に紛れ屋根上から玄関の屋根まで移動して潜んでいる。
ユアナの方は建物の影に隠れ、息を殺して玄関を見据えていた。

二階建てではあるが、かなり大きな屋敷のため30人くらいは余裕で入って、まだ収容も可能だろう。商人の荷を奪っているのであれば、倉庫等の収納も必要になってくる。そこまで満たしているかは不明だが。

「奪われた荷物は屋敷の中か?」
盗られたものなら回収するだろうな。
「所持していても荷物になるだけ、既にお金に換えていると考えるのが妥当ですわ。」
あ、なるほど。
確かに言われてみれば。欲しいものを盗ったわけじゃなく、無差別に商品を盗っているんだよな。だったら持っている意味も無いか。
「それより、時間ですわ。」
メイニが緊張を伴った声で、正面入り口を見据えて言う。俺も扉から目は離していないが、やはりいざ実行となると身体が強張るのを感じた。

観音開きの扉の片方を開けて男が出て来ると、外に立っていた男と何かを話し始める。それは見張りの状況についての引継ぎなのか、晩飯についての雑談なのかは不明だ。
二人が話し始めると、エリサとユアナが同時に動く。それに合わせて隠れていた俺とメイニもその場に走り出す。
俺がその場に辿り着くまでは数秒を要するが、エリサとユアナの行動は一瞬だった。男たちが気付き、声を上げる間もなく制圧される。エリサは飛び降りながら男の首を掴んで骨を折り、ユアナは関節を取りつつ口を塞ぎ、地面に俯せ状態にして首元に短剣を当てていた。
エリサは良いとして、ユアナの流麗な動作は見とれてしまいそうになる。が、そんな事をしている場合ではないんだ。俺は駆け寄ると、男の首に針を刺し込んだ。

メイニが半開きになっている扉の中を確認して、俺の方を向いて頷く。誰も居ないという合図なのだろう。
俺は扉の中に入ると、瓶を置いて蓋を取った。
外に戻ると静かに扉を閉め、既に息絶えている男共を扉の前に移動させる。内側から開ける時に少しでも時間が稼げるのと、扉の下の隙間を塞ぐ事も兼ねて。隙間に関してはそこまで効果は無いだろうが。
それが終わると、メイニの合図で屋敷の外壁に沿って移動する。瓶を投げ込む予定の部屋の前まで案内してくれたようだ。

(あそこの部屋がそうですわ。)
少し離れたところにある部屋を指差し、メイニが小声で言う。1階も2階も部屋からは灯りが漏れて、人が居るであろう事が想像できる。流石に窓際に居る奴は居なさそうだが。
しかし、2階には俺の腕力じゃ瓶を投げれそうにないな。
(エリサ、2階のあの窓から、この瓶を投げ入れられるか?)
(余裕だぞ。)
(それじゃ、この瓶を渡しておく。)
俺は鞄から瓶を静かに取り出すとエリサに渡した。
(合図をしたら・・・)
「って何をいきなり投げてんだこのクソ犬!!」
「はぶぅっ・・・」
「ちょっと、大声出さないでよ。」
「台無しですわ・・・」
当然、それだけの声を出せば中にも動きがある。というか、その前に2階の窓ガラスが割れた時点で既にこちらを認識されているわけだが。
エリサに蹴りを入れた後、俺は直ぐに1階にも瓶を投げ入れた。1階も2階も何事かと窓際に男共が群がって来る。

「う、結構居やがるな・・・」
窓際に群がった人数は合わせて20人くらいだろうか。もともと30人程度と聞いてはいたが、実際に目の当たりにすると怖ぇ。生前なら反社会勢力的な場所に殴り込みを掛けているようなものだよな。
そりゃ怖ぇよ。
「てめぇらがやったのか!?」
1階の窓に群がったうちの一人が、窓を開けてこっちに気付くとすかさず大声を上げる。やだやだ、何処の世界でもああいう奴等は似たようなもんだな。
「今更怯みましたの?」
「まさか。」
毒が回り始めたのか、窓際で顔を顰めながら倒れていく奴等を見て、メイニの挑発に笑って返す。当然、大声を出した奴も既に倒れていた。
「正面へ回り込みますわよ。」
状況を確認したメイニが、言うなり正面の入り口の方へ移動を始める。俺も続こうとしたが、背後でけたたましい音を立てて硝子が砕ける音がした。振り返ると一人、こちらに向かって抜身の剣を向けている。
「先に行ってろ、エリサもだ。」
「分かりましたわ。」
「分かったぞ。」
メイニとエリサを先に行かせ、ユアナを見ると頷いてくれた。よし、俺の安全は確保した。

「来いよ。」
窓枠ごと破壊して飛び出した男は、硝子が割れた時に切ったのだろう、顔や首筋、手の甲など肌が露出している部分に裂傷が見て取れる。
まぁ、部屋の灯りでぼんやり見える程度だが。
ちなみに顔は怒りの形相だ。
心外だな。
「なめやがってこのクソガキが!」
挑発してはみたものの、剣を振り被って襲って来る男を、どうにか出来る技量は俺には無い。
だがそこはユアナが頑張るだろう。
「リアちゃん、危ないから下がって。」
想定通り、ユアナが俺の前に割り込むと、男の振り下ろしを短剣でいなす。軌道を逸らされた剣が地面を叩く前に、ユアナの剣柄が相手の右手を打ち付けた。男は堪らずに剣から手を離して、手を抑える。宙を舞った剣は渇いた音を立てて地面に落下した。
ユアナは動作を止める事無く、そのまま柄で相手の右蟀谷を柄で打つと同時に、右回し蹴りを左の首筋に叩き込んだ。意識が混濁したのか飛んだのか不明だが、白目を剥いて男は膝から崩れ落ちていく。
「ちょっとやり過ぎたわ。」
いや、殺す気だから問題ない。
それよりも、短剣だけじゃなく、格闘も凄そうだな。
「やっぱり強いな、ユアナは。」
「体術は得意なのよ。短剣は邪魔にならないから、延長みたいなものね。」
俺が針を刺しながら言うと、ユアナは短剣を回転させながら投げ、掴んで得意げに言った。が、
「下着が丸見えじゃ様にならないな。」
「えぇっ!?」
言われたユアナは慌てて服装を直す。そんなスカートで回し蹴りなんかするからそういう事になる。俺は良いけどな。それは言わずに周囲を確認する。
「もう出て来なさそうだな。」
「そ、そうね。メイニの方に合流しましょう。」
「あぁ。」
なかなか良い太腿を拝めたが、夜じゃ無ければもっと良かったなと思いつつ、俺は頷くと正面へと向かった。

正面の玄関まで来ると、既に扉は開け放たれていた。そことは別の場所に、数人の男が倒れているのが見え、傍には狼化したエリサが立っている。
「終わったのか?」
「分からない。あたしは窓から飛び出して来た奴らの相手をしていたから。」
なるほど、中にはメイニ一人で突入して行ったわけか。そう思いながら屋敷内に目を向けるが、暗くて様子は分からない。扉は開け放たれているから、薬に関してはもう霧散してしまっているだろう。
屋敷の中からは特に騒ぎが聞こえくる事も無い。中で、メイニは何をしているのか。
「追いかけるか。」
「そうね。」
「いいのか?多分ろくなもんじゃねぇぞ。」
何となく、そんな気がしてユアナに確認する。
「リアちゃんより、私の方が経験多いのよ。」
「え?男のべっ・・・」
言った瞬間引っ叩かれた。
「今はそういう話しをしてないでしょう。」
経験豊富と言ったのはそっちじゃないか。まったく。
「まぁいい、行くぞ。エリサはどうする?」
「もちろん行くぞ!」
ユアナという盾を手に入れた今、エリサが居なくても俺の身の安全は確保されている。無理に付き合わせる必要もないなと思って聞いたのだが。
「わかった。」
俺は頷くと、開け放たれた扉から中に足を踏み入れた。

扉付近には数人の男が倒れている。おそらく、外に出ようとして毒素を吸い込んだのだろう。だが、動けないは動けないでも、永遠の方のようだ。
どの男も、蟀谷から血を流して微動だにしない。おそらく、メイニが止めを刺していったのだろう。
「うぅ・・・」
「待ってりゃいいじゃねぇか。」
「独り残されても嫌じゃない。」
あっそ。
倒れる男共の状態を見て、嫌そうな顔をしているから言ったのだが、それよりも待っている方が嫌らしい。
「あら、外は片付きましたの?」
そんな会話をしていると、奥からメイニが現れ声を掛けてくる。メイニは剣の刃先を、白い布のようなもので拭き取りながら近付いて来ると、その布を横に放り棄てた。当然、布には黒い染みが付いている。
「終わったぞ。」
「丁度いいですわ、目的の男を見付けましたの。」
「皆殺しじゃ無かったのか?」
「もちろんそのつもりですわ。ですが、それはこの者達を使って商品を横取りさせていた人物の名前を吐かせてからですわ。」
いや、聞いてねぇし。
「何故言わなかった?」
別に言わなくても問題はないのだが。
「ウノトス。この者達を仕切っている人物なのですが、どうしてもウノトスだけ動向が掴めませんでした。」
それと目的を話すのは別だと思うんだが。
「もちろん、居ればこうするつもりだったのですが、居なければ隠れる前に見つける必要がありました。ですが、そこはわたくしの範疇、リアさんに手伝って頂く事ではありませんもの。」
ふむ、だったら最初から知らなくても問題ないってか。
「なるほど。だがそんな事に気遣う仲でもないだろう?」
「そうですわね。次からはちゃんと言いますわ。」
水臭い事を言うメイニに言ってみると、微笑んで返してくれた。うーん、距離感が近くなっている気がする。これは良い傾向だ。
「で、そのウノトスやらは何処に?」
「2階に拘束しています。」
「じゃ、行くか。お前らは待っていてもいいぞ?」
メイニと二人きりでもいい。
「だから行くわよ。」
「あたしも行く。ここに居てもつまらないぞ。」
ちっ・・・
きっと後悔する事になるぞ。



「念のため聞きますが、依頼者が居ますわよね?」
「居ないな。」
動かない身体で横たわるウノトスが、メイニを睨み付けてそれだけ言った。
「どうせ失敗したら消されるんだ、言った方がいいんじゃねぇか?」
「意味が、わからんな。」
くそ、駄目だったか。引っ掛からないな。
「いえ、調べは付いているんですの。ただ、何処の誰かまでは追い切れていませんわ。」
「・・・」
お、目を逸らして黙った。という事はやはり、裏に誰か居るんだな。というか、何でそんな分かり易い反応をするかな。
「自分だけ消されて、相手は何事もなくのうのうと生きるわけだ。俺には我慢できないが、どんだけ忠誠心があったら黙ってられるんだ?」
「そんなものは、無い・・・」
無いのに言わない理由も分からないな。
「動かなくても痛覚は残ってますのよ。」
「!!」
メイニは言うなり、ウノトスの手の指先を床に縫い付けるように剣先を刺し込んだ。流石に悲鳴までは上げなかったが、顔は苦痛に歪む。
「わたくし、気が長い方ではありませんの。それに、商品に手を出した時点で許す気はありませんわ。」
「だったら、早く殺せよ・・・」
ウノトスは馬鹿にするように、というよりは自嘲気味に口の端を歪めた。
「!!・・・」
その姿を見たメイニは、隣の指の爪を剣先で弾き飛ばす。だがウノトスは喰いしばって睨むだけで、肝心な事に関しては口を開こうとはしない。
「何の義理があって黙ってんだよ。」
「・・・単に、俺がそうしたいだけだ。お前の言う通り、俺だって我慢出来ない。だが、それでも俺がそうしたくないだけだ。」
ただの自尊心かよ。そんなもの、便所にでも捨てりゃいいのに。
「待て待て、ここは俺に任せろ。」
再び剣を構えたメイニを、俺は慌てて止める。
「何か手がありますの?」
「あぁ。ちょっと試したい事がある。」
俺は言うと、鞄から小瓶を取り出した。こんな事態を予想して、一応準備してきたんだが、試す事になるとはな。
「出来れば、使いたくは無かったんだが・・・」
「毒か、今更そんなもので・・・」

俺が出した小瓶を見て、ウノトスは言うが、これは別に毒じゃない。
「いや、花から抽出したフローラルな香りだ。」
「ふろーらるって何だ?」
「犬は黙って鼻でも塞いでろ。」
「だから犬じゃない!」
まぁ、エリサは無視してだ。俺は息を止めると、ほんの少しだけ液体をウノトスの鼻下に付ける。
「な・・・なんですの!?それは!」
「ご、ご主人が猛毒を・・・うっ・・・」
メイニが驚愕の表情をして、エリサが鼻を抑えながら倒れた。ユアナは何も言わないが、不快感を隠さずに俺から離れていく。
「うぇ・・・おぅぇぇぇっ・・・」
汚ねぇな。
「吐いたぞ。」
「ふざけてますの!」
嘔吐したウノトスを指差しながら言ってみるが、怒られた。

ラフィノアという花が存在する。それはもの凄い悪臭、というか死臭を放つらしい。俺は実物を見た事は無いが。その花から作り出したこの液体は、濃縮されたようにドロッとしていて粘着質だ。
こいつを見付けた時、知識はあったがどれ程のものか分からず臭いを嗅いだ。まぁ、当然吐いたが。意識が飛びそうなかなり強烈な臭いに何の使い道があるんだよと思ったが、こういう事だな。
実は物凄い効能がある、なんて知識は無かったんで、多分薬としては使えないんじゃないか?尤も、まだ俺が知らないだけという事も十分有り得るが。それはギルドで検定を受けた時に分かっている。俺の知らない知識もまだまだあるんだと。

「痛みは気合で耐えられる。そのうち気絶するかもしれないしな。血を流せば失血死の可能性もある。だが、臭いは頑張っても無理だろ?呼吸はしなきゃならないもんな。」
俺は鼻を塞ぎながらウノトスに言う。いや、塞いでも臭いんだがな。
ただ腕の動かないこいつは、鼻下に付いた液体をどうする事も出来ないだろう。生死に関わるもんじゃないが、劇物指定の薬品でもいいと思う。
「ふ、ざけ・・・ぶほっ・・・」
・・・
喋る事もままならなくなっちまったか。失敗だったか?
「時間は十分ある。臭いで狂うか、相手を道連れにするか。」
あ、そんなに時間は無いか。だが、この臭いに2時間も3時間も耐えられはしないだろうと思う。
「うっ・・・言えば、拭きとってくれるぶほっ・・・」
余程きついらしい。
だが効果はあったようだ。若干涙目になりながら弱音を吐いたウノトスを見ると、少し可哀想な気がしないでもないが。
「誰ですの?」
「カーマ・・・エーレン・・・」
カーマエーレン?
「誰だそりゃ?」
「わたくしも知りませんわ。」
おい。
「・・・ルド・・・-のひと・・・」
その時、ユアナの言葉が微かに聞こえた。が、何を言っているか分からない。よく聞こえないのは、かなり離れているからだろう。それで鼻と口を腕で塞いでいるんだから、聞こえるわけがない。
「聞こえないから近付いて来いよ。」
「え、イヤ・・・」
嫌、じゃねぇよ、ふざけんな。
「寝ている間に塗るぞ。」
「それをやったら鬼畜以外の何物でもないわよ!」
うっせぇ。
しかも声を張れるじゃねぇか。
「ギルドマスターの一人って言ったのよ。」
は?
いやいやいや、マジで?
「それなら、わたくしが知らなくても当然ですわ。ギルド関係は手を出しておりませんもの。」
まぁ、メイニの事情は知らんが。

「完全には取れないが、約束だからな。」
俺はウノトスの鼻下に付いた液体を、ウノトスの服を破って拭き取る。
「甘いガキだ・・・」
うっせぇ。そこまで腐ってねぇよ。単に俺の寝覚めが悪くなっても嫌だからやっただけだ。
「本当ですの?」
横ではメイニがユアナに向かって確認する。
「あぁ。だから、言ったところでどうにかなるもんじゃねぇ。」
代わりに答えたのは、ウノトスだった。手が出せないという意味なのかもしれないが。
アイエル支部のギルドマスターはどうか知らないが、少なくとも本部で会ったギルドマスターはかなりの曲者だった。その地位がありつつこんな事をする奴なんて、もっと質が悪いに決まっている。
それを肯定する様に、ユアナが頷く。元本部勤めが頷いたなら、信憑性は高い。
「わたくしに手を出したのだから、ただでは済ましませんわ。」
だろうと思ったよ。
「やれるものなら、やってみるがいいさ・・・」
「当然ですわ。」
あぁ、きっと俺も巻き込まれるんだろうな。
「さて、知りたい事も聞けましたし、此処にもう用はありませんわね。」
メイニは言うと、剣を持っている手に力を込めた。俺はメイニに手を出して止め、先に出ていろと促す。
「以前とは違いますわよ。」
「分かってるよ。単に俺がもう少し聞きたい事があるだけだ。」
「分かりましたわ、譲りますので、早く済ませなさい。」
「あぁ。ユアナも、エリサを連れて外で待っててくれ。」
「分かったわ。」

「まだ何か用かよ。」
ウノトスと二人になると、直ぐに問い掛けが来た。
「何で、話す気になったんだ?お前の態度なら、黙ってられそうなもんだがな。」
臭いは我慢できないだろうとは言ったが、拷問に耐えるような奴は何も言わずに死んでいくだろう。だから、気になって聞いてみる。
「ただの気紛れだ。」
「あっそ。」
「利害関係の一致。だから、お前の言う通り何の義理もない。俺だけと思うと馬鹿らしいが、こんな目に遭わせてくれたお前らが返り討ちに遭うのも一興だと思っただけだ。」
まぁ、それが当たり前っちゃ当たり前の反応な気はするな。自分だけやられるのも、面白くねぇ。
「殺るなら、早くしろ。俺はもうこの臭いにはうんざりだ。」
よく言うよ。
「苦しい方と、苦しくない方、どっちがいい?」
「それ、聞く意味あるのかよ。好き好んで苦しい方を選ぶ馬鹿が何処にいるんだ・・・」
呆れた目をしてウノトスは言うが。
「世の中、苦しい方を好む奴も居るんだよ。」
「理解できねぇな。」
「まぁな。で、苦しい方だったな。」
「このクソガキ・・・」
俺が笑って言うと、ウノトスも笑って言った。俺はそのまま、ウノトスの首筋に針を刺し込んで、直ぐに抜く。
「甘いガキだ・・・いつか、足元を掬われ・・・」
言いながら虚ろな目になったウノトスは、それ以上言葉を発する事が出来なくなり、やがて瞳から色が失われた。
「別に、それならそれまでってだけの事だ。」
それだけ言い残し、外で待っているメイニ達に合流するべく俺は部屋を後にした。

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