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争奪戦勃発!?

52.俺が闘いたいわけじゃないんだが

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「うぉわっ!」
「しっ。」
・・・

その日の夜、店を閉めようと外の看板を引きに出たのだが、扉を開けた先に布に包まった何かが居た。そりゃ驚くだろう。
よりにもよって五月蠅いと指図までしてくる始末だ。死ね。
「じゃ、そういう事で。」
「待って待って、話しを聞いてよ。」
見なかった事にして店の扉を閉めようとしたが、足を滑り込ませて阻止してきやがった。まるで借金取りのようだ。
「俺は忙しいんだよ。」
「昼間言ったでしょ、ちゃんと奴等の情報を仕入れたんだから聞いてよ。」
「徘徊老人じゃねぇだからこんな時間に来るな。」
「しょうがないでしょ、昼間出歩き難くなったんだから。」
「自業自得だな。」
「いいから入れなさいよ。」
と、強引に扉を開けて店内に入り込むディディ。流石に力じゃ勝ち目がない、くそ。
「あのね、奴等は昔から因縁があるみたいなの。」
・・・
「お前ら王族に寄与している貴族が、まるで悪者のような言いっぷりだな。」
「え、実感無いし。」
この国もディディの代で終わるだろう。そうとなれば、今のうちに自分の立場はしっかりと確立しておく必要があるな。王族が滅びようと、変わらぬ生活が出来るように。

「で、因縁ってのは何なんだ?」
仕方が無いので、カウンターに移動して座ると、話しを聞く事にする。向かい側に座ったディディは、どこか疲れたような顔をしていた。
いや、どうでもいいが。
こんな時間に徘徊して疲れた顔をされてもな、知った事ではない。
「実はね、彼らが揉めるのはあたしに始まった事じゃないらしいの。」
ふーん、興味ねぇ。
「調べて来いって言ったのはリアでしょ、何その興味無さそうな顔。」
無さそう、じゃなくて無いんだよ。
「いいから続けろよ。」
俺の態度云々での会話は時間の無駄だ。
「むぅ。でね、貴族院が管理している貴族用の学校があるのよ。」
また面倒くせぇ。
学校って事は、学生時代からそいつらは喧嘩でもしていたのか。
「貴族院が管理していると言っても、学生は貴族も普通の国民も関係なく利用出来るの。そこで、彼らが初等学室に通っていた時にね。」
初等って・・・
ガキの頃からの関係って事か?いや初等がガキかどうかは分からないが、言葉的には小学生くらいのイメージだな。だったらバカじゃねぇの、そいつら。寄与どころか寄生の間違いなんじゃねぇのか?
「ある時、商人の娘が入学してきた時ね、二人とも一目惚れしたそうなの。」
・・・
死ね。
「そいつらの爵位剥奪で良いじゃねぇか。」
「だから!理由が無いでしょ理由が。あたしが関与している事は知られたくないから相談しているんでしょ。」
あぁ、そんな話しだったな。それに、知られたくないも何も、既に出回ってるんじゃね?

「でね、それまでは隣同士の領で仲の良かった二人が、どっちが先に好きになったかで喧嘩を始めたのよ。」
え・・・
まだ続くのかよ。もう分かり切った事じゃねぇか、その先の展開なんて。
「可憐な少女を好きになって、友達同士で同時よ。そして取り合いの喧嘩なんてロマンスよねぇ。」
・・・
何しに来たんだよこのアホ女。
お前の頭の方がよっぽどロマンに溢れてるわ、もうこっちに帰って来るな。
「そういう話しには興味が無いのでお引き取りを。」
「待ってよ!脱線して悪かったわ・・・いや、脱線はしてないよ?」
何故疑問形。
「結局、少女は父親の都合で引っ越したんだけど、それからというもの、年をとっても好きになる人は同じで、喧嘩ばかりしているんだって。」
そうだろうよ。
そんな危ねぇ奴等が、爵位を持っている事に疑問を感じろよ、何なんだこの国は、滅びたいのか?
「そこだけを切り取れば、まぁ子供の恋心で済む話しなんだけど、大人になって力を持ってまでとなると問題よね。」
まったくその通りだな。本人同士の喧嘩ならそれでいい。お互い納得して決闘でもして勝手に死んでくれれば万事解決だ。
「切り取れば?」
「前も言ったでしょ。彼らがそこまでして不問にされているのは、それ以外は貴族としての立場を弁え、貢献しているからよ。」
・・・
何て面倒くせぇ奴等なんだ。まともだった王女は現在このアホだ。そのアホの所為で貴族が一触即発・・・

「よし、この国を出よう。」
「待ちなさい。何を阿呆な事を言っているの。」
お前にだけは言われたくねぇわ。阿呆どころか至極現実的な選択だっての。
「え、だってこの国に未来を感じない。」
「だから相談に来ているんでしょ。」
相談されても困る内容なんだが。
「生前にこんな言葉があった、覚えているか?馬鹿に付ける薬は無い。」
「・・・え、諦めないでよ。言いたい事は分かるけど。」
諦める諦めない以前の問題なんだが。
「あたしの事を見捨てるの?」
「うん、俺は困らないし。」
「ひどっ。なんかさ、リアってあたしにだけ冷たくない?」
そんな事はない。
「いや、俺は普段からこのまんまだが。一緒に居る奴は多分、利害が一致しているからだろうよ。」
俺が態度を取り繕おうと思うのは、メイニくらいだな。
「そうなの?」
「あぁ。」
「そう言われると、何も言えないけど。それで、何か良い方法ってないかな。」
と言われてもなぁ。
「争いの種が無くなればいいわけだろ・・・」
「あたしを消す以外の方法でね。」
いや、それはとっくに選択肢には入ってない。そもそも、発端がそいつらの馬鹿さから来ているなら、要因の一つとは言えディディは問題じゃない。
「ディディが居なくなったところで、また同じ問題が勃発する。それじゃ解決にはならんだろ。」
「言われてみれば・・・」
そこそこ深刻な問題ではあるな。ディディもそれには気付いたのか、顎に手を当てると眉間に皺を寄せて考え込む。

「そうだな、ユアナに協力してもらうか。」
「え?受付の?」
俺が口にした内容に、ディディは疑問を表情に浮かべて確認してくる。
「あぁ。」
「えぇ、他にも知られちゃうじゃない。」
どの口が言ってんだ。
「家に来て話している時点で、筒抜けだ。」
「げ・・・」
アホか。
「まぁ、そこはもう仕方が無いか。で、どうするの?」
「過ぎた思いは身を滅ぼすって覚えてもらわないとな。」
そいつらのくだらない争いには、くだらない顛末がお似合いだろう。
「?」
「内容は後で説明する。ちょっと薬を作るから時間が欲しいんだ。上手く出来たら方法について説明するよ。」
「それはいいけど、あまり時間はないよ?」
「分かってるさ。」
いつ始まってもおかしくはない、そうは言えど牽制程度だろう。本当に戦闘を始めたら人死には出るし、関係無い住人にまで迷惑が掛かる。そこはそいつらも弁えていると信じたい。
だから、簡単にはぶつかり合わないと。
「一応、俺がそいつらに面会出来る段取りだけ頼むわ。」
「うん、分かったけど、何を目的に?」
「俺は薬屋だぜ?薬の売り込みという名目以外に何があるんだよ。」
「そうね。でも、会ってくれるかな・・・」
なんの為に伝手を作ってきたと思ってんだよ。
「そのためにディディやユーリウスが居るんだろうが。俺だけじゃどうにもならないが、王室に出入りしているとか、ユーリウスの紹介とか、どうにでもなるだろ?」
「おぉ、なるほど。」
ディディは掌をぽんっと打って納得した。
「薬屋と仲良くなれば、表立って言えない様な薬も手に入れられるかも?程度に煽っても効果的じゃねぇか?」
「あ、それいいね。使っちゃお。」
・・・
大丈夫かな、なんか不安になってくるな。
「日程は後日話すとして、打診だけはしておいてくれ。」
「うん、分かった。もしかすると、それを考慮して直接のぶつかり合いは留められるかもしれないし。」
可能性としてはな。
「それじゃ、また来るね。」
「あぁ。」

さて、ユアナには寝る前に話しておくか。ディディを店の外に出し、鍵を掛けるとそう考えて部屋に向かう。
まだ前段程度だが。アホ貴族どもを相手にする前に、こっちにはもう一つ課題があるからな。まずはそっちを片付けないとならない。



-二日後-

「よぉホージョ、前に言った通り、今日は少し騒がしくなるが気にしないでくれ。」
「分かっておる。しかし、ドラゴンと闘うとは本当に物好きよな。」
俺は別に闘いたくねぇんだよ。
「闘いたいのはエリサだけだからな。」
背後で気合を溜めているエリサを、親指で示しておく。

他に広い場所も思いつかなかったので、黒龍との決戦はこの場所を指定した。あの約束から10日。エリサの進化に関しては、変化無しとしか言えない。
10日後とは言ったものの、現地で一泊して移動して戻るまでを考慮していなかったのは誤算だった。実質半分くらいしか時間を費やす事が出来なかったのだから。それで何か変化するかと言われても微妙なところだ。
とりあえず、エリサは精神論でなんとかするしかない。

「今日の詫びと言っちゃなんだが、今度此処で宴会でも開こうと思ってんだ。」
「まことか?」
「あぁ。」
「それは楽しみだな。」
まぁ、バーベキュー的なやつだが、そう言ったところで通じはしないだろう。
「肉を焼きながら食う。」
「・・・我らもよくやっていた事だが、宴会になるのか?」
・・・
文化の違いってやつだな。焚火で焼いて食うとか、こっちの世界じゃ当たり前か。
「違うんだって。やってみたら分かるから、楽しみにしておけ。」
「うむ、リア殿がそう言うのであれば、楽しみにしておこう。」
普段から任せっぱなしだからな、労いの意味も兼ねて丁度いいだろう。この場所は周りに何も無くて、バーベキューには丁度良さそうだしな。
「ちなみに肉の種類はエリサ次第で変化する。」
「なぬ!?」
お、反応しやがったなアホ犬め。
「エリサが狼化を解除されなかった場合、通常の肉から高級肉に変化するぞ。」
「ほんとか!?」
「あぁ。この前のより良い肉だぞ。」
「あ、あれより、旨いのか・・・ぉぉぉおお!任せろ!」
うむ。
とりあえず精神強化は完了だ。
「もし、あたしが倒した場合は何が出るんだ?」
「いや、倒すなよ。」
期待の眼差しで見られても何も出ねぇよ。むしろ倒されたら俺が困る。
「うっかりという事もあるぞ。」
ねぇよ。
「この国をやろう。」
「え・・・要らない、邪魔。」
いきなり興味が無くなり色を失った目で、無表情で答えるエリサ。
あぁ、それは同感だ。が、エリサと同じというのは癪に障るので黙っておく。とりあえず、現状のエリサは今まで以上に気合が入っているから、何とかなりそうな気はするな。
後は奴が来るまで維持出来ればいいんだが・・・そう言えば、時間は指定してなかったな。すっかり忘れていたよ。
「今から気合入れていると、来る前に疲れるぞ。」
一応、釘は刺しておくか。
「大丈夫だぞ、今のあたしには肉神の加護がある!」
・・・
なんだよ肉神って。
アホか。

エリサは何を言ってもダメそうなので、とりあえず一服する事にする。どうやら高級肉の与える効果が、限界突破した様で何よりだが。
パンクしなきゃいいけどな。
「あ、どうも。」
アホ犬はやっぱアホだなと思って眺めていると、横から声を掛けられる。未だに余所余所しさは残ってるんだよな。
「順調か?」
「もちろんです。近々まとまった量が出来上がりますよ。」
「そうか、そいつは楽しみだな。」
ただ、マールの顔は前よりも明るくなって、やる気を感じられた。
「折角だ、吸っていけよ。」
「はい、お言葉に甘えて。」
隣で紙巻に火を点けて吸うマールを見て気になった。様になってないってのもあるが、キツイんじゃねぇかと。
「煙管、お前も要るか?」
「え?・・・あの、欲しいです。」
俺が使っている煙管を見てから、遠慮がちにマールは言った。
「やっぱり、煙管の方が吸いやすいですか?」
続けて言ったその言葉からは、やはり紙巻だとキツイのかも知れない。ただ、吸いたいという思いはあるのだろう。
「まぁな。こっち方が少しマシ、程度だけどな。あと、煙管の方が雰囲気出るだろ。」
「そうですね。」
「じゃ、今度頼んでおくよ。」
「ありがとうございます。」
マールは、少し笑顔を見せながら言った。今の環境にも、俺たちにも、少しは馴染んだのだろうか。
ここでもう一人お前が殺った人間を見付けたとか言うのは、流石に無粋か。当の本人は気にせず、今を謳歌してやがるからな。まぁ、機会があったらでいいか。繋がりを持っちまった以上、何処かで鉢合わせるのは間違いないだろうから。

「そろそろ休憩も終わりのようだ。」
丁度、煙管に詰めた煙草が燃え終わったくらいだった。一瞬影が横切ったので、空を見上げると大きな漆黒の翼を広げ旋回している黒龍が目に入る。
「え、本当に、あんなのと闘うんですか?」
空を見上げた俺に釣られ、マールも見て驚愕の声を出す。
「いやだからな、俺は闘いたくねぇんだよ。どっかのアホ犬が闘いたいだけだ。」
「でも、一緒には行くんですよね。」
「そうだな。」
「死なないで、くださいよ。」
・・・
なんか、こいつに言われると複雑な気分なんだが。ただ、真っ直ぐに向けられる真面目な顔と、案じているような瞳は嘘ではないのだろう。だから余計に、なんだが。
「分かってるよ、俺にもまだ野望はあるからな。」
「ご主人!行くぞ!」
「そんなに急がなくても逃げねぇぞ。」
工場から離れた、広い草原にゆっくりと降り立つ黒龍を見ながら、エリサが気合の入った声を上げ走り出した。それに続いて俺も歩き出す。



黒龍に近付くと、エリサは上を見上げて黒龍の顔を睨んでいた。以前は横になっていたから実感は無かったが、座しているとは言え首を上げた状態はかなり大きい。頭の位置なんかビルの3階くらいに感じる。
考えて無かったが、こんな大きな物体が空を飛んでいたら、街とかで騒ぎになってねぇかな。竜が近くに降りたぞ、とか騒ぎになってたら俺の所為じゃねぇか。
「わざわざ来てもらって悪いな。」
ま、今更気にする事でもないか。
「何、儂にとってはただの一興。」
黒龍は俺を見て言うと、更に視線を背後へと動かす。後ろには工場があるだけなんだが、まさか?
「変わった人間よな、他種族と交流を持つなど。」
なんだ、その事か。いい加減聞き飽きてきたな。
「いや、愚考よな。儂と話そうなどという酔狂を起こしておるのだから。」
おぉ、自己完結しやがった。面倒くせぇと思っていたから助かる、伊達に長生きはしていないな。
「ま、俺にとっちゃ人生面白ければそれでいいってだけの事だ。」
「ふむ。なるほど・・・」
黒龍は器用にも前足を顎に当てて首を傾げた。何を考えているか、皆目見当もつかないが。
「話しは後にして、あたしと勝負だ!」
待ちきれなくなったエリサが、黒龍に向かって指を突きつける。
「そう言えばそうだったな。わざわざ猶予を作ったのだ、変化が無ければ暇つぶしに殺すかもしれんぞ。」
黒龍はエリサを見ると、目を細めて声を低くした。同時に降りかかる圧力は、寒気がして息苦しくさえあった。
(睨まれただけでこれかよ。相手にするとか馬鹿じゃねぇか。)

「ふふん、今のあたしには肉神がついているんだからな!」
・・・
本気で言っているのか、あれ。
だが、黒龍の威圧もエリサは平気そうだから、何でもいいか。エリサは言い終わると直ぐに狼化を始める。それに対し、黒龍はさらに目を細めた。獰猛な瞳孔がエリサを捉えるが、エリサも眉間に皺を寄せ、犬歯を剥き出しにして目を細めている。
・・・
が、黒龍の方は見ていないようだった。
虚空を凝視してやがる。
何か、違うものと闘っている感じだな・・・
「ほう。言うだけの事はあったようだな。」
黒龍は俺を見て言った。どうやら今のエリサの状況は見透かされているようだ。
「儂と目を合わす必要は無い、精神に働きかけるのだから。故に、どんな手だろうと耐えたのは賞賛しよう。」
なるほど、目を合わせようが合わせまいが関係ないってわけだ。とりあえず肉に集中させたのは正解だったわけだな。
「ふふふ、さぁ行くぞ!」
エリサも理解したようで、四肢を撓めて不敵な笑みを浮かべて言う。やっと闘える事に、歓喜でも湧いてきたように。
「良いだろう。」
「一応言っておくが、殺すなよ。」
「分かっておる、違える事はせん。」

エリサは一足飛びで黒龍の懐に飛び込むと、腹部に向かって爪を振り下ろす。鉄も引き裂けるようになったのだから、当たれば傷くらい付けられる一撃だろう。
だが、黒龍も置物ではないから、前足の爪一本でエリサの攻撃を受け止めた。直後、金属のぶつかり合うような甲高い音が響き渡る。

待て待て、金属!?
爪と爪だよな?
は?

エリサは爪を退くと直ぐに横に跳んだが、黒龍の背後から飛んで来た尻尾に殴打され、真横に吹っ飛んだ。痛そう。
思った以上に黒龍の動きが速い。あの巨体で、小さく速く動き回るエリサを捉えるのだから恐ろしい。
吹っ飛んだエリサは、四肢を使って地面を蹴り飛び上がって軌道を変える。着地と同時にまたも黒龍へ向かい、爪を振り被った。それに合わせ黒龍がまた爪を出したが、エリサは攻撃せず跳躍した。アホ犬の癖に多少は頭を使っているようだ。
だが、黒龍の顎を捉えそうなエリサの爪は、黒龍が頭を退いた事で空を斬り裂く。黒龍はその時、既に大きな口を開けていた。

まさか、ブレス!?

と思った瞬間、またもエリサが吹っ飛ばされた。
確かにブレスだけどさ、息ね。俺はてっきり焔とか吐き出すのかと思ったよ。
空中で態勢を変え着地したエリサは、またも一直線に黒龍に向かって行った。元気な事で。


「はぁ、はぁ、もう・・・動けないぞ。」
狼化が解除され、仰向けになって地面に転がるエリサが、息を切らせながら口にした。あれから10分くらいだろうか、大して時間は経っていない。それでも全力で動き回っていたのだから、呆れた体力と言える。
「気は済んだか?」
「うん、あたしじゃ、無理だ。」
始めから分かっていた事だろうが。
「付き合ってもらってありがとな。」
「うむ。儂も久々に戦闘というものを楽しんだ。良い暇つぶしにはなったぞ。」
そうか。普段は殺すだけの戦闘だったんだよな。
「そういや、あんたの名前を聞いて無かったな。」
「それを聞く事に意味はあるのか?」
意味・・・ねぇ。確かにそれを求められると答えは無いが。
「呼び難い。」
「くっくっく、愉快な奴よな。久しく口にした事も無かったがまぁいい、オーレルリンデだ。」
もっとごつい名前を期待していたんだが、意外とアレだな。
「俺はリアだ。」
「あたし、エリサ。」
「リアとエリサか。気紛れ程度に、お主らが生きている間は覚えておくとしよう。」
別に覚えなくてもいいが、聞いておいて自分が名乗らないのは失礼だから言ったまでだ。エリサの我儘に付き合ってもらったのもあるし。

「ところで、前に言ったギルドの件なんだが。」
戦闘の事で頭がいっぱいになっていたが、ふと思い出した。前回の去り際に、黒龍に言った事を。俺がギルドに掛け合ってみると。
「駄目だったのだろう?」
と、黒龍は知っていたかの様に言った。その声は覇気も無く、諦めを含んでいたように聞こえたのは、俺の気のせいだろうか。
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