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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
45 切なさ
しおりを挟む十九歳おめでとう。
……って、言えなかった。
目が覚めたら身体はきれいになってて、朝ごはんもできていて、いつもどおり二人に食べさせてもらって、エルが淹れてくれたお茶を飲んでから、またベッドに連れて行かれた。
何か考えるよりも早く、二人の手にまたわけがわからなくなってしまって。
お昼ごはんもエルが作ってくれた。
お昼のあとのお茶は、珍しくディーが淹れてくれた。
……なんか。
こんなに、二人のことしか考えない日…って、神官になってから初めてかもしれない。
あ、女神さま。
朝のお祈りもできてない。
それくらい、僕の中は二人のことでいっぱいになってる。
好きって気持ちは、上がない…っていうのかな。どんどん感情が溢れていく。好きで好きでたまらない。
……どうして僕、二人と離れて生活できてるんだろう、とか。二人がいないのに、どうやって生活してきたんだろう、とか。
二人の傍で、生きていたくて。
「フィー?」
ディーの手は少しゴツゴツしてるのに、優しく僕に触れる。
「泣いてるの?」
エルの手は細くてしなやかで、優しく僕に触れる。
……僕の手は?
二人に、届いてる?
「泣くな」
こぼれた涙は、ディーの唇が拭ってくれた。
「どうしたの。寂しい?」
伸ばした手はエルが握ってくれた。
「どこにもいかないで」
僕の傍にいて。
「いかないさ。俺達はフィーの傍にいる」
「どこに行くっていうの。フィーがここにいるのに」
二人からキスを贈られて。
なんだか、やっと、胸のつかえがとれて。
そのまま僕はまた眠った。
なんか、ちょっと、切なくなったのは、もしかしたら、南町で旦那さんを亡くしたあの女性に会ったからかもしれない。
それから、考える時間がたくさんあって。
神官が嫌なわけでもないのに。
二人は僕が手を伸ばしたら捕まえてくれる場所にいるのに。
考えすぎちゃったな……って。
贈り物も、考えてないのに。
贈り物。
「……贈り物……!!!」
飛び起きた、ら、知らない部屋だった。
「………ここ、どこ……?」
ふかふかのベッド。広い部屋。テーブルの上に置かれた、水差しと一口大のお菓子数種類。
……それから、すごく、ひらひらした、服?着てる。
「ディー……エル……?」
いない。
神殿で目が覚めてから、ずっと傍にいたのに。
ドキンドキン…って、心臓が鳴る。
「ディー……、エル」
ふかふかのベッドから降りた。
少しだけ足が震える。
足元は、やっぱりふかふかの絨毯が敷かれてて、裸足でも痛くない。
ベッドと、テーブルだけの部屋。
扉が、いくつかあった。
窓の外、暗い。
天井に吊り下げ式の細工の施されたランプがついていて、部屋の中は明るい。
……ほんとに、どこ、ここ。
扉の一つに手をかけようとしたとき、いきなり開いて。
「「あ」」
両手に一杯色々持ったディーとエルが、いて。
「ディー!エル!」
荷物あるのに、抱きついてた。
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