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第十九話

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「リーダー、索敵から連絡が。護衛の奴らがこちらに向かってきているそうです」


「何?痕跡は完全に消したはずだが…まぁいい急ぐぞ」


 マリーを抱えた黒ずくめの集団は走るスピードを速くする。しかし着実に護衛たちは距離を詰めてきていた。そして遂に互いに目で認識できる距離まで近づいていた。



「ッチお前ら戦闘準備だ!」


 黒ずくめの集団のリーダーが合図をするのと同時にリードも護衛たちに指示をする。


「マリーはもう目の前だ!奪還するぞ」


 こうして乱戦が始まった。黒ずくめの集団は実力の面ではかなりのものだが護衛たちはそれを上回る。


「リーダー!このままではまずいです!!」


「喋ってないで全力で戦え!国境はもうすぐだ、このまま逃げ切るぞ!」


「させるか!!」


 黒ずくめの集団のリーダーにリードが切りかかる。リーダーはマリーを抱えているため体制を崩しその隙に数人の護衛に囲まれてしまう。


「はぁ…はぁようやく捕まえたぞ。マリーは帰してもらう」


「フッハハハハハハハハ。いいぜ返してやるよ」


 リーダーは抱えていたマリーをまるで物のように投げる。周りが突然のことに一瞬反応が遅れる中リードだけが即座に動く。投げられたマリーがリードに抱えられた瞬間マリーの姿が消えてしまった。そして残っていたのはタヌキの姿をした魔力の塊だった。



「偽装魔法!?おい本物のマリーはどこだ!!!」


「そんなに声を荒げんなよ兄ちゃん。もう全て終わったんだからよ。本物の女は別動隊に運ばせた。今頃は国境を越えているだろう」


 リーダーの言う通り別動隊は既に国境を越えリードたちには手が出せない状況になっていた。



「ルド、いるか」


「はい、ここに」


「今から国境を越える。ついて来い」


「リード様、それは重大な違反行為です。許容することは出来ません」


「いいから黙ってついて来い!!」


「なりません。貴方様には立場がある。許容することは出来ません」


「…黙ってマリーを見捨てろと?」


「いいえ、そう言うわけでは御座いません。リード様本日限りで貴方様の護衛及び私がついている役職全てを辞任させて頂きます。これから私がどこに行こうと貴方様は関与しない」


「ルドお前…」


 ルドの言っている事の裏を読めたリードは驚愕せずにはいられなかった。リードは今まで付き添って来た右腕をなくすことになるからだ。ルドはリードの耳にささやき声で喋りかける。



「私は私の出来ることをします。貴方様は王子として出来ることをお願いします」


 ルドの言葉を聞いたリードは覚悟を決めた。



「ルド、貴様の辞任を許可する。好きに生きろ」


「ご武運を」


 立ち去るルドを見つめながらリードは冷静さを取り戻し打開策を考えるのだった。
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