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2章-学園入学と大事件-
58話 後日談1 暗躍する者
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―――side???
四方を石造りの壁に覆われた薄暗い部屋の中、黒いフードを被った人物が怪しげな色をした液体をかき混ぜている。男性特有のゴツゴツとした手や細く引き締まった腕がローブの袖から見え隠れしており、この人物が男であることが窺える。
何か異変でもあったのか男がふと手を止めて周囲を見渡すと、部屋の隅に置いてある水晶から女性の声が響いてきた。
『今いいかしら~?』
「なんだお前か…どうした?
定期連絡にしては随分と早い気がするが」
『いやね、計画に大きな支障はないんだけどちょっと動きがあったから報告をと思ってね。
ヨシュアにかけてた契約が切れたわ。屋敷の方にも騎士が来ていたし恐らくはベルクト家はもう終わりでしょうね。ああ、本人は魔物になって討伐されたし、私たちの拠点に繋がりそうなものは全部回収してあるから、そこは安心していいわよ』
どうやらこの2人はヨシュアの真相を知るもの、というよりヨシュアが魔物に変化した元凶のようだ。
「ヨシュア…?ベルクト家という事は…ああ、あの失敗作を与えた奴か。スキルは有用だったが、自身の欲を満たすのを優先しすぎるから大して期待はしていなかったんだが。まあ、思ったより持った方か?
それで、何になったんだ?」
『まあそうね。いい感じの資金源にはなってくれていたけど、それも私がサポートしてたお陰だしね。
あいつ、隠すのはスキル頼みだし態度でバレバレだったから、そう遠くはないうちにこうなると思ってたわ。
変化したのは多分ナイトメアね。完全なデバフ型で本来とはだいぶ違ってたけど。ステータスは一部のアビリティだけだけど少し残ってたわね』
「そうか。失敗作ではあるが一部とはいえ目的の効果は得られていたか。ならこれまで通り改良をしていけば良さそうだな。
それで今後はどうするんだ?あのスキルが使えんとなると今までよりも慎重に事を進めなくてはならん。
まだ本命の発動には準備が必要だし、奴らでも煽って目を逸らさせるか?俺は薬の改良もあるから動く気はないぞ」
『そうねー…でももう少ししたら競技会なのよね。それが終わったら建国祭に品評会と色々イベントがあるし…
うーん…しばらくは準備に専念していて頂戴。
あの子が参加するかはわからないけど、参加するならちゃんと楽しんで欲しいからね。初めて出場者として参加する祭りが台無しになっちゃったら可哀想だしね。
あいつらに接触するのは少なくとも1年は後かしら』
「そうか。
まあ、あいつらを動かすのも準備がいるしな。本格的に事を起こせるようになるのも接触してから1年くらいはかかるだろう。なんにせよ了解だ」
『あら?今回は随分と素直ね?いつもはもっとごねるのに』
「…それはお前が従属薬だのなんだのとくだらないものばかり頼んでくるからだ。
俺もできれば準備に専念したいんだ」
『最初に作ったのは貴方じゃない。私はそれを見て頼んだだけよ?』
「…目的のために使えるかと試しに作っただけだ」
『女神の方ならまだ理解できるのにただの依代に執着するなんて、あなたも難儀な性格してるわよね~…』
(依代になったせいで大した力も残ってないっていうのに)
「ふん、勝手に言ってろ…それで、そっちの方はどうなんだ?奴がまだ生きていると言ったのはお前だろう。あれからなんの成果も出ていないぞ」
『それねー…ちょっと前に存在自体は感知できたわよ?ただ、詳しい場所まではまだ分からないわね』
「!!
ほう…そうかそうか、やはりまだどこかに潜んでいるんだな。必ず見つけ出してやる…その時を待っているがいい…サラ・フローウェン!ふははは……!」
『あらら…まーたトリップしちゃったわね…いつもの事だし慣れてるけど』
(ふふふ、それにしても今回はあの子にとって結構大きめのイベントになっちゃったかしら?
でもこれくらいしてあげなきゃ折角の人生が平坦でつまらないもので終わっちゃうものね。
もちろん仕事はちゃんとするけれど…)
『これからも私があなたの人生を彩ってあげるからね?
…―私の可愛い“弟“くん…♪』
四方を石造りの壁に覆われた薄暗い部屋の中、黒いフードを被った人物が怪しげな色をした液体をかき混ぜている。男性特有のゴツゴツとした手や細く引き締まった腕がローブの袖から見え隠れしており、この人物が男であることが窺える。
何か異変でもあったのか男がふと手を止めて周囲を見渡すと、部屋の隅に置いてある水晶から女性の声が響いてきた。
『今いいかしら~?』
「なんだお前か…どうした?
定期連絡にしては随分と早い気がするが」
『いやね、計画に大きな支障はないんだけどちょっと動きがあったから報告をと思ってね。
ヨシュアにかけてた契約が切れたわ。屋敷の方にも騎士が来ていたし恐らくはベルクト家はもう終わりでしょうね。ああ、本人は魔物になって討伐されたし、私たちの拠点に繋がりそうなものは全部回収してあるから、そこは安心していいわよ』
どうやらこの2人はヨシュアの真相を知るもの、というよりヨシュアが魔物に変化した元凶のようだ。
「ヨシュア…?ベルクト家という事は…ああ、あの失敗作を与えた奴か。スキルは有用だったが、自身の欲を満たすのを優先しすぎるから大して期待はしていなかったんだが。まあ、思ったより持った方か?
それで、何になったんだ?」
『まあそうね。いい感じの資金源にはなってくれていたけど、それも私がサポートしてたお陰だしね。
あいつ、隠すのはスキル頼みだし態度でバレバレだったから、そう遠くはないうちにこうなると思ってたわ。
変化したのは多分ナイトメアね。完全なデバフ型で本来とはだいぶ違ってたけど。ステータスは一部のアビリティだけだけど少し残ってたわね』
「そうか。失敗作ではあるが一部とはいえ目的の効果は得られていたか。ならこれまで通り改良をしていけば良さそうだな。
それで今後はどうするんだ?あのスキルが使えんとなると今までよりも慎重に事を進めなくてはならん。
まだ本命の発動には準備が必要だし、奴らでも煽って目を逸らさせるか?俺は薬の改良もあるから動く気はないぞ」
『そうねー…でももう少ししたら競技会なのよね。それが終わったら建国祭に品評会と色々イベントがあるし…
うーん…しばらくは準備に専念していて頂戴。
あの子が参加するかはわからないけど、参加するならちゃんと楽しんで欲しいからね。初めて出場者として参加する祭りが台無しになっちゃったら可哀想だしね。
あいつらに接触するのは少なくとも1年は後かしら』
「そうか。
まあ、あいつらを動かすのも準備がいるしな。本格的に事を起こせるようになるのも接触してから1年くらいはかかるだろう。なんにせよ了解だ」
『あら?今回は随分と素直ね?いつもはもっとごねるのに』
「…それはお前が従属薬だのなんだのとくだらないものばかり頼んでくるからだ。
俺もできれば準備に専念したいんだ」
『最初に作ったのは貴方じゃない。私はそれを見て頼んだだけよ?』
「…目的のために使えるかと試しに作っただけだ」
『女神の方ならまだ理解できるのにただの依代に執着するなんて、あなたも難儀な性格してるわよね~…』
(依代になったせいで大した力も残ってないっていうのに)
「ふん、勝手に言ってろ…それで、そっちの方はどうなんだ?奴がまだ生きていると言ったのはお前だろう。あれからなんの成果も出ていないぞ」
『それねー…ちょっと前に存在自体は感知できたわよ?ただ、詳しい場所まではまだ分からないわね』
「!!
ほう…そうかそうか、やはりまだどこかに潜んでいるんだな。必ず見つけ出してやる…その時を待っているがいい…サラ・フローウェン!ふははは……!」
『あらら…まーたトリップしちゃったわね…いつもの事だし慣れてるけど』
(ふふふ、それにしても今回はあの子にとって結構大きめのイベントになっちゃったかしら?
でもこれくらいしてあげなきゃ折角の人生が平坦でつまらないもので終わっちゃうものね。
もちろん仕事はちゃんとするけれど…)
『これからも私があなたの人生を彩ってあげるからね?
…―私の可愛い“弟“くん…♪』
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