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サバゲーに行こう!

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「ヒーロは前線が好きだからな。走らせてやれ」

「そうなんですか……」

「フーたちもいくぞ」

「は、はいっ!」

 ゆっくりと前進を開始する。馴れない森の中で、足下ばかりを気にしていると、いつの間にかフーが消えていた。

「あれ? フーセンパイ?」

 きょろきょろ周囲を見渡したが、どこにもいない。音も聞こえない。

 さっと血の気が失せた。

「おう。お嬢ちゃんどうした?」

 すると近くにいた軍人ルックのゲーマーが声をかけてきた。のそのそと姿勢を低くして、音羽の隣にしゃがみ込む。

「とりあえず、背を低くしときな。ここももうすぐ弾が跳んでくるぞ」

 言うと、本当に近くに弾が飛んできて遮蔽物に当たり跳ねた。慌ててその場に伏せた。

「ははは。今日初めてか。友達とかいないのかい?」

「いたんですけど、はぐれちゃって……」

「そりゃ大変だな。装備は、っていってもわからないか」

「はい……」

「じゃあ、おっちゃんが――」

 その男が突然黙って、目を剥いた。

 音羽の隣から、突然長い棒が敵の陣地に向かって、宙空からにょっきと生えてきた。

「くるぞ、アウト」

 ブッ。

 モーターとギア。スプリングがしなってゴムが金属を叩く音。二十五分の一秒での出来事。そして何より、ハエの羽音よりも小さい風を切る音。

 放出された弾丸は、まっすぐにこっちに向かって前進してきていた、敵チームのプレイヤーに直撃した。

「ヒットー!」

 そのプレイヤーは叫んで、そそくさと首を傾げながら退場した。

「なんだ。フーちゃんの友達かい」

「イエス。おじさん、AKはどうした?」

 宙に浮いたように見えるが、よく目を凝らせば、そこに何かいるような気がする。声と黒いエアソフトがないとそこにいるなんて、とても思えない。

「今日はボルトアクションだよ。ちょっと昨日から膝がねぇ。俺も歳だねぇ」

 笑いながら、中腰の姿勢で男は撃つ。やはりこちらも音は小さい。がしゃんとレバーを操作した。

「そうか。アウト。前進しよう。おじさんも」

「おうよー。野郎ども! 行くぞ!」

「おうっ!」

「どこまでも!」

 後方や横の遮蔽物に隠れていた、同じチーム員たちが声を上げた。

「アウト。おじさんたちがつっこむ。向こう側からこっちを撃つ音、聞こえるか?」

 周囲から、まばらにエアソフトを撃つ音が邪魔だが、それでも意識を向ければちゃんと聞こえる。

「聞こえます」

「なら大丈夫だ。ただ避けていればいい。後は、飛んできた方を撃て」

 ずいぶんと簡単に言われたが、そんな難しいことができるとは思えない。

「大丈夫だ。行くぞ」

「野郎ども! とっつげぇえええき!」

「ひーはぁあ!」

「つっこめぇえええ」

「狩りじゃぁあ!」

 そこらじゅうに伏せていた、味方が中腰になって連射を始めた。その内の半数が遮蔽物を飛び出して走り出す。

 怒涛の攻撃。

 その最中、猛烈な銃声に耳を塞いだ音羽。

「ひぅうッ!」

 特に猛烈な音を立てるもの。

 一秒間に何十発も発射するもの。

 機械音を盛大に撒き散らすもの。

 音羽の耳にはそれらすべてが、金鎚で殴打するように耳に飛び込んできた。

「大丈夫だ。落ち着け」

 ふっと、音が小さくなった気がした。
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