32 / 61
サバゲーの頂点に立ちたいでしょう?
09
しおりを挟む「50yardっていうのはデスネー」
尋が説明しようとしたが、その肩を珠希が掴んで止めた。
「オフ状態のあなたは猿以下なのだから、言うよりも体を動かしなさい」
「Monkey!? ひどいネー!?」
ひどいなぁ、ひどいなぁとつぶやきながらも、尋はグラウンドに引かれた白い線の前に立った。
線は横に十人程度が並んで歩けほどの長さがあり、5メートルの等間隔に引かれている。ハードル走のマーキングのようだ。
しかしゴールのおおよそ50メートル地点には、ゴールラインではなく、人の胴体ほどの大きさのダンボール箱が、机の上に人の胸の高さと同じになるように置かれている。
尋はゴーグルを装着して、スタートラインに立つ。ライフルを斜め下に向けて、腰を落とす。
すーと彼女の周囲が凍っていくように、静かになった気がした。
「Are you raedy? ……Standby!」
珠希が掛け声をかけ、そして突然、ピーという電子音が鳴った。
その刹那、尋は前に滑った。否、飛んだ。
爆発でもしたのか、そう疑いたくなる速さで、5メートル先の線まで一瞬で移動。そして立ち止まり射撃。ぼすぼすと箱が音を立てる。着弾したのだ。
そしてまた爆発のようなダッシュ。停止、攻撃。ダッシュ。
やっていることはただそれだけ。それでもひとつずつが機械以上に正確で早い。
半分まで行くと、走りながら射撃。腰を落として、膝を曲げての射撃姿勢。下半身を隠したら、横移動式のエスカレーターに乗っているように見えるほど、尋の上半身は微動だにしない。
ばすばすばすと、セミオートで一発ずつ、確実に箱の中心3センチメートル以内に全部当てていく。
ゴールの前の線。そこでぴたりと止まり、周囲をぱし、ぱしっと制動しながら見回して、
「Clear!」
つぶやいて、姿勢を伸ばした。
「久々だと、ちょっとにぶいネー」
恥ずかしいなぁと呟いて、顔を赤らめて後頭部をかく尋。
しかし今の実演を見て、一体どこの何が鈍かったのか、言い当てられるものはいなかった。音羽に至ってはぽかんと、呆けてしまっている。
「Sorryネー。下手だったし、七つ目でちょっと上半身ぶれたし――」
――まねなんて、できないよ!?――
尋の自己反省を聞いて、その場のほとんどが心の中で悲鳴を上げた。
「まぁ、これくらいはできて当然と思ってもらっていいわね。さあ、五人やりますわよ」
さも当然という顔の珠希。自信のない者の顔が青くなった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる