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サバゲー大会決勝戦!
04
しおりを挟むスタッフは、腕時計を気にしながら口を開いた。だいぶ押してしまったようだ。
「今回のゲームは、サドンデスの要素も追加したものになります。現在フィールドにいる3チームからスタートです。それから二十分毎にさらに1チームずつゲームに参加します」
「Why!? それじゃ――」
尋が割ってはいろうとしたが、彼女はそれを許さない。
「ゲーム開始から三十分毎に、エントリゲートから各陣営に向け補給物資が届きます。最後の1チームになるまで、ゲームは続行します。以上です。それでは十時からゲームスタートです」
ご健闘を、と言い残して彼女は去っていった。
「たはは、マジデスネー……」
苦笑を漏らす尋。彼女だけではなく、ほかのメンバーも当然表情をこわばらせていた。
「マジで、サドンデスネー。チョー厳しいヨー」
「今までの中で、一番の苦境だな」
「さっすが、決勝戦デース。critical limitネー」
たははと笑う尋は、それでもどこか楽しそうだ。
「ふん。そうね。これでこそ、だわ」
勝気な微笑を浮かべて、珠希は腕組みしてついと左右の敵陣を見据えた。
「当たり前だけれど、補給は妨害されるでしょうね。特にジャックの連中」
エントリーゲートから一番近いのはジャックだ。そうなれば当然補給路を襲うのは容易い。
「一番最初に潰すべきは、ジャック?」
「いいえ、ジャック攻めは良い手じゃないわね」
リカの提案を断ち切り、珠希はジャックを指差した。
「ここからジャックまではほぼ真っ平ら。遮蔽はあれども、敵が全力で弾幕を張っている最中に突っ込むなんて、馬鹿げているでしょう?」
「じゃあどうするんだよ? ここに篭ってたって、すぐに弾もなくなるし、囲まれたらおしまいだぜ?」
若干苛立ちを見せた彼女に、珠希は鼻を鳴らして笑った。
「古今東西、最初に切り飛ばすのは、王の首と決まっているわ」
傲然と言い放ち、キングを見据えた。
『カウントダウン! 10 9 8 7 6』
フィールド全体に響くアナウンス。
クイーンの影に隠れたオフェンスの十人は、身を屈めて臨戦態勢。
『5 4 3 2 1 スターーート!!』
アルファ、チャーリー、デルタの3チームは号令と共に動いた。影、遮蔽の隙間を縫って、滑るように適地へ。
この平坦なフィールドで、唯一キングの教会が丘の上に建てられている。なだらかで距離がある訳ではないが、交戦距離の短いサバイバルゲームでは、相当のハンデが出る高さの丘だ。
まして教会は前面に複数の窓があり、守るのは絶好の形をしている。そこで守りに徹すれ、攻めには相当の不利になる。
そこを初期の内につぶす。
「クイーンは両陣営の中間にある。つまりは敵からすれば、意図せずとも挟撃できるわ。まあ、逆に言えば、キングは完全に孤立しているのだけれど」
ふふと微笑を浮かべながら語った珠希。
現状では敵の戦力はおろか、どこのチームが布陣しているのかすら明かされていない。
「そこで、ブラボーとエコーの二班には、常にキングを観測してもらうわ」
エコーにはフー以外では武蔵国原にふたりだけしかいない、狙撃銃をもつ多村左と射水ゆきりがいる。高倍率のスコープを取り付けたふたりと、狙撃銃をもったフーで、敵の情報を集めつつ援護するのだ。
「フォックストロットはジャックを警戒。とにかくキング撃破まで、ジャックを釘付けにしなさい」
それだけ戦力を裂けば、背後は当然危険に曝される。攻撃に集中しすぎて、背中を撃たれるなんてお笑い草だ。そこでフォックストロットにいる三人、雲仙百合と牙亥幸の軽機関銃と、遊有泉《ゆうなみ》志緒理の分隊支援火器の出番だ。強力な牽制力をもつ彼女たちに、ジャックを押さえさせる。その間、敵が増える前にキングを落とす。
十分。撤収や再布陣なども入れると、五分もない。その間に落とさなければいけない。
『たははー。たまチャンは本当にsevereデスネー』
うれしそうに笑う尋。そんな無茶ぶりをされても、彼女は楽しそうだ。
そして彼女たちは各々ポジションについた。
中るはずもないが、敵は牽制射撃を加えてきた。
それに怯むようなら、決勝戦まで上がってこれはしない。もはやゲーム開始の挨拶のようなものだ。
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